第17話 始動
今回は謎のキャラクターが登場します。
誰だかあててみてください。
朝、目を覚ますとリンがいなかった。
今は6時ごろだろうか。
キッチンの方から音がした。
料理を作ってくれているようだ。
俺は、ピアニャを起こしに寝室へと戻る。
可愛い寝顔だな。
幸せそうだ。
いい夢でも見ているのだろうか。
「ピアニャ、朝だぞ」
「うーん?むにゃむにゃ?」
「朝だって。置いていっちゃうぞ」
「ぅえー?おにちゃん?」
「それだと、違う人になってるぞ。顔洗って来い」
「はぁーい」
ピアニャが顔を洗って戻ってくる。
「おはよう!お兄ちゃん!」
「おはよう」
妹ができたみたいで可愛いな。
あ!
妹設定か。
義理の妹とか。
もう言うことはありません。
神様ありがとう!
そうだ、ステータスを確認しておいた方がいいな。
「ピアニャ、ステータス見せてもらってもいいか?」
「いいよー」
どれどれ、ピアニャのステータスはっと。
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名前:ピアニャ・リーゼンフェルク Lv.2 学生 medium(巫女) (奴隷)
HP:21/21
MP:800/800
精神安定度 :B+
魔法適正値 :S
聴音可能度 :F+
音楽理論初 :E+
楽器技巧力 :S+
物理防御力 :E-
属性耐性 総合評価 E
火:1 水:1 風:1 光:10 闇:2
アビリティ
《術法》《詠唱》《禁魔》《MP強化(特)》
神術・邪術
鼓舞(神) 守護結界(神)
保護者
伊能かなん
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おお、Lv.2だ。
少し能力が全体的に低い気がするが、いろいろとすごい。
まず、マジックパワー(MP)だ。
800ですよ?
ナナよりも多いよ。
魔法使えないけど。
後は、術のためのアビリティがいくつか、か。
うん、まずまずだ。
これなら連れていっても大丈夫だろう。
ていうか、リーゼンフェルクって!
すごそうな名前。そういえば、貴族とかなんだっけ。
ピアニャを連れテーブルへと向かう。
おいしそうな料理が並んでいる。
「リン、これ全部作ったのか?」
「はい」
「すごいな。ありがとう!」
「いえ、そ、その当然のことですから」
朝食を取り、準備を済ませ、みんなとの約束の場所に行く。
アイシクル正門前へ。
ナナも琴音もすでに到着していた。
「悪い。待たせたか?」
「私たちも今来たところだよ」
その場で今後の行動の予定を再確認し、行動する。
まずは、竜人に襲われた橋を目指す。
あそこを超えた風の国領との間にある中立区域に行くためだ。
今回も2時間ほどかかった。
竜王橋だ。
今回は竜人に襲われたりしないよね。
前回も倒せてはいないからなぁ。
「ここからどうするんだ?」
「…ぇと、ちょっと…待って下さいね…」
琴音がなにか祈るような感じで手を合わせている。
「…んんっ、んっ…あっ!」
「大丈夫?ことねん?」
「はぁはぁ…ん。大丈夫」
「つらかったら言ってね」
「…ん。わかった」
「何してたんだ?」
「…ぇ、炎龍と…コンタクトを、とって…いました…」
「どうだった?」
「あっちにいます」
琴音が川の上流を指し示す。
滝があるほうだ。
「もしかして、あそこ?」
「…はい、たぶん…」
俺たちは琴音に従って滝の洞窟に行く。
全員が中に入ると琴音が何かを探し始めた。
「どうした?」
「…袋おちてないですか?」
珍しく、割とはっきりとした声だった。
一瞬誰の声かわからなくなるような。
「袋って?ん?もしかして…ロストアーク」
アイテムボックスの中から水銀温度計が入っていた袋を取り出す。
琴音に渡してやる。
「ことねのだったのか?」
「…はぃ…」
「その、ごめん。竜を倒すのに水銀温度計…」
「…ぃいです」
「そうか。ごめん」
琴音は唐突に泣き出した。
泣き止むまで待ち、話を聞くと、袋についての話をしてくれた。
少しわかりにくかったので、俺が代わりにまとめる。
琴音は昔、冒険者をやっていた人に拾われたそうだ。
その人はもうおばあさんと言ってもいいような年齢だった。
その人は琴音に、オーボエを教えてくれて、魔法が使えるようになったらしい。
その生活が8年ほど続いた。
琴音は本当の両親に会いたいとは思わず、この生活が続くのだと思っていた。
だが、別れは突然だった。琴音を誕生日を祝う約束だったのに帰ってこなかった。
琴音は一日中待っていたが来なかった。
その日、モンスターの大群が街を襲い、死傷者が多く出た。
その時のモンスターたちは1000体ほどになると唐突に姿を消した。
それにより、街の崩壊は防がれ、助かった。
しかし、元冒険者として街の防衛にあたり亡くなってしまったそうだ。
そのおばあちゃんの残した唯一のものがこの袋だったそうだ。
冒険者ギルドに預けていったらしい。
何とも言えない思いだった。
その大事な形見を使ってしまった。
失せてしまった。
琴音はいいと言っているが本当に申し訳ない。
「…ぁの、あれ…です」
琴音が指さした方向には、空洞があった。
前に来た時には気づかなかったが。
中には、竜の紋章の入ったオーブがあった。
どうやらこれが必要らしい。
そのオーブを取り、洞窟を後にする。
「ことね、次は、どこにいけばいいんだ?」
「…ぇと、平原です」
言われるままに、平原に向かった。
オークと戦ったあたりだろうか。
ということは、ハーフの村―アメージング・グレイスも近いのだろうか。
俺は場所が分からないが。
その辺まで来ると、妙な気配を感じた。
数百、いやもっと多い。
殺気だ。
すさまじい量の。
みんなに注意を促すが、何も変化はない。
基本的にモンスターはいないはずなのだから、こんなところで殺気を感じるのはおかしい。
俺だけの勘違いかと思ったが、みんなも表情がこわばっている。
誰かいるのか?
強盗団とか、ならず者か。
轟音が響いた。
巨大な魔法陣が展開し、視界いっぱいに光が広がる。
あまりの光量に目が眩む。
次に目を開いたときには、信じられない光景が広がっていた。
モンスター、モンスター、モンスター。
目前にはモンスターの束だ。
圧倒的な量だ。
はっきり言って、まったくシャレになってない。
よく、漫画とかで勇者が数万の魔物に一人で戦ったりするだろう。
まさにその状態だ。
考えてみて欲しい。
自分は勇者じゃない。
チートな能力もない。
ご都合主義に勇者が現れてくれるわけでもない。
足がすくむ。ただ単純に思う。
怖いと。
死の恐怖が襲ってきている。
死神の鎌がのどにあてられているようだ。
一度冷静に自分の状況を考えてみよう。
まずは、自分の能力。
魔法―広範囲殲滅系の魔法はない。
今は、愛がいないので、合体魔法も使えない。
単純に少しずつ殺していくか?
無理だ。
MPが先に尽きるだろう。
剣術―魔法と同じく広範囲技はない。
これだけの物量があれば、倒し切ることは困難だろう。
邪術―たぶんだめだ。
相手を服従させるのは、そう簡単じゃないだろう。
俺の能力じゃどうにもならない。
次はみんなだ。
ナナ―強い。
だが、どうだろうか。
前にステータスを見た時には、この状況で使えそうなものはなかった。
琴音―どうやら、トラウマのスイッチが入ったようだ。
先ほどから震えている。
魔法は使えるだろうか。
ピアニャ―鼓舞がある。
だが、オークキングの時よりも味方は少なく、敵は多い。
厳しすぎる。
敵はだいたい半分が混合魔獣、残りが巨大兵器だ。
そして、夜の王が一体。
だめだ。
倒せる見込みがない。
もしかして、琴音の言っていた消えた千体というのはこいつらのことじゃないだろうか。
なんて魔の悪い。
もはや、笑えそうだ。
とりあえず、ヤミに確認してみるか。
「右手に宿りしは、強者の証。弱きものの尊厳を踏みつけ、わが身の糧とする」
世界が暗転する。
「ごきげんよう、マイマスター。お早いご利用ですね。計画的なご利用をお勧めしますが」
「忠告ありがとう、ヤミ。たぶんわかっているだろうけど、あんまり悠長なこと言ってられないんだ」
「つれないですね、マイマスター。では、単刀直入に。モンスターを調教するのは不可能です。夜の王なら話は別ですが」
「なぜ?」
「あれは魔族です。条件を満たせば、奴隷化可能です、マイマスター」
「そうか…」
「…そうですね。マイマスターが少し手伝ってくれるのでしたら、打開策を提案するのもやぶさかではないですが」
「打開策?あるのか!」
「あまり確率は高くありませんよ、マイマスター。零ではないというだけです」
「それでもいい。教えてくれ、頼む」
「だ、だから手伝ってくれたらですよ、マイマスター」
「ああ。そうだな。どうすればいい?」
「そ、その…できれば、マイマスターの…そ、外のお話しが聞きたいなと」
「そんなことでいいのか?」
「そんなことではないんですっ!!」
「わ、悪い。無神経だった」
「…いえ。取り乱してすみません、マイマスター」
ヤミに促され、椅子に座る。
相変わらず、この空間にはテーブルと椅子があるだけだ。
「何の話が聞きたいんだ?」
「……マスターの歩んできたことを」
ヤミが俺の近くの椅子に座り話し始める。
2時間ほどだろうか。
ヤミに求められるままに地球のこと、転移してからのことを順番に話していった。
ヤミはおとなしく聞いてくれた。
途中で紅茶も淹れてくれた。
久しぶりに紅茶を飲んだせいか、どこか懐かしかった。
淹れたての紅茶は熱かった。
この場面だけ切り取れば、単なるお茶会だろう。
だが、話は終わる。俺はやるべきことがある。
「ヤミ、教えてくれるか?」
「…夜の王を先に倒し、指揮を潰せば、おそらく動きが単調になるでしょう。そこをたたけばなんとかなる、かもしれません、マイマスター」
「なるほど。指揮官をたたくのか」
「…マイマスター、どうしても行かれるのですか?」
「ん?」
「……提案しといてはって話はあるんですが、とても死ぬ可能性の方が高いです、マイマスター」
「そうだろうな」
「…マイマスターは、なぜ、そこまでしていかれるのですか?」
「あいを返すと、守ると誓ったから」
「そう、ですか…」
「俺は生きてこの戦場を抜けるつもりだから、また、お茶会してくれるか?」
「!!……はい、マイマスター。ご武運を」
「ありがとう」
世界が暗転する。
戻ってきた。
もういつモンスターの襲われてもおかしくない。
しかも、今回は増援を望めないだろう。
だが、やることは明確だ。
ここを切り抜け、愛を助ける。
ヤミの言う通りなら、夜の王からだったな。
「みんな、聞いてくれ。今から俺はこいつらをたたきつぶす。でも、みんなを巻き込む訳にはいかない。だから逃げてくれ。それまでは、命に代えてもここは抑える」
みんなが押し黙る。
ナナが口火を切る。
「せんぱい、本気でそんなこと言っているんですか?」
「私たちは、理由はさまざまでしょうが、かなん先輩とあいを助けたいと思ってきています。炎龍と戦おうというんですから、それなりの覚悟で来ています。もちろん、死ぬのは怖いです。でも、ここで逃げるほど臆病ではありません」
ナナに言われ、ヤミの言葉を思い出す。
ヤミは言っていたな。
俺は傲慢だと。
反省したはずだったのにな。
そう簡単には治らないか。
ふっ。
今度こそ間違える訳にはいかない。
俺が一人で勝手に死ぬわけではないのだ。
そうだ。みんなで帰ろう。
俺は決意を新たに戦闘へと意識を集中させた。
‐風の国某所‐
彼は、空き時間を使い、読書に励んでいた。
そこにエルフの少女がやってくる。
少女の恰好は、メイド服。
背はさほど高くない。
髪は金髪。
リボンで髪を結んでいる。
髪は腰の高さくらいまである。
瞳の色は宝石のようなエメラルド色。
胸はすごく多きいわけではないが服の上からでも膨らみがわかる程度にはある。
ま、美少女だ。
「あの、ご主人様。そろそろラノベ読み過ぎじゃないですか?」
「何言ってんの?ラノベは人生の教科書だよ?」
「そうですか。ご主人様、もうすぐお出かけになるんですか?」
「無視は酷くない!?…ああ、ちょっと野暮用」
「それじゃ、ご主人様。ご飯にします?お風呂にします?それとも、…夜伽ですか?」
「いやいやいや。そこ夜伽じゃないから。わたしだから」
「わたしはご主人様のものですから。そんな厚かましい。そういうのは、夜々(やや)とやってください」
「いや、いいから。言って、ね?」
「ぅ……ぁ…わ、わたし?」
少し伏し目がちに上目遣いでこちらを見上げてくる少し頬が赤い少女。
彼女のエメラルドの瞳を見ていると理性さんってだれかわからなくなる。
数秒堪能したのちに、彼女を抱き寄せる。
「時間になるな。そろそろ行かないと。あ!エルフィ一緒に行こう?」
「え?ま、まぁ、その…ご主人様がどうしてもって言うなら行ってあげないことも…」
シルフィかわいいな!
ツンデレならぬ、デレデレか!
かわいいだけじゃん!
いけない。
いけない。
時間ないんだった。
「じゃあ、いくよ?」
「はい、ご主人様」
次の瞬間、そこにはもうだれもいなかった。
次回は戦闘(予定)です。
戦闘シーンは書くのが難しくて、悪戦苦闘しております。




