第14話 竜と愚か
評価とブクマありがとうございます。感無量です。
途中カタカナで読みにくいかもしれません。すみません。
キャラクターの名前を付けるのに時間がかかってしまう今日この頃です(笑)
「ナナ、春篠を最近見かけたか?」
「そういえば、授業ずっと休んでいるね」
「そうか。じゃあ、探すしかないか」
「せんぱい、急にどうしたの?ことねんとなにかあった?」
「あぁそうか。そうだな。実は、愛が炎龍に連れていかれた。どこにいるかはわからない」
「え!愛が!さらわれたってことだよね?」
「ああ」
「だから、ここのところ…」
「ピアニャ、リン、なるべく早く戻ってくるから、ここで待っていてくれ。春篠を捕まえてくる。お金は2万ヴェルおいていくから、二人で適当に使ってくれ」
「わかりました。ご主人様」
「ピアニャもいくっ!」
「だめだ。ピアニャはお留守番だ。ピアニャを連れていくのはまた今度な」
「ううぅ」
うなってるピアニャをリンに任せ、寮を飛び出す。
春篠を探すが、見つからない。
一度行った場所を思い出して整理しよう。
まずは、A・Aのラウンジに行き、話を聞いたが、ここ三日間で春篠を見かけた人は一人もいなかった。
学校に来ていないのは明らかにおかしい。
その後、かわいいアクセサリーが売っている雑貨屋などを回った。
一人も見かけた人がいなかった。
おかしい。
行動を誰にも目撃されてないなんて。
そうだ!
女子寮なら。
思いつき、女子寮へと向かう。
寮には男子寮と女子寮があり、1階〜3階は男子寮、4階〜6階が女子寮、3階と6階がリラクゼーションルームになっている。
ちなみに2階と4階がお風呂付きの部屋だ。
それぞれ1階と4階に管理人がいて、出入りをチェックしている。
もし、春篠が寮生活なら、管理人が見ているだろう。
さすがに。
寮の前まで行くとナナがいた。
「ナナ、どうしたんだ?」
「もう、先輩、勝手に行かないでね。ことね、寮に住んでるから、管理人さんに話聞いてきたんだよ」
「さすがナナ!今、俺も気づいて戻ってきたんだ」
「うん。ことねは正門から出て川沿いを行くっていってたらしいよ」
「わかった。すぐ行ってくる」
「あ、ちょっと待って。私も行くよ」
「ダメだ!ナナ、ついてくるな」
「わたしでも力になれることがあるかもしれないよ」
「それでもだ」
「むぅ、…じゃあ勝手に行くからせんぱいはついてこないでね」
「……わかった。一緒に行こう」
「よし!それじゃ、しゅっぱーつ!」
ナナと一緒に川へ向かう。
川は、竜門川というらしい。
名前の由来を聞いてみる。
「なんで、竜門川っていうんだ?」
「鯉の滝登りって知っていますか?単なる伝説なんですけど、鯉が、滝を登ると竜になると言われていて、そこからだそうです」
鯉の滝登り。
有名な中国の故事じゃないか。
漢文の授業でやった気がする。
なんか、元の世界-アースと呼ぼう-と関係のあるものが多すぎないか?
ムシクムには、アースを知らないとおかしいものが多々ある。
もしかして、もっと昔の時代に俺と同じように転移者がいたんだろうか?
いや、いないとさすがにおかしいだろう。
なんで、中国の故事が割と正確に伝わってるんだよ。
まあ、今はいい。
やらなきゃならないことがある。
愛を助けてからゆっくり考えよう。
川にたどり着く。
さて、どっちにいけばいい?
上流か下流か。
待てよ。登れば(・・・)竜になるんだよな。
てことは…
「ナナ、上流を目指そう」
「?うん」
かなりいったところに滝があった。
大きい滝だ。
力強く荒々しい。
自然の産物。
まるで、芸術品のようだった。
日本では見られない光景だろう。と言うものの滝を実際に見たことはないんだけど。
これ以上はいけない。崖のように険しいので上ることなど到底できない。
とりあえず、探してみることにした。
結論から言うと、春篠はいなかった。
かれこれ一時間くらい探しているが見つからない。
下流の方に行ったのだろうか?
なら、急いで戻らないといけない。
見落としは何かないだろうか?
違う。
発想を変えるんだ。
異世界もので、起こりそうなことはなんだ?
服のままヒロインと水遊び?-いや、ない。したいよ?したいけどね?
襲われて、流される?-遅すぎだろ。
秘密の階段とかがある?-あるかもしれない。
そうだ。
あの岩のどれかがそうかもしれない。
ペタペタ。
とりあえず手当たり次第押してるけど反応はない。
目印とかは?
これじゃない?
あった。
もう一つ。
隠された部屋の方法が。
滝に向かって歩いていく。
「かなん先輩?どうしたの?」
「ナナ、少し待っててくれ。試したいことができた」
「う、うん」
滝の近くまで行く。
水飛沫が痛い。
早くやってしまおう。
意を決して滝に飛び込む。
壁に向かって。
「きゃぁぁ!?」
やっぱりそうか。滝の裏に洞窟だ。ご丁寧に松明まで。しかも、ダメージを受けないように魔法までかけてあった。すると、後ろから衝撃がきた。
「うわっ!」
「きゃぁ!」
ナナが来たようだ。
冷静に考察してる感じになってるが、全然そんなことはない。
よし。
よーし。
叫ぶぞ。
うわああぁぁぁあああ!!
ふぅ。
ふぅ。
いや、その、あのですね。
どういう入り方をしてきたのかナナが後頭部に跳び膝蹴りをしてくるから地面とこんにちはしてるけど、そういうことじゃなくて、あーもう、だからわかるじゃん?
ナナの柔らかいものの感触が後頭部に?
感じるみたいな?
後は、シルクの布地だなとか?
いい素材ですね!
「う、うぅ?」
「きゃっ!かなんせんぱい大丈夫ですか?」
大丈夫です。
本当にありがとうございます。
ぷにっ。
ぷにっ?
「きゃぁぁぁぁああ!!!」
痛い。
まぁ、何が起こったかは言わなくていいよね。
わかるじゃん?
この流れで他の選択肢ないじゃん?
「ごめんナナ」
「うぅ、同じ人に2度も初めてを穢されるなんて」
「いやいやいや、不可抗力だって。…ていうか突っ込んできたのナナじゃん」
「せんぱい、責任取って下さいね?」
「え?」
「センパイ、セキニントッテクダサイネ?」
「ハ、ハイ」
「そ、それじゃあ、奥いこ?」
その後、二重の意味で悶えたのは言うまでもない。
奥に進むにつれて、だんだんと嫌な感じが強まってくる。
「ナナ、大丈夫か?いつでも動けるようにしておけよ」
「うん」
ナナに注意を促すと、大きな空間に出た。
そこには俺の語彙力じゃ表現できないような、綺麗な銀髪の女の子がいた。
銀髪に目がいきがちだが、顔もかわいい。
なんなんですか?
異世界の子って顔面偏差値高いんですか?
春篠を観察していると彼女が話し出す。
「オロカナ、コムスメニ、イセカイジンカ」
「ことねん?ねぇ、ことねんってば!どうしたの?なんでそんな風に…」
「コムスメ、コイツヲシッテイルノカ?ザンネンダッタナァ?コイツハ、イマハ、タダノ、アヤツリニンギョウダ」
「ま、まさか、あなた」
「ソウダ」
「酷い」
春篠らしき人物高らかに笑う。
不快な笑い方で。
濁った目をこちらに向けて。
「ナナ、どういうことだ?」
「ことねんは…ことねはあいつに洗脳されているの!」
「ふぅーん。そういうことか。おい、偽春篠、どうやったら、お前の洗脳が解ける?」
「コトネッテ、ヨンデヨォ〜」
「うるさい。早く答えろ」
「プンプン、ヨウキュウ、バッカリノ、オトコハ、キライダヨォ」
「…偽ことね、早くしろ」
「…に、逃げて、おねがぃ…」
琴音から涙が落ちる。
一瞬だけ、目に光が戻る。
そうか。
必死に抵抗してるんだな。
なら、助けない訳にはいかないよな?
「フム。マダ、チカラガ、ノコッテ、イタカ。モウ、ナイヨウダガ。コノムスメノ、ケンリハ、ワレガ、アズカッテイル。ワレヲタオセバタスカルゾ?」
「そうか」
わかりやすくていい。
ただそう思った。
「ロストアーク」
剣を取り出す。
「ワガ、ヨビゴエニ、コタエヨ。ショウカン」
その瞬間巨大な魔法陣が出現し、竜が現れた。
「ふむ。やはり、こちらの方が動きやすいな。一つ助言をやろう。こいつは傷つけないことをおすすめするぞ。あやつられているだけなんだからなぁ。グヒッ。いくぞ、ことねとやら」
「ナナ後ろから魔法で援護してくれ」
「うんっ」
ナナの柔らかいフルートの音が響く。
それに重ねるように琴音がクラリネットを吹く。
琴音はクラリネットを吹くのか。
そこへナナが読み切ったかのようにフルートの音を絡めていく。
演奏の技術的にはナナの方が相当上手のようだ。
ナナの魔法が発動する。
球状の水だ。
レベルが違うのもあるだろうがすごい。
竜が口を開く。
のブレスだ。水球が勢いよく蒸発していく。そのタイミングで斬りつける。硬い。腕に衝撃が返ってくる。
一撃離脱の方針で、ヒットアンドアウェイを繰り返す。
少しずつダメージが蓄積していく。
あと1撃で刺さる!
竜の右前脚からついに血が吹き出す。
剣を抜き、数歩後退する。
体制が崩れた竜の懐へ走り、勢いをつけて剣を刺す。
血が吹き出す。
悲鳴が聞こえる。
竜のではない。
俺のものでも。
ナナの声だ。
ナナがやられたわけじゃない。
やったのは俺。
そしてやられたのが…琴音。
思考が停止する。
なぜ?
琴音は竜に乗ってたはず。
その答えは簡単だった。
少し考えれば当たり前でこの時には考えつかなかったこと。
琴音は竜に操られているということ。
盾代わりに琴音を使う可能性は十分にあった。
もっと気をつけるべきだった。
とどめの一撃という事実に一瞬気が緩んだ。
それはこの戦闘において致命的なミスだった。
竜の爪が遅いかかる。
致命傷は避けたが深手だ。
ナナも茫然自失している。
詰んだ。
チェックメイトってやつだ。
床に転がっている、あるものに気づく。
違う。
まだだ。
チェックメイトじゃない。
王手ってだけだ。
可能性がある。
体力をなるべく使わないように竜に近づいていく。
竜がこちらに気づき、哀れみの目を向けた後、口を開く。
まだだ。
あと何秒か落ち着け。
きっと大丈夫だ。
大丈夫。
そこで手に持っていたそれを竜の口めがけて投げる。
行けるはずだ。
ちょうどうまく口の中へ。
だが、火が迫る突然、水球に覆われる。
ナナか。
そのあたりから竜の様子に変化訪れる。
竜が苦しみだす。
苦しんで死ね。
そう思った。
種明かしをしよう。
俺が投げつけたのは水銀温度計だ。
最近は見かけないので知らないかもしれない。
水銀は非常に有毒なのだ。
その水銀をわざわざ熱して直接胃の中から取り込んでいるのだから、毒の回りも速いだろう。
もともと毒の耐性がないだけかもしれないが。
こいつはよくない奴だった。
こんなに明確な悪のやつがそうそういるだろうか?
いや、視点の違いなのかもしれないな。
でも、俺はあいつを許せない。
ただ、それだけだ。
「グギャァアアア、人間がっ。何をしたっ!」
「水銀って知ってるか?気体の水銀は毒性を持つから危険なんだぜ?」
「すいぎん?なんだそれは、グァアアア!」
「お前本当に、無知だな」
「クッソォォオオオ!!」
最後に断末魔の叫びをあげ、竜は動かなくなった。
まだだ。愛と琴音を…
まず、琴音のところに行く。
体が重い。
生温かいものが手にべっとりとついている。
動くのがこんなにしんどいのは初めてかもしれない。
「せ、せんぱい!血が、血…」
「大丈夫だ。ことねのところまで行くのを手伝ってくれないか?」
「で、でも……うん」
「ありがとぅ」
なんとかたどりつく。
このまま、琴音を死なせるなんてできない。
最初は誤解した。
琴音が裏で手を引いていたのだと思った。
でも、違った。
琴音は必死に抵抗しようとしていた。
AAの前で愛を見て、逃げ出すようにいなくなったのも、そのせいだったのではないだろうか?
まぁ、いい。
今はどちらでもいいことだ。
琴音を助けなくては。
俺が殺したことを認めたくないのかもしれない。
それでもいいか。
琴音を救えるなら。
「右手に宿りしは、強者の証。弱きものの尊厳を踏みつけ、わが身の糧とする」
そう詠唱した。
世界が暗転する。
「お早いお戻りですね、マイマスター」
「…そうだな」
傷は痛くない。
この空間にいる間は無効かされるようだ。
そんなことはいい。
「この力でことねを救うことはできるか?」
「私には不可能です。ただ、竜の血を使えばおそらく」
「竜の血か。割と万能設定が多いもんな」
「何を言っているのかわかりかねますが、あなたには効果がないでしょう」
「そうか」
「随分と落ち着いていらっしゃるのですね」
「あいもことねもナナも…誰も死んでない。みんな無事だ。あいとの約束は守れないけど、悪くないかなって」
「そうですか。短い期間でした。もう少しあなたと話してみたかったです」
「うれしいな」
「では、行くのでしょう?」
「ああ」
「…では、最後に一つだけ。このまま死ねば、愛さんは、助かりませんよ」
世界が暗転する。
最後の言葉だけ妙にゆっくりと聞こえた。
愛を救えていない?
物語も1章終盤に差し掛かってきました。
話は変わりますが、作者の都合にて、投稿頻度が落ちてしまうと思われます。そのぶん、1話をちょっと長めにしているので、ご容赦ください。(長いせいで時間がかかるとは言えない)




