第閑話Ⅰ 賢者とエルフ
更新遅くなりました。すみません。
ショーゴとエルフィの話です。
バルコニーへと出る。
星空を見て思いを馳せる。
空に浮かぶ七特等星の内一つはなくなった。
主人の力によって。
炎龍の討伐。
誰も成し遂げられなかったこと。
そんな主人に仕えられることが誇らしく、また嬉しくもあった。
私の好きな人。
違うわ!そんなんじゃないんだから!
あ、あいつが私のこと、勝手に好きなだけなんだから!
「エルフィ、一緒に寝ない?」
「っ~~~!な、なにをいってるのよ!」
「いや、撫でたいなって?」
「もう!紛らわしいのもいいかげんにしなさいよね!」
ショーゴの元へ向かうエルフィ。
文句を言いつつもショーゴにしっかり撫でられている。
「エルフィかわいいな」
「あ、あたりまえじゃないっ!」
「エルフの耳って気持ちいな!…エルフィに会えてよかったよ」
「私は耳だけだっていうんですか!」
「いやいや、エルフィに会ったときのこと思い出してさ」
「私に会ったときの事?」
「ああ。そういえばいろいろあったなぁ」
「はい。…たくさん、ありました」
ショーゴと出会った時を思いだす。
一年前。
絶望と希望を一度に与えられた日。
稀に見る豪雨だった。
外の世界に行きたくて期待を込めて窓の外を眺めていた。
私は屋敷から出ることを禁じられていた。
王族の血筋だからだそうだ。
王位継承権は第2位。
でも、私は秘密の子。
公には存在しない。
当時の私は知る由もないが。
篭の中の鳥だった。
屋敷から出ることは許されず、ほとんどの時間を勉強に費やした。
両親は亡くなっていて、叔父に厄介になっていた。
私は一族の繁栄のための道具だった。
私の結婚は勢力拡大のために利用される。
そのことに不満はなかったし、誇りの貴族の果たすべき責務だと考えていた。
あの日までは。
稀にみる豪雨でみな慌てていた。
私は外に出てみたかった。
いつも眺めているだけの外の世界。
今日ならば抜け出せるのではと思った。
一階の窓からこっそり抜け出した。
珍しく誰にも気づかれなかった。
私は走った。
雨に濡れながら近くの森を駆け回った。
私は初めての大冒険をした気分になった。
そんなときだった。
彼と会ったのは。
彼は本を読んでいた。
この豪雨の中。
雨が彼の周りを避けるかのようだった。
彼に話しかけた。
「何を読んでいるの?」
「…人生の教科書だよ」
「?そうなの。あなた、名前は?」
「スズキ…いや、ショーゴだ」
「ショーゴ。…ショーゴはどこから来たの?話させてあげるわ。光栄に思いなさい!」
「俺の世界の話か?」
「そうよ!」
ショーゴは驚くようなものの話をたくさんしてくれた。
学校というところとか、花火というものとか。
とにかくいろいろなことを。
屋敷から出たことのなかった私は話に出てくる様々なものに興味を持った。
いつか見てみたいと思った。
「くしゅん」
降り続く雨のせいで体が冷えてしまったようだ。
そろそろ屋敷に戻らないとならないなと思い始めていた。
そんな時だった。
あれが起こったのは。
火事だった。
ただ、凄まじいのはこの豪雨の中燃え盛っているということだ。
屋敷の方から火が上がっている。
むしろ、この辺に家は屋敷くらいしかない。
私は走った。
たどり着いたときにあったのは野原だった。
草一本生えていない。
厳しかった父も、優しかった母も、かわいがってくれていた執事長も、メイドたちも誰一人、何一つ残っていなかった。
私は崩れ落ちるように膝をついた。
あまりのことに涙すら出てこない。
感じるのは恐怖。
恐怖の感情が悲しみを上回っていた。
これをやった生き物が傍にいる。
この事実がただただ恐ろしかった。
私も両親のもとへいくのかな、そう思った。
「やり過ぎじゃ、ちっ。これでは何も残っておらぬではないか。竜という生物も使いづらい」
そんな男の声が聞こえた。
竜。
おとぎ話によくでてきた。
お姫様をさらう悪い竜。
私もお姫様だったら助かったのかな、そう思った。
さっきの彼が気になった。
彼がおとぎ話の勇者だったら。
儚い希望であることは明らかだった。
男がこちらに気づく。
「上玉のエルフの娘が残ってるじゃないか。これなら売れるな。がははっ!」
恐怖に声も出なかった。
私は直感的に感じた。
死ぬより酷い目に遭わせられるのだろうと。
「処女か。これならやっちまって飽きたら売ればいいか。こんな上玉めったにお目にかかれないしなぁ」
私の大事なところを無遠慮に触る男。
品定めでもするかのように値踏みするかのような目で見てくる。
怖い。
もう何も考えられなかった。
私は引きずるようにその男に引っ張られ馬車に乗せられた。
そこで私は眠り薬を嗅がされ意識を失った。
気づくと森の中だった。
ここはどこだろう?
見たことのない場所だ。
確かさっきまで啓吾と体育館でバンドの練習してたはずだが?
そういえば、空間が歪んでみんなが一瞬で飲み込まれたような。
ま、来てるなら会えるだろ。
はっ!これはまさか異世界じゃ!
異世界転移もののお約束じゃない?
よし、これからはショーゴってことにしよう。
なんかカタカナっぽく言うと異世界感あるよね。
|もとの世界(地球)では彼女も作ったしみんなでばか騒ぎしたりして楽しかった。
でも、俺に向こうの世界でやり残したことはない。
念願の異世界だ!
これは俺主人公じゃない?
かわいいヒロインはどこですか!
あ、えーとあるものはと。
ギターに冴〇彼が6冊にとあとは、筆箱、お弁当、古典の教科書、ノート2冊、水筒かな。
果たして使えるのか甚だ疑問を持つがこの際良しとしよう。
何もないよりはましだ。
とりあえず、人生の教科書を読みながら歩く。
周りはすごい豪雨だが全くあたる気配がない。
まるで雨が避けているようだ。
すると、少女に出会う。
言葉を失うほど綺麗だった。
耳が長いし、金髪なのできっとエルフだろう。
「何を読んでいるの?」
それが彼女の発した最初の言葉だった。
彼女はどうやらいいとこのお嬢様のようだった。
ちょっと高慢なところがあったが。
彼女と話すのは楽しくあっという間に時間が過ぎていった。
唐突に彼女は行ってしまった。
俺はそのあとを追いかけたが追いつくことはなかった。
彼女の家の周りに結界が張られていたことなどその時の俺に知る由もない。
俺は街にたどり着いた。
風の国シルヴィア・アルフという国の王都らしい。
王都ヌーメン。
それがこの街の名前だった。
この街に着く前によくわからない場所に再召喚された。
そこで聞いた声には聞き覚えのある気がしたが誰だかはわからなかった。
神様っていうのはそういうものなのかもね。
俺が得た情報は、召喚されたということと風の国の王都に迎えというものだった。
通行手形なるものももらった。
もらったというよりも気づいたら元の場所に戻され握らされていたというのが正しい。
ともかくだ。
俺はこうして王都ヌーメンにやってきた。
王都ヌーメンの入り口でイケメンエルフ兵士に通行手形を見せると驚かれ、都庁へと案内された。
出迎えてくれたのは有能そうな20代後半くらいのこれまたイケメン。
エルフにはイケメンしかいないのかと思ってしまう。
「お初にお目にかかります。都長を務めさせていただいております。レイジ・デュオ・クロスナッハと申します。この度は我らが神アルフ様の紹介ということですので、何かご用命のものがあればすぐにご用意致します」
彼が言うには通行手形がエルフの神アルフが発行したもらしい。
神が通行手形を発行するとか謎だけどそこはいいとしよう。
とりあえず、必要なものか。
この世界の知識を得る必要があるな。
本とかでももらおうか。
「そうですね。女奴隷などはいかかがでしょうか。私自らが選りすぐったものを紹介しますが」
「それで!」
一もなく二もなく返事をした。
欲求に従うのは仕方ないよ。
男の子だもの。
着いたのは奴隷商館の様だった。
しかし、こうして案内されなければ絶対にわからないだろう。
普通に豪華な家に見える。
「ショーゴ様、いかがな奴隷がよろしいでしょうか。エルフ、人間、獣人など様々な奴隷を取り揃えている店です。ご期待に添えるものかと」
「とりあえず見せてもらっていいか?」
「わかりました。おい」
レイジは部下に命令し、奴隷を連れてこさせる。
様々な種族の奴隷がいた。
その中でもかわいいのは二人で人間と獣人の女の子だったが、どちらも今一歩足りなかった。
異世界で最初にエルフの彼女を見てしまったせいだろうか。
「お眼鏡に適いませんでしたか。誠に申し訳なく…」
「いえ、いいですよ。こちらが我儘なだけなので」
「非処女の者ならまだいるのですが…」
本当に申し訳なさそうにしてくるレイジ。
その目線から逃れるように窓の外を見ると男が女の子を乱暴に引っ張っていた。
とっさに体が動く。
「女の子を手荒に扱うのはよくないよ?」
「なんだてめえは。俺はこれからお楽しみなんだよ」
「その子をはなせっつてんだよ」
「あぁん?なめてんのか?」
「そこまでです、ギール」
「っ!レイジ様、いらっしゃったんですかぁ、へぇへぇ」
「ショーゴ様はその娘がお気に入りですか?」
その少女の首には首輪がついていた。
彼女に顔は瓜二つだが、目が死んでいる。
でも、彼女を助けたくもあり、欲しくなってしまった。
「ああ」
「ではそのように。ギールその娘をこちらの方に献上しなさい」
「そ、そんな!まだ、手に入れたばかりで処女の上玉だっていうのに…」
「これでいいでしょう」
「わっかりやした、旦那!ご贔屓に。あと精神を破壊して―」
「いいのです。行きなさい」
「へぇ」
レイジはギースに大金貨を2枚渡していた。
たぶんかなりの額だろう。
ともかく、彼女は手に入れた。
そのあとは大金貨を5枚もらい、彼女を連れて宿屋に案内された。
高級ホテルと遜色ないところだった。
レイジは勝手に気をまわして二人きりにしてくれた。
「星呪に命ずる。質問に答えろ」
そのあとはいろいろなこの世界の情報を得ていった。
精神の修復を行おうとしたのだが、星呪の力では無理だった。
とりあえず、魔法を使ってみようと思う。
回復魔法だ。
彼女もケガしているし治してあげたい。
ギターを弾けば魔法が発動するだろう。
軽い気持ちだった。
だが、表れた効果は絶大だった。
「…ぁ……ぁぅ」
彼女の目に光が灯る。
「………ショーゴ?」
彼女は泣き出した。
俺は泣き疲れて寝てしまった彼女をベッドに横たえ一緒に眠った。
「きゃぁあああ!」
俺は悲鳴と共に叩き起こされる。
とういかベッドから突き落とされた。
彼女が目覚めたようだ。
「おはよう」
「…その…た、助けたなんて思わないことね!」
「はい、はい」
「何よ!その態度は!私と一緒にね、寝るなんて!恐れ多いのよ!」
彼女はぎゃーぎゃー騒ぎ立てる。
元気になったようだ。よかった。
「名前は?」
「…エルフィエール・リミティフ・ヴァルトよ」
「エルフィエール…エルフィか。エルフィって呼ぶね」
「~~~~~っ!な、なんなのよ、もう!」
「エルフィはどうしたい?」
「へっ?どうしたいって?」
「奴隷から解放すればいいかな?やり方わからないんだけど」
目的であった情報収集はある程度済んだ。
確かに彼女を自分のものにしておけるというのはうれしいが、貴族の子女であろう彼女を奴隷にしておくのはいけないと思った。
「森のあたりまで連れていけばいいか?家族のもとに帰った方がいいだろう」
「…死んだわ。みんな。屋敷も何もかも。もう私には何も残っていないっ!」
声から怒りや悲しみや焦燥などいろいろな感情がごちゃまぜになっているのが分かる。
「…一人にしないで。私、もう、知り合い、いないのよ」
エルフィの声が震えていた。また泣き出したようだ。
優しく抱きしめて頭を撫でてやることくらいしかできることはなかった。
「エルフィ、本当にいいのか?」
「ええ。助けてもらったし………一緒にいられるなら」
「ん?なんか言った?」
「い、言ってないわよ!」
「首輪に触ればいいんだな」
「ええ」
エルフィの首輪に触る。
光が二人を包み込んだ。
「できたのか?」
「ええ。よろしくね、ご主人様」
「じゃあ、ツインテールにしてみて」
「こ、こう?」
「こうだって」
「こうかしら?」
「そうそう。可愛いよ、エルフィ」
エルフィには金髪ツインテールがよく似合っていた。
「あ、当たり前よ!」
そんな風に言う彼女がとてもかわいらしくて。
「好きだよ、エルフィ」
「えっ!~~~~~~~っ!私はあんたのことなんて、す、好きじゃないんだから!えーと、それに…かっこいいなんて思ってないんだから!」
エルフィと出会ったショーゴはここから1年の間にLV.5に到達し、賢者という二つ名で知られるようになる。
彼のことを知るものは存外少ない。
作者の都合により、来年の4月ごろまで更新に時間がかかると思います。
更新は続けていくつもりですので、申し訳ありませんが、今後ともよろしくお願いします。




