第23話 龍
投稿遅くなりました。
炎龍との戦いが佳境です!
龍は佇んでいた。
こちらに先攻を譲るのかのように。
負けることを一欠片も疑っていないようだった。
瞳には殺意が見て取れる。
強い。
ただそう感じた。
さっきまでのは本当に遊びだったのではないかと思わざるを得ない。
空気が震える。
今までで一番強い。
そこに、琴音とピアニャがやってくる。
まずい。
この龍相手に二人を守りながら戦うのは無理だ。
とっさに叫ぶ。
「下がってろ!」
「…ぇ!」
「ぇー?」
龍が魔法を使う。
荒々しく、激しい。
炎が雷を纏っている。
内包もしているか。
火が大きくなっていく。
「ナナっ!」
ナナは俺の声に応えてフルートを吹く。
俺はバイオリンを弾く。
音色を重ね合わせる。
効果を引き上げる。
そこに、ピアニャが鼓舞を使う。
ピアニャがしっかりと歌い上げる。
力が湧いてくるかのようだ。
ちょうど効果が切れていたようだ。
琴音はピアニャを守るかのように立って居る。
先に龍の魔法が完成する。
火球が襲い掛かってくる。
遅れてこちらの魔法も完成する。
二つの球がぶつかり合う。
図らずも、先ほどと同じ構図になっている。
一瞬水球が火球を飲み込むように見えた、が内包された雷が水球を裂き、散らす。
勢いは多少削がれたが迫る。覚悟を決め、火球を散らそうとする。
しかし、突き飛ばされる。琴音だ。琴音が俺を突き飛ばした。
火球の射線上から外すために。
体勢の崩れた俺は戻ることができない。
火球が琴音を飲み込む。
「きゃっぁぁぁっ…!」
琴音は必死に痛みを我慢しているようだ。
あれは尋常ではない痛みだろう。
もうただ見ていることしかできなかった。
数秒で火球は消え、琴音が崩れ落ちる。
急いで戻り、琴音を支える。
琴音は気を失っているだけのようだ。
ところどころ火傷しているが大事に至るような怪我はないようだった。
琴音を再現されたのであろうアイシクルの城壁に立て掛ける。
振り返り、みんなに指示を飛ばす。
「ナナ!魔法頼む!ピアニャさがってろ!」
ナナがフルートを吹き始める。
ピアニャはまだ、鼓舞を使っている。
歌う。歌声が力を与えてくれる。
龍が動く。
魔法か。
…違う。
さっきのとは違う。
危険だ。
龍がピアニャの法を向く。
「ピアニャっ!」
叫ぶが間に合わない龍の魔法が完成される。
炎のブレスが吐き出される。
あれも魔法だというのか。
ほかの魔法に比べて、驚くべき速さで完成される。
直線にのびる炎がピアニャを飲み込む。
ピアニャは何とか避けたようだ。
安堵も束の間。
龍がすぐに次の行動に移る。
避けたピアニャのもとへ龍のしっぽが迫る。
ピアニャ避けきれずに打ち付けられる。
ピアニャは気を失ってしまったようだ。
確認に行きたいが龍がそれを阻んでいる。
ナナの魔法が完成する。
フルートの音が止み、水流が龍を飲み込む。
龍はものともせずに進む。
ナナへ迫り、つかむ。
間に入ろうとするが、一振りで吹き飛ばされる。
ナナが捕まり、龍が締め上げる。
ナナは吐血し、肺の中の空気が押し出されているようだ。
声にならない悲鳴をあげている。
「ロストアーク!」
全身が痛い。
でも、ここで諦めるわけにはいかない。
剣で斬りかかる。
跳ね返される。
ナナが今にも死にそうになっている。
斬れろ!
斬れろ!
斬れろ!
斬れろぉぉぉおおお!
その瞬間何かが外れる感覚があった。
力を開放できる感覚。
剣を突き出す。
この単純な動作ですさまじい力が発揮されているのが分かった。
ナナをつかんでいる龍の足だか手だかに風穴があく。
ナナが開放される。
見事キャッチし、ナナの状態を確認する。
死んではいなようだが、状況は芳しくない。
早急に回復させる必要がある。
しかし、琴音は気絶してしまっているし、回復薬なんて便利なものはない。
ナナがかすかに目を開く。
まだ喋れないようだ。口が弱々しく動いているが何を伝えたいのかはわからない。
顔を近づけるとナナがキスしてきた。
顔が熱い。
思考が停止する。
世界が止まったかのように感じた。
今何をされた?
えと、接吻?
チュー?
唇と唇を重ね合わせるやつ?
イチャイチャしてるカップルがやるやつ?
考えがまとまらないよー。
ナナは何で俺にキスしたの?
なんで?
やっぱり俺のこと好きみたいな?
そりゃ、その…ナナはかわいいけど、後輩だし、後輩に手を出すのはよくないっよな。
ナナが気を失う。
「ナナっ!」
龍が治癒を終えそうだ。
急いで、ナナを琴音の近くに寝かせる。
ナナのことは後で考えよう。
反転し龍と対峙する。
先ほどにもまして、威圧感を感じる。
本当に勝てるんだろうか?
不安に駆られる。
やるしかないんだ。
俺ならできる。
龍が回復を終え、魔法を使う。
俺も剣を構える。
この剣は竜剣だ。
竜の血から作られた剣。
この剣なら斬れるはずだ。
さっきの感覚を思い出せ。
一点に力を集める感じだ。
集中する。
一点に集約する。
人間が脳によって制限されているリミッターを解除し、一瞬だけいつも以上の力を出すんだ。
そういえば制限解除っていうEXアビリティがあったな。
それのおかげなのかもしれないな。
極限に集中している状況だったがなぜか冷静だった。
驚くほどに落ち着いている。
龍の頭を狙う。
龍の魔法が完成しそうだ。
俺は、また、何かが外れる感覚に包まれた。
いける。
今なら。
剣を龍に叩き込む。
すさまじい衝撃。
火花が散る。
そして、終わった。
折れた音がした。
俺の龍剣が折れた。
もう打つ手はない。
ナナも琴音もピアニャもみんな倒れている。
当分目を覚まさないだろう。
俺ができるのは魔法くらいだが現状でナナとの魔法以上に強い魔法などない。
時間がとてもゆっくりになったように感じた。
打開策を必死に次々と考え出していく。
どれもあの龍を倒すことのできるようなものでは到底ない。
一つの考えがよぎる。
死ぬと。
打開策はない。
現状として、これ以上に好転する要素など何もない。
みんなを置いて俺だけが逃げ出すわけにはいかない。
相手はあのキチガイだ。
何をしでかすかわかったもんじゃない。
じゃあ、どうするんだ?
何も案はなかった。
かなんはもう気づいていなかった。
炎龍の爪が襲いくることに。
気づいたのは吹き飛ばされた後だった。
全身が悲鳴を上げている。
龍が魔法を使っているのが遠目にわかる。
耳はキーンという音がしていて聞こえない。
龍の魔法が完成する。
火球がかなんの身を包む。
熱い。
火事の現場とかこういう感じなのだろうか。
火球が収まり、かなんは膝から崩れ落ちた。
もう動くことはできなかった。
愛を助けられない。
ナナを、琴音を、ピアニャを。
誰も助けることができない。
ただただ、悔しかった。
こんなところで終わるのも、這いつくばって動けないでいるのも。
何より巻き込むだけ巻き込んで何もできないのが一番許せなかった。
また、俺は救えない。
誰も救えない。
炎龍が笑いながら何か言っている。
おおかた、俺を見て笑っているのだろう。
炎龍が近づいて来る。
とどめを刺すんだろう。
その時だった。
炎龍をすさまじい風が襲った。
風なんてレベルではなかった。
竜巻、サイクロン、ハリケーン、台風など様々な言い方があるが、それを遥かに凌駕していた。
一瞬で龍を切り裂き原型をとどめていない。
「ご主人様、さすがに奇襲は卑怯です」
「やっちまったんだからしょうがない」
「…」
「とりあえず、楽しんでいこう!」
唐突に表れたのは、見たことのある顔の人物と奴隷の首輪をつけた金髪ツインテールの少女だった。
少女の方はたぶんエルフだろう。耳的に。
あいつはギターをかき鳴らす。
速弾き。
自分の世界を構築しているように見える。
既視感を覚える。
俺は、この音色を聞いたことがある。
熱気にあてられる様な盛り上がり方。
一人で舞台を華やかに装飾していくようだ。
聞き惚れる。
将吾だ。
どこからどう見ても将吾だ。
声をかけたいが生憎声など出せる状況ではない。
度重なる龍の攻撃によって声はかすれ、発生すらままならない。
でも、なぜ将吾はギターを弾いているんだ。
龍は原型をとどめていないのに。
奇怪な音がした。
不気味な歌声のようだった。
龍はすぐに元の姿に戻っていた。
異常な回復力。
さっきの地の底から響くような声は、回復魔法に類するものだったのだろう。
回復した瞬間、将吾の次なる魔法が襲う。
今度は陰魔法だ。
ブラックホールの様な暗くて、底の知れない何か。
龍を吸い込み圧縮していく。
数秒後龍が吐き出される。
龍と思わしき残骸がそこにあった。
かろうじて、龍と判別できる部分があるだけで初めてこれを見たら龍だとわかるか疑わしいレベルの惨状を呈している。
「かはっ。お前たち…許されないわ。…姉様たちがあんたたちを絶対に…」
龍は息絶えたようだった。
「よっしゃああ!これでついにLv.6かっ!」
「その…あたしが、ほめてあげる」
「エルフィかわいいな!」
「~~~っ!そんなんじゃにゃいんだからっ!」
「噛んでもかわいいよ」
「~~~~~~っ!」
少し落ち着いてきた。
声は出せそうだ。
将吾っぽいやり取りを繰り広げているので間違いないだろう。
「将吾、お前どうしているんだ?」
「かなん、大丈夫か?心配だから来てやったぜ」
「だからどうしてお前がここに―」
「ショーゴ!まさか、まさか、まさかぁ!あたしを差し置いてこいつとイチャイチャするためにあたしをつれてきたの?許せない!死んで詫びなさいっ!」
「いや、違うって。俺の一番は君だよ?」
「そ、そんなぁ…一番なんて。…ってこいつとイチャイチャするのは否定しないのね!そんなのってないわっ!うわーん!」
「泣くなって。今日は夜、な?」
「うっ…ひっぐ…や、約束だからね?」
「もちろん!」
将吾は少女にポカポカと叩かれている。
こんなテンプレツンデレキャラいるんだなー。
将吾好きそうだな。
読んでいるラノベの傾向的に。冴え〇ノの英梨々とか。
「やっぱり、将吾なのか?」
「久しぶりになるのかな?かなん。そうだよ。あ!ただあれな。俺、異世界系主人公だからカタカナでショーゴな!異世界のお約束な」
「わかった。ショーゴなんでこんなところに?お前もガクに異世界送りされたの?」
「いやいや。ガクに異世界送りにされたら死んでるからな。俺は召喚されたんだよ」
言葉を失う。
ショーゴは召喚された?
召喚魔法なんて聞いたこともない。
そんな魔法があるなんて。
でも、ナナはなんで教えてくれなかったんだ?
「かなん。今回は助けたけど、次はない。俺は目的は果たした。先に進むよ」
「…そうか」
「エルフィ、頼む」
「あなたのためじゃないんだから!」
頬を真っ赤に染めて言った。
エルフィと呼ばれた少女が回復魔法を使ってくれているようだ。
まあ、本当にショーゴのためではないよね。
「ショーゴ大変そうだな。主に女の子関係で」
「自分周辺に女子問題はないんだが?」
「ははっ!」
久しぶりに笑った気がした。
でも腹が痛む。
「ショーゴ終わったわよ」
「ありがと、エルフィ」
ショーゴはエルフィの耳を撫でている。
やっぱり、エルフ耳って気持ちいよね!
「かなん、負けるなよ、じゃあな」
エルフィがショーゴにひしっと抱き着く。
そして、ショーゴとエルフィの姿は見えなくなった。
魔法だろうか。
それとも術なのだろうか。
ショーゴとも、炎龍とも、力の差は歴然だった。
もっと強くならなくては。もっと強く!
愛はどこにいるんだ?龍は倒したのに愛が見つからない。
「マイマスター、映像をお見せします。気をしっかりお持ちください」
「ヤミ、どこにいってたんだよ。どういうこと―」
頭の中に映像が流れ込んできた。
愛とメローペだ。
気を失っていた愛が目を覚ます。
「ぅん?…ここは?あなたは?」
「ねぇ、小娘。炎龍メローペも知らないの?所詮は醜い異物ってことね。悲しいわ。調和を乱すなんて。許せないわ。あなたって厚顔無恥ってやつよね。死んで!」
瞬間、愛が血を噴き出して倒れた。
出血の量が多すぎる。
「まだ、完全に殺すわけにはいかないのよね。私の栄養となるんだから」
そう言ってメローペは愛を結晶に閉じ込めた。
「あはぁぁ。これでいいわね。せいぜい見ているがいいわ、あはっ!」
映像が終了し、俺は吐いた。
血の量も普通じゃなかったこともあるが、何よりあの状態で愛が保存されているという事実に耐えられなかった。
愛は死んだ。
いや、殺された。
炎龍に。
愛との思い出が甦る。
約半年近くの思い出が走馬灯のように甦る。
まだこれからなのに。
愛はあんなに一生懸命練習していたのに。
俺はもうどうしていいかわからなかった。
世界が闇に包まれたように感じた。
俺は、絶望した。
「うわぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
あいが…
あと1話で第一章は終わりとなります。ぜひ、ご覧ください。




