第18話 1000の敵
今回は戦闘シーンが難しったですが、他はスムーズに書きあがりました!
次回も更新遅くならないように頑張ります!
みんなに指示を出して、まずは夜の王からだ。
「聞いてくれ、まず、親玉からつぶす。指示を出すから従ってくれ」
「「「はい」」」
「ピアニャ、鼓舞を使ってくれ」
「わかった!」
ピアニャの歌声が戦場に響き渡る。
内側から火が燃え上がってくる感触。
鼓舞は味方の能力を強化するはずだ。
「ことねはピアニャを守ってくれ」
「…はぃ」
これで鼓舞を使っているピアニャがやられることはないだろう。
「ナナ、中央に魔法を叩き込んでくれ。まっすぐ抜ける!」
「うん!」
ナナの魔法なら威力も高い。
きっとある程度まではいけるはずだ。
ナナのフルートの音が聞こえる。
聞き入ってしまいそうな魅力がある。
いや、これはもう聞き入っているになるだろう。
ピアニャの歌声を邪魔しないように歌と緻密に絡んでいく。
歌が抑えるところは、フルートが流れるような旋律を奏であげ、歌が主旋律を奏であげるところは、フルートが寄り添う。
俺の中にあるイメージが浮かぶ。
海だ。
大きく果てしない。
水平線が見える。
雄大な自然を感じさせられる。
その中で2人の姉妹、いやイルカの姉妹だろうか。
二人でじゃれあうように、仲睦まじく泳いでいる。
姉のほうが妹を心配し、気にかけている―
いけない。
そろそろ集中しないと。
もうすぐナナの魔法が発動する。
タイミングを逃さないようにしなければ。
ナナのフルートの音が止む。
モンスターたちも聞き惚れていたような?
そんなことないか。
清流がモンスターを襲う。
川が流れるように、一本の道が出来上がる。
今だ!
道を駆け抜ける。
あと少し。
あと少しだ。
混合魔獣が立ちはだかる。
くそっ!あと少しなのに!
混合魔獣と対峙する。
大きさはさほどではない。
馬ぐらいだろうか。
四本足見加え、翼をもっている。
よくRPGとかで見かける感じだな。
だが、敵にするとやはり笑いごとではない。
雑魚なのかもしれないが、数は多く決して楽な状況ではない。
急いで片付けないと囲まれる。
「ロストアーク」
剣を取出し切りかかる。
今のこの剣は竜剣ブラッドというらしい。
ある程度以上の剣を一晩以上竜の血につけるとできあがるそうだ。
以前、王宮でつけといたやつの初お披露目ってとこかな。
斬りかかる。
首を狙う。
右前足の爪が襲ってくる。
右側に転がり、間一髪避ける。
そのまま、首を竜剣で斬る。
スパッと音がしそうなくらいあっさり斬れた。
強い!
竜剣の切れ味は今までの剣と比べるべくもない。
すさまじい。
その一言に尽きる。
そのまま、奥へと進む。
いた!夜の王だ。
斬りかかる。
奴も剣で防ぐ。
鍔迫り合いのような状態だ。
奴が話しかけてくる。
「ふむ、よい太刀筋だな。この世界で剣士は珍しいからな。なかなか筋がいい」
「…」
「ふむふむ、お主、儂の傘下にならんか?鍛えてやろう。もっと強くなれるぞ?」
「じゃあ、1つ聞いていいか?」
「いいとも」
「この大群、いや軍勢はなんだ?どうしてこんな時期に?」
「水の国を落とすための手駒といったところかの。うむ、数は減ってしまったな。時期は特に変ではないと思うが」
「数は減った?」
数は減ったということは、やはりそういうことだろうか。
唐突な魔方陣からの転移。
どう考えても作為的だ。
自然になんてことはないだろう。
「前に都を襲撃したのがお前たちか」
「ふむ?なにやらおかしようだな。ふむふむ。状況から察するに転移して、未来に来たといったところかのう」
「なぜわかる?」
「簡単なことじゃ。考えてもみぃ。見たことのない景色。それに加え、戦っていたものたちが全員唐突に消え、お主たちをおいてほかにない。そうであろう?」
こいつ、やはり強敵だ。
炎龍には及ばないのかもしれないが、相当に強い。
「そうじゃ!名乗っておらんかったのう。儂は夜の王黒龍クラエノ様に仕えるものじゃ」
「おれはかなんだっ!」
その瞬間鍔迫り合いを解き、後ろに下がる。
黒龍だと?
まさか、7龍のうち2龍を相手にしなきゃならないのか。
ただでさえ戦力が少ないってのに。
「儂も1つ聞いてよいかの?」
「…なんだ?」
「Lv.5はおるかの?」
「…7人いるらしい」
「なんと!そうかそうか。7人もおるのか。儂はまだ4なのでな。上があるのか心配になっていたところだったのだ」
軽口をたたきながらも奴の剣閃は鋭い。
一歩間違えれば死ぬ。
激しい。
剣と剣がぶつかり合う。
「ふむ。魔法も使えそうじゃな。待ってやるから使え」
急激に寒気が体を襲う。
殺気だ。
すさまじい量の殺気が有無を言わさぬ勢いで放出されている。
ここまでのことができるのか。
今までのは遊ばれていただけだったのだろうか。
その可能性が高い。
もう後には引けない。
魔法を使おう。
剣じゃこいつに勝てない。
バイオリンをだし、魔法を発動させる。
発動させるのは上級光魔法。
この間、段階が上がったばかりだ。
まだ、使いこなせない魔法もある。
だが、これは確認済みだ。
しっかりと放てるくらいにはなっている。
音を奏でる。
太陽の光を。
希望の光を。
明るく、眩しく、温かい。
優しさも内包しているかのような旋律。
そこへピアニャの鼓舞の効果が加算される。
ピアニャは心配だが振り返らない。
きっと琴音たちがうまくやっていることだろう。
俺はあいつらを信じる。
俺ができるのはこいつを倒す事だ。
さらに光のイメージを強くしていく。
そして、魔法が発動する。
光は圧縮され、密度の高まった球。
それが奴に向かっていく。
「ハッハッハ。よいよい。いい魔力だ。だが、まだだな。修行が足りん!」
奴はそういって剣を振る。
あっさりとした、だが無駄のない動き。
最小限の動きで次の瞬間光球は真っ二つになっていた。
片方は地面に当たり轟音を上げ、残りは流れ弾として、巨人兵器にあたった。
巨人兵器は(ギガント・ジャイアント)倒れたようだ。
その瞬間、風を感じる。
目の前に奴がいた。
目を離したのは本当に一瞬だったのに!
とっさに竜剣をあてるが吹き飛ばされる。
体が痛む。
腕が重い。
痛めたのだろうか。
打開策を考える。
このままでは、死んでしまう。
みんなに死んで詫びるわけにはいかない。
何としてでも倒さないと。
どうすれば?
魔法もダメ、剣もダメ。
何なら。
どうすればっ!!
血の気が引いていくのを感じる。
「そうだな。万策尽きたようなら儂が殺してやろう」
奴の言葉が頭の中を反芻する。
殺される。
死ぬ。
骸骨に殺される。
骸骨?
思い出せ。
ヤミが何か言っていた。
…そうだ。こいつは調教可能だと言っていた。
なぜ?なにを言っていた?
魔族だからだ。
この世界でも、生き物には心臓が、モンスターには核が存在する。
こいつはなんだ?
骸骨ということは心臓どこだ?
魔族だからと言って核となるものがないのはおかしい。
こういう時、こいつならどうするだろうか。
明らかに余裕の態度だ。
いくらレベル差が開いているとはいえ、今はピアニャの鼓舞によって強化されている。
正面からくらって無傷なんてのはありえない。
なにか秘密があるはずだ。
考えろ。
どうすれば心臓を隠せる?
あれは!
揺れている。
そんなことはありえない。
だが、きっとあれだ。
機会は一回。
外したら終わりだ。
次に、とどめをさしに来る時がチャンスだ。
殺気を消せ。
戦意を見せるな。
諦めたと思わせろ。
来る!夜の王が俺の命を摘みに。
まだだ。
まだ。
まだ…だ。
今!竜剣を持つのに力を込める。
「ぬっ!?」
感づかれたか!?
だが、止まることはできないはずだ。
俺は地面に剣を突き立てる。
「なにぃ!」
奴の顔に驚きに染まる。
俺は地面に刺したのではない。
奴の影に突き刺した。
まるで脈動しているような、ゆらゆらと揺れる薄気味悪い影に。
「な、なぜだ?わかるような要素などなにも…!」
「天才はいる。強い奴もいる。一度も負けたことのない奴だっているだろう。だが、無敵の奴はいない。誰でも得手、不得手というものがあるんだ」
「ははははははっ!おもしろいっ!いいぞ人間!まさか、黒龍様の秘術が破られるとは思わなんだ」
「…」
「そう冷たい目で見るものでないぞ。儂は200年ほど生きたが、その中でもなかなかの戦士だった。誇るといい!はははっ!」
「そうじゃな。いいことを教えてやろう。炎龍は3つの試練を課す。それを乗り越える気概のない奴は連れて行くべきではない。かわいそうじゃ」
「どうして…助言をするんだ?」
「強い戦士に敬意を払うのは当然じゃろうに。まあよい。最後に楽しかったわ。はははははははぁぁぁぁ…」
倒したようだ。
受けたダメージも少なくない。
早く戻らないと!
「きゃぁぁ!!」
あれはナナの声だ。
どうしたんだ!
焦って振り返る。
ナナが吹き飛ばされている。
巨人兵器の攻撃をくらったようだ。
外傷はないようだが。
魔法を放ち、ナナまでの道をこじ開ける。
それでも足りないので、竜剣を振るい薙ぎ払っていく。
ナナは気を失っているようだ。
あざができている。
内出血しているのだろうか。
ピアニャと琴音のほうも追いつめられている。
指揮はつぶしたもののあまり状況は好転していない。
起死回生の一打がいる。
このままではまずい。
敵の数はざっと見て残り400。
倒しきれる量じゃない。
しかも、魔法が効きづらい巨人兵器のほうが多く残っている。
剣なら効くだろうが量が多すぎる。きつい。
何か策は!
もっとあるはずだ。
何か、何か!
脳は酷使しすぎて焼き切れそうだ。
ザッザッザッ。
規則正しい足音が聞こえる。
しかも数が多い。
それに加えて、馬車のような音もする。
これは…
騎士団だった。
水の国オムニポファクルタの王直轄の騎士たち。
急いできたのだろうが、息も上がっていない。
よく訓練されているのだろう。
ヴェーゼさんやサーディルもいる。
騎士たちが交戦を始めると、琴音とピアニャがこちらにやってきた。
「…ぁの!回復します。離れていてください」
いつもの琴音からは考えられないくらいはっきりとした声だった。
彼女が詠唱する。
「傷つきたるものを癒し、死んだ者を昇天させ、憂いの輪廻を断ち切れ」
ナナの傷が徐々に回復していく。
この前、琴音に竜の血を使った時のことのようだ。
たぶんこれは、魔法じゃない。
神術だ。
きっとばれたらまずい類の術だ。
この世界の回復魔法よりも非常に優秀なはずだ。
俺が思案している間に回復は終わり、どうやら騎士たちには気づかれなかったようだ。
その騎士たちは、5人1組になって各個撃破をしている。
このまま、行けば狩りつくされるのも時間の問題だろう。
そこに、ヴェーゼさんがやってくる。
「ご無事でしょうか?」
「はい、ありがとうございます」
「…もしや、あの夜の王はあなた方が…?」
「あ…はい。ナナに教えてもらっただけなんですけど有名なんですか?」
「あ、その…本当に知らないんですか?」
どうやら一般常識の類だったらしい。
今は不信感を持たれるのは得策ではないというのに。
「す、すみません」
「いえ、謝ることではありません。奴は、十数年前まで、その名を世界各地に轟かせていた魔族の元将軍です。なにやら龍の側についたらしいという話はありましたが」
「そうですか…」
思っていたよりも強敵だったようだ。
運がよかったのだろうか。
幸運あるし。
そのあとはヴェーゼさんの要請に従い、事の顛末を話した。
「なるほど。炎龍ですか。難しいですね」
ちょうどそのとき最後の一体が倒された。
騎士たちが勝鬨を上げる。
突然あたり一帯を赤い光が包み込んだ。
奇妙な赤い空が広がる。
そして、オーブが出現した。
俺らが回収したオーブだ。
空中に魔方陣が出現し、大きな扉が現れる。
さっき奴が言っていた3つの試練か。
「これは…!」
ヴェーゼさんが苦悩した表情をした後、こちらに向き直る。
「私たち騎士団はあの龍門を見逃すことはできません。なので、即刻中に向かいたいと思います。しかし、一般人を巻き込むわけには参りませんので」
「なっ!」
俺は絶句する。
ここまで来て、愛を救えないのか?
竜剣もあるし、戦えるはずだ。
「そうですね…私たちはここの整理もしなければなりませんから、あと、1時間はここにいなければないでしょう。その間に私が目を離したすきに、扉が勝手にあいて、誰かが入ってしまうと大変ですよね?」
「ありがとうございます」
「お礼はおかしいですよ」
現状を確認する。
中で琴音に神術をかけてもらえばおそらく大丈夫だろう。
ナナはとりあえず気づいたようだ。
「いけるか?」
「…ぅん」
「はい!」
「…大丈夫」
じゃあ行くか。
扉のそばに行くと自然と開いた。
あと少しだ。
待ってろ愛!
ついに炎龍との決戦が目前に!




