第24話 英雄
すみません。更新遅くなりました。
1章の全話分の直しに思いの外時間がかかってしまいました。大きな変更はありません。
短めです。
その日の空は、曇天模様だった。
せっかく後輩たちと遊びに行くのについてない。
しかも、寝坊した。
約束の時間に遅刻するかもしれない。
雨が降らないといいなとか、楽しみ過ぎてもう…と色々なことを取り留めもなく考えていた。
走りながら向かっている。
そろそろ着くはずだ。
見えてきた。
キャット・ランドだ。
某有名テーマパークと同じくらいの規模を持ち、この世界で最大のテーマパークである。
今日来てくれる後輩はピアニャ、琴音、ナナ。
そして、愛だ。
今日は5人で目一杯遊ぶつもりである。
むしろ、遊び倒すつもりである。
今日という日が思い出に残るんだろうななんて思いつつ、期待に胸を膨らませているのだった。
「お、おはよう!ギリギリセーフだよな?」
「大丈夫ですよ。まだ時間ありますから」
「そうだよ!かなん先輩!今日は楽しもうね!」
「そうだな!」
愛とナナと軽くおしゃべりしていると、琴音とピアニャがやってくる。
随分と仲がいい。
姉妹のようだ。
「おはよう、ことね、ピアニャ」
「…ぉはようございますぅ」
「おはよう、お兄ちゃん!」
琴音とピアニャがやってきた。
どことなく、琴音は眠そうだ。
いつも眠そうと言えば、眠そうなのだが。
全員そろったので、チケットを購入し、いざ出陣!
最初はジェットコースターに乗った。
魔法によって、速さ、ルート、高さ、水など、楽しむ要素が様々あるため、どこでどうなるかわからないというハラハラドキドキを詰め込んだみたいなジェットコースターだ。
それには、ジャンケンの結果ナナの隣だった。
ジャンケンは教えたよ。
俺が叫んでいるとナナがかわいい悲鳴をあげる。
ナナかわいいなー。
最後尾だったのだが、止まる寸前にナナが頬にキスをしてくる。
「ななな、なんだよ」
「先輩大好き…これからも私のことちゃんと大事にしてね」
かわいい過ぎる!!
もうずっと大事にするっ!
これが俺の彼女だー!
叫びだしたい気持ちを抑えて、必死に我慢する。
「大好きだよ、ナナ」
ナナが顔を真っ赤にして照れる。
もうかわいいなぁ。
次はメリーゴーランドに乗る。
これは特に変わった点はない。
ピアニャが乗りたがったので一緒に乗ることになった。
すごくはしゃいでいる。
ピアニャのこういうところ見ると元気づけられるななんて思いつついると、ピアニャがキスしてくる。
「だいすきー」
「俺もだよ」
ピアニャとのメリーゴーランドを終え、次はお化け屋敷。
組んでないペアということで、琴音と一緒になった。
中に入ると、たいした仕掛けもないのでお化け屋敷イベント起こらないなと思っていると琴音が抱きついてきた。
怖がっていたようだ。
叫んでくれたら雰囲気でるのになーと考えていると琴音が潤んだ目の上に上目遣いで見てくる。
「せ、せんぱい、私の、こと、離さないで。ください…ね?」
「ああ。大丈夫だよ」
琴音のデレデレタイムもお化け屋敷を出ると終わってしまった。
もったいない。
もう少し余韻が欲しい。
そして、観覧車に乗った。
愛と二人でだ。
それはもう最高の時間だった。
愛しい後輩と二人で、密室、二人きり。
なんとなくそういう雰囲気になる。
「なぁ、あい」
「な、なんですか?」
「俺さ、お前のこと好きだよ」
「…私もずっと大好きです」
「結婚してくれないか?」
「え!そ、それは」
「もちろん、日本の法律的に結婚できる年齢になったらでいい。ダメかな?」
「い、いえ。全然だめじゃないんですけど…ふぇっ」
「な、泣くなよ」
「嬉しくて……私を、守って…くれなかったあなたに復讐することができて!」
俺は愛に刺された。
鳩尾から肺のあたりまでえぐられた。
致命傷だ。
もう助からない。
そうだったよな。
俺、愛のこと…
飛び起きる。ここは?
「んっ…むぅ…」
ベッドの脇にナナが眠っていた。
どうやら看病されていたようだ。
そうだ。
俺は愛を救えなかった。
炎龍に殺された。
胸に現実が突き刺さる。
弱い自分が許せない。
もっと何かできたはずだ。
もっと効率のいい手段があったはずだ。
もっと。
もっと。
「ぅう?…かなん先輩起きたんですか?」
「ああ」
「ご飯食べますか?それとも、お風呂入りますか?それとも、え、えーと」
「風呂入ってくる」
「あ、まだ準備が!」
ナナの声を背に聞きながらその場をあとにし、風呂に入った。
風呂を出たら、ナナが声をかけてくる。
「あの、ご飯は」
「俺って何日寝てた?」
「えと、半日ほどです」
「そうか。それは」
「こ、これは…」
ナナがさっと手紙を隠す。
王家の紋章が入った手紙だ。
ナナからさっと取り上げ中を見る。
ヴェーぜさんから王宮に来いという旨の手紙だった。
俺は王宮に向かう。
謁見の間に通される。
セーゴが何か言っているが何も耳に入らない。
どうやら、炎龍殺しの英雄に祭り上げるつもりらしい。
ショーゴが倒したというのに。
セーゴが最後に何か言っている。
褒美をくれるらしい。
ありがたいことだ。
こんな何の力も持たない奴に褒美。
笑える。
これほどおかしいことがそうそうあろうか。
式典は早々に終了し、パーティーとなった。
愛がもういないというのに何をしているんだか。
ナナがやってきた。
「先輩、いい加減にしてください。私がす、好きになった先輩はそんな人じゃありませんっ!」
ナナの言葉が突き刺さる。
そうか。
俺はこれからどうしたらいいんだろう?
溢れ出す感情の奔流に関係なく、夜空の星は輝く。
次の日。
寮でリンが言うには俺は土地をもらったらしい。
英雄に住んでもらう。
当然か。
それを見に行く。
どうせやることもない。
割と広い土地だった。豪華な屋敷を立てられそうなくらいには。
家か。
「リン、ここに屋敷を建ててくれ」
「はい。ご主人様。王様が補助金を出すとの仰せですので立派なお屋敷になることでしょう」
「そうだな、すごく広い屋敷にしてくれ。細かいところはリンに任せる」
「はい」
「金は預けとく。必要なら使え」
「え!…は、はい」
俺は先に寮へ帰った。
今はピアニャもAAに編入手続きをナナとしに行っているため部屋には誰もいない。
愛との思い出が次々に浮かぶ。
扉がノックされる。
ヴェーゼさんだった。
「かなん様、王より密命でございます。風の国に向かえと。表向きには星夜陰舞踏会の親善のためとなっていますが、風の国の内情調査と賢者ショーゴ様の存在を確認してきて欲しいとのことです。賢者様でしたら、愛様のことを生死を司る魔法をご存知かもしれません」
「あいが…わかりました」
「ありがとうございます。それではこれをお持ちください」
王家の紋章の入った通行手形のようなものだ。
もしかしたら、ショーゴが助けてくれるかもしれない。
そうだよな。
この世界はファンタジーなんだ。
奇跡があってもいいだろう?
愛ともう一度話したい。
まだまだ、バイオリンを教えてあげたい。
一緒に過ごしたい。
皆に会わせてあげたい。
一縷の希望でもあるならば、俺は行かなければならない。
俺には義務がある。
巻き込んでしまった責任が。
故郷を思い涙していた彼女の顔が目に浮かぶ。
ごめんさいじゃ許されない。
俺はできる限りのことをしなくちゃならない。
俺は悪だろう。
これからさらに悪いことをするかもしれない。
そんな迷いは捨てろ。
愛をこのままにしていいわけがないだろ。
こうして俺は風の国シルヴィア・アルフに向かうこととなった。
俺は誰にも告げずに一人で旅立った。
風だけが俺に吹き付ける。
次は閑話を挟んで第2章となります。
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