第22話 炎
またまた遅くなりました。
つ、次こそは頑張ります。
ブクマ、評価ありがとうございます。
途中、ナナ視点です。
ここはどこだろう。
記憶が朧げだ。
何をしていたっけ。
そうだ。
愛を助けた。
でも、何かが足りないような、抜け落ちたような気分だ。
愛はどこだ?周りを見渡すが誰もいない。
視界がはっきりとしてきた。
ここは音楽室?
後ろから声をかけられる。
「伊能君、パート練するよ」
「ん、ああ」
パートリーダーの、宮島真貴に従って、パート練が始まる。
愛もいる。
よかった。
練習するのは、グリンカ作「歌劇ルスランとリュドミラ序曲」だ。
「歌劇ルスランとリュドミラ序曲」という曲を知っているだろうか?
前に愛と練習していた曲だ。(プロローグ参照)
このオペラは、ロシアの詩人プーキシンが、古い民話に基づいて書いた長詩「ルスランとリュドミラ」を読んで書かれた。
物語の設定は、古代ロシア、キエフ公国時代。
スヴェトザール公の娘リュドミラには、三人の求婚者たちがあり、ロシア人の若者ルスランが選ばれ、婚礼の運びとなる。
しかし、祝宴の場に悪魔が現れ、いきなりリュドミラをさらって行ってしまう。
そのため、リュドミラを助け出した者にリュドミラを与えるという条件を出す。
結果、ルスランが悪魔のもとからリュドミラを救いだし、めでたしとなる。
この曲を聞いているとなにか忘れているような気がする。
「じゃあ、最初から~」
パート練が始まる。
さっきから何か引っかかるものがある。
何だろうこの違和感は。
わからない。
練習は進んでいく。
ナナは焦っていた。
戻ってきたかなんが意識を失っている上に、顔色が尋常ではないくらいに悪い。
今までの流れから考えて、戦闘をしてきたはずなのに一切ケガをしていない。
外傷と呼べるものはなく、本来ならそこまでおかしいことはない。
しかし、妙な胸騒ぎがした。
顔色が優れないのも気になる。
「ことねん!魔法使ってみて!」
「…ぅん」
ことねんが集中し始める。
ナナは魔法を見ていて不思議に思う。
ことねんは回復魔法しか使わない。
なぜだろう。
しかも、クラリネットを吹けるのに、クラリネットを使わずに回復魔法を使用する。
あの呪文のような言葉で回復魔法を使う。
「傷つきたるものを癒し、死んだ者を昇天させ、憂いの輪廻を断ち切れ」
やっぱり。
なんで?
魔法じゃないの?
もしも、魔法じゃないのならそれ以上の力があるってこと?
そうしたら、それを使えれば、今、私が使えるようになれば…!
「うっ!…っ!」
ことねんが苦し気な表情になる。
どうやらうまくいってないみたい。
「ことねん!私にもそれできないかな?」
「ふぅふぅ……無理だよ」
「なんで?私だって、私だって…!」
「…神術はそう簡単に使えない…」
「かみじゅつ?」
「…代償がいるんだよ。便利な力じゃ、ない」
「代償?どういうこと?」
『ナナさん、聞こえますか?』
「え?ヤミさん?どういうこと?」
『あなたが邪述を使えるようにすることはできます。ですが、代償に何を要求されるかわかりません。それでもよろしいですか?』
「じゃじゅつ?かみじゅつと違うの?」
『だいたい同じです。出所が違うだけです』
「…おねがい」
『命が代償でもですか?』
「…うん」
『わかりました。しばし、お待ち下さい』
そういってヤミさんは私に魔力を送り始めた。
数分が経っただろうか。
ヤミさんの魔力供給が途絶えた。
終わったのだろうか。
『ナナさんステータスを確認してみてください。マスターのを使えば見られるはずです』
確かにスマホとかいうステータスを見れるものを持っていましたね。
探すとポケットの中に入っていました。
魔力を込めます。
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名前:ナナ Lv.3 学生
HP:46/58
MP:213/388
精神安定度 :E
魔法適正値 :S-
聴音可能度 :B
音楽理論基 :C
楽器技巧力 :S-
物理防御力 :E+
属性耐性 総合評価 D
火:28 水:48 風:21 光:15 闇:18
アビリティ
《精査》《上級魔法―水》《魅了(極小)》《高音》《持ち替え》《重奏》
神術・邪術
感覚連結(邪)魔法適応(神)
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術という項目が加わっていた。
ステータスも向上しているけど、そこは今いいよね。
「ヤミさん!どうすれば?」
『感覚連結という術がありませんか?それを使ってください。使いたいと思えば自然とわかるはずです』
感覚連結を思い浮かべると何やら言葉が浮かんできます。
これを言えばいいのかな?
「繋ぎし者、縁と信頼にて連結の扉開く者なり」
『誰に使用するか思い浮かべてください』
言われた通りに思い浮かべる。
かなんのことを。
琴音を、ピアニャを助けたように。
私も助けたい。
出会いは激的だったとは言い難い。
私はあの家で待っていた。
お父さんを。
お母さんを。
あの家にいれば昔みたいに一緒に過ごせるんじゃないかって。
帰ってきてくれるんじゃないかって。
心のどこかえそう思っていた。
もう死んだってわかっているのに。
あの日もそうだった。
私はあの家で待っていた。
誰も来なかった。
寂しかったと思う。
諦めて帰ろうと思った時だった。
家の前に人がいた。
一瞬、両親が帰ってきてjくれたのかと思った。
でも、違った。
いたのは、少女をお姫様抱っこしていた人だった。
怪訝に思ってよく見ると、その少女はうなされているようだった。
見た瞬間に彼女を助けなきゃって思った。
彼は―かなん先輩は強そうには見えなかった。
私もLv.2になってからそれなりに経っていて少しは自信があった。
そのことも合わさって、少女を助けることを優先した。街で彼女とはすぐに仲良くなった。
最初はかなん先輩の言っていることが信じられなかった。
だって異世界から来たって。
でも、悪い人じゃないっていうのはなんとなくわかった。
優しいところもあった。
夜も見張っていたけど、特に怪しいところはなかった。
そして、ウンディーネ様に会って、かなん先輩になって、少し信じることができた。
人を信じることができなくなっていたのに。
なぜか安心感があった。
かなん先輩は思っていたよりも強くて、剣術も使えていた。
最近、かなん先輩のことを考えることが多くなっている気がする。
理由はわからない。
でも、私は助けたい。
そう思う。
気が付くと見たことのない場所にいた。
ここは学園?
楽器を持ってる人がたくさんいる。
バイオリンに、ビオラ、チェロ、コントラバス。
フルート、オーボエもある。
クラリネット…
あ!
かなん先輩は?
いた!
バイオリンのところに!
声をかければいいのかな?
早く、早く行かないと!
焦る。
どうにかたどり着き、話しかける。
「かなん先輩!あの、戻ってきて!みんな待っているから!」
「?ナナか。どうしたんだ?全体練始まるよ?」
「先輩、どうしたんですか?あいはどうするんですか?助けにいくんじゃないんですか!」
「何言ってるんだ?あいならそこにいるよ」
「どうして!?あいは!」
「ほら、時間だぞ」
「先輩!あいはまだ助かってませんよ!戻ってきてください!炎龍を倒すんじゃないんですか?あいを助けるんじゃないんですか?まだ、まだ…」
「炎龍?…メローペ……勇気の試練?………ナナ、あいは助かってないのか?」
「はい、助けにいきましょう?」
「…そうだな。こんなところでグズグズして利わけにはいかないな」
「うん…うんっ!…ぐすっ」
ナナは泣き出してしまっていた。
泣くつもりはなかったのに、涙が零れる。
全く言う事を聞かない。
かなん先輩は泣き止むまで背中は優しくさすってくれた。
ナナの術を利用して、台座の間に戻る。
この表現は正しくないかもしれないが。
意識が戻るといったところか。
台座の間に戻ると、ピアニャと琴音が心配そうな顔で見ている。
随分心配してくれたようだ。
「ナナ、ありがとう。ピアニャとことねもありがとう」
「うん」
「ピアニャ、心配したよー?」
「…よかった」
皆にお礼を言い、台座を確認する。
「第3の試練達成おめでとう。
貴殿の勇気は見事だ。
これで炎の元ヘ進むことができる。
扉を開くがいい」
最後の試練がつらかったがなんとか乗り越えることができたようだ。
まだ、今でも鮮明に記憶が残っている。
愛が何度も、何度も、何度も死ぬ。
俺は何もできない。救えない。
でも、最後に一度だけ救うことができた。
今度こそ炎龍を倒し、愛を助ける。
「作戦を立てよう」
「うん、どうするの?」
「まず、危険なのは、ことねが操られることだ。だから、ことねにはこの部屋に残っていて欲しい」
「……わかりました」
「次が、火魔法と雷魔法だ。俺は雷電のマントがあるから雷魔法は効かない。でも、倒すためには、絶対に攻略する必要がある。そこでなんだが、何か案はないか?」
「うーん、水魔法で対抗するとかかな?」
「そうか、やってみよう。それじゃあ、ナナとピアニャも待っていてくれるか?俺だけなら火魔法にだけ注意していればいい」
「やだ!」
「ナナ、頼むよ。これ以上は…」
「ピアニャは小さいからことねんに守ってもらえばいいけど、私だってLv.3なの。あんなかなん先輩のこと見て黙って一人で行かせるなんてできないよ!」
「ナナ…」
確かにナナがついてきてくれれば格段に戦闘が楽になるだろう。
でも、もしも、ナナに何かあったら。
試練の時の愛みたいに、救えなかったら。
失ってしまったら。
俺は……
「先輩、私だってあいを助けたい。それに、先輩に死んでほしくない。だから、だから…」
ナナはまた、泣きそうな表情になった。
俺はもう何も言えなかった。
ナナの方が強いことは事実であったし。
「わかった。ナナは俺が守る。だから、一緒に戦ってくれ」
「ぐすっ…うんっ!」
俺とナナはピアニャに鼓舞をしてもらいステータスを上昇させる。
「あのねー、たぶん10分くらいは持つと思う。あの、えと、絶対に帰ってきてねっ!ピアニャいい子にしてるから」
「ああ。ありがとう、ピアニャ」
「えへへ…」
琴音にピアニャを任せ、俺とナナは扉を開ける。
通路を進むと俺が炎龍になすすべなく負けた平原にいた。
「あらららら?あなたクリアしちゃったの?死んでくれればよかったのに。やっぱり私があなたの命を摘み取るしかないのね。あはぁ」
もはや、こいつに掛ける言葉などない。
ナナを見て、魔法を始める。
バイオリンで旋律を紡ぐ。
ナナがそれに合わせてフルートの音を重ねる。
まずは前奏。
バイオリンで主旋律を奏でる。
サードポジションから他のポジションに移る。
移る。
移る。
左手の指をせわしなく動かす。
雨が山のダムにたまるように、上流にある水源のように、これから流れていく水のことを喜び、憂い、心配する。
俺の前奏が終わると入れ替わるようにナナが引き継ぐ。
フルートの音は水の流れを思い起こさせる。
清流。時には街をも飲み込む水流だが、今は静かに、穏やかに見守っている。
流されている。
川の中の生き物たちや、陸上の生き物たちの生活を見ながら。
静かに進んでいく。
そして、演奏は激しさを増す。
風により荒れる。
雲行きが怪しくなる。
フルートとバイオリンの旋律が激しく交錯する。
まるで水の流れを表しているかのように激しい。
その音色に答えるかのように大きな水球が発生する。
水の激しさを内包した水球だ。
前にナナが発動した水球とは比べるべくもない。
それをメローペに向かって発動させる。
理由はわからないがナナとの呼吸は完璧だった。
目線だけで何を要求されているかわかり、紡ぐ音色で次の旋律が分かる。
すさまじい感覚だった。
こんなことは二度とないかもしれないと思うくらいには。
メローペはバイオリンを構える。
そこから紡ぎだされた音色は驚くべきものだった。
サンバ、ラテン、フュージョンなど、多岐に渡る種類で熱を、炎を表現する。
まさに超絶技巧というやつだ。
指がすさまじい速度で動き、旋律を奏でていくが、まったく狂いはない。
それどころか指の動きに優美さまで感じる。
それに応じるかのように火球が発生する。
さまざまな熱をはらんだ火球だ。
それが水球とぶつかる。
すさまじい轟音とともに激しくぶつかり合う。
水が蒸発し火が少しずつ弱まる。
まだ、拮抗している。
しかし、徐々に水球が火球を飲み込んでいく。
そのまま、火球は水球に飲まれ、メローペに直撃する。
直撃する寸前のメローペの顔は驚きに包まれていた。
こんな学生二人に自分の魔法が押し負けるとは思わなかったのだろう。
白煙が上がる。
倒したのだろうか?
随分とあっけない。
「終わったのか?」
その言葉は完全にフラグになってしまっていた。
「先輩っ!」
ナナの声に反応しよく見ると、前に見た炎龍がそこにいた。
炎龍との戦いは2話構成です。なるべく、早く投稿できるように頑張ります。




