The Chain
教団は何も見つけられずに撤退した。家を調べられたり子供に近づかれたりするのを拒んで抵抗したため、数人の負傷者が出た。激しく抵抗した者の中には、二人の死者もいた。
カエリアンは寝台の上で普段着に着替え、それから立ち上がった。
遺産の声が響く。
(……昨日から、何も言ってくれないじゃないか……)
無言でブーツを履く。
「……」
(……家族のことを話すべきだったのは分かっているわ……でも、あなたには復讐なんかを考えて育ってほしくなかったの。それは早死にを招くだけだから……)
(三年……話してくれるまでそれだけかかったんだね。僕はずっと、誰が迎えに来るのかも知らないままだった。死ぬかと思ったその瞬間に知らされるなんて)
(こんなに早くその時が来るとは思わなかったのよ)
(明らかにそうじゃないか。教団について知っていることを全部教えて。言えないとか、後で話すとか、そういうのはやめてよ)
(……ええ……それは当然の要求ね。でも、誰でも知っている以上のことは教えられないわ。目の教団は、フレイムの保持者を見つけて始末することを目的としているの……まあ、成功すればの話だけど。大抵は他の魔物に先を越されるか、フレイムの狩人のほうが先に見つけることさえあるわ)
(……最高だね、また私を追う連中が増えた)
(ひとつの集団ではないわ。狩人たちは独立していて、自分のために力を求めているだけ。一方で目の教団は、フレイムのような力は誰の手にも渡るべきではないと考えているの)
(それだけ?)
(教団は魔術師だけでなく普通の戦士でも構成されているから、かなりの数がいるわ。以前は完全に独立していたけれど、君の家を襲った時に聞いた限りでは……彼らはラグノリス王の名の下に行動していたようね)
(それなら、この土地にいるはずがないよね)
(ええ、ヴラドミストの許可がない限りはね。でも、そんな許可が下りるとは到底思えないわ)
カエリアンは扉へ向かい、外に出ようとしたところでイレサに呼び止められる。
「どこへ行くの?」
「遊んでくる……外で」
「あの男たちがまだ近くにいるかもしれないわ。ここにいなさい」
「……分かったよ、母さん」
再び寝台へと歩いて戻る。イレサは台所から移動し、彼のそばに立った。
「あなたの安全のためよ。分かるわよね?」
(どれだけ知っているのか、あるいは知っているつもりなのかを探るいい機会かもしれない)
「私の……安全のため? あの男たちはもう行ったじゃないか。彼らが何を狙ってたのか知ってるの?」
「いいえ、知らないわ。それに、彼らが何を求めていようとどうでもいいの。私にとっては、あなたを無事に守ることだけが大事なのよ」
(フレイムのことを口にして話を引き出そうか……いや、それじゃあ自分でばらすようなものだ)
「カエル」
イレサが顔を上げる。
「今まで、自分の中に何か奇妙なものを感じたことはある?」
「……ないよ。例えばどんな?」
「私……実のところ分からないの」
そして彼女は微笑む。
「今のは忘れてちょうだい。あなたには何もおかしいところなんてないわ。朝食を作るわね」
***
(……ナエヴィア……ナエヴィア)
石の中から彼女が答える。
(……カエリアン…?)
(違う、君を助けたあの神だ。どうやらあの少年の信頼を勝ち取ったようだな。だが、一度失敗した後だったのが惜しいな)
(……ええ……失敗しました……)
(完全に君のせいというわけではない。彼の頭の中の小さな声の存在を計算に入れていなかった。俺にその情報が欠けていたんだ。俺にとってすら、保持者というものは謎に包まれているからな)
(……それが何だというのですか……?)
(まさか、もう諦めたとは言わせないぞ)
(あなたには関係ないでしょう。それに、この三年ほど何の兆候も示さなかったではありませんか。もうフレイムには興味を失ったのかと思っていましたよ)
(信じないかもしれないが、下位の神の生活というのも忙しくてね)
(ともかく、彼は私にフレイムを渡しませんでした……それでよかったのです。私はこのまま観念体として留まります。私に何を望んでいるのですか?)
(彼を殺してほしい。今度は直接だ。君は魔術を取り戻し始めたのだから、もう騙し討ちの必要はないだろう。その力を利用して彼を破壊し、フレイムを吸収するんだ)
(な、何を……?)
(聞こえなかったのか? 殺せと言ったんだ。再び生きたいのだろう? ならば俺の言う通りにしたまえ)
(彼は殺せません)
(できるし、やるんだ。最初はそうするつもりだっただろう。間接的とはいえ、彼を殺す意志があったはずだ)
(私はもう、三年前の私とは違うのです!)
(ほう、そうかな? 奇妙だな……俺には同じに見えるがね)
(決してそんなことはありません)
(ならば教えてもらおうか、ラグノリスのお嬢さん。俺の知る限り、君は前の人生と同じ役立たずの娘のままだ。己の王国に立ち向かう勇気を持った何百人もの人々を終わらせたあの娘とね。君はすでに人を殺している。直接ではないにせよ、その手は血で染まっているのだよ)
(黙りなさい! あれは私ではありません)
(カエリアンの命を終わらせるだけでいい。そうすれば、新しい人生が手に入る。この石の中に留まる代わりに、君の思い通りに生きられる人生がな)
(唯一の友達を殺した罪悪感を抱えて生きるなら、新しい人生などに何の価値があるというのですか?)
(……ふむ。他人の命などどうでもよかった、あの冷酷なナエヴィア ラグノリス王女はどこへ行ってしまったのかな?)
(彼女は湖の底に沈みました。今の私は別人です)
(……そして新しい君には『友達』がいると? 冗談を言わないでくれ! 彼は君の友達なんかじゃない。かつての君の王国と同じように、君を利用しようとしているだけだ。それに、君も彼の友達ではないだろう。彼を気に入っているふりや、謙虚に命を救ったふりをしたところで、君が彼に嫉妬していることくらい、君も私も分かっているはずだ)
(嫉妬ですって?)
(そうだ。彼には君が持てなかった母親がいて、君が今あれほど望んでいる暮らしがある。母親のそばで寝台で快適に眠る彼の傍らで、君は石の中だ)
(……)
(ふっ、その沈黙が何よりの証拠だ。ただ彼を殺せば、自分の人生が手に入るのだ。食べ物の味を楽しめないことが恋しくはないか? 真の愛情がどういうものかを知りたくはないか? 君がすべきことは……たった一つだけだ)
(……私は……それが……欲しい……)
(ふふ、分かっているとも)
(でも、できません)
(できるさ。少しばかり手を貸してあげよう。君には決して逆らえない小さな後押しだ。なぜなら、それは既に君の中に存在しているのだからな。私はただ、それを開花させるだけだ)
(な、何を……? そんなこと……)
(そういえば王女よ、私は嫉妬の神だ……最初はきちんと自己紹介していなかったな)
ナエヴィアは石から姿を現し始める。草原の真ん中で、彼女の目の前にはカエリアンがいた。
「信じないかもしれないけど、先週の残りは外に出られなくてさ。鍛錬が遅れちゃったよ。あ、そうそう、今日はこれを持ってきたんだ」
儀式の書を指さす。本を地面に置き、ひざまずいて読み始める。一方、背後にいるナエヴィアは焦点の定まらない眼差しで、ゆっくりと彼に向かって歩み寄る。その手には、純粋なナリスの刃が形作られていた。
(ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、そんなことしたくない!)
(いいや、したいはずだ)
カエリアンは最初の数ページをめくる。
「ねえ、見てよ。索引には最初の……あれ? ……ナエヴィア?」
ナエヴィアは刃を高く振り上げ、勢いよく振り下ろした。純粋なナリスの刃が温かい肉に突き刺さる。
「カエ……リアン」
カエリアンの目が限界まで見開かれた。
「ど、どうして……? あんた、なんで……そんなことを……」
刃は突き刺さっていたが、それはカエリアンの肉ではなく、ナエヴィア自身の肉だった。
「神が……私は……拒絶したのです……」
その瞬間、彼女は地面に崩れ落ちた。カエリアンはすぐさま彼女に駆け寄り、その頭を腕の中に抱き起こした 。だが、手当てすべき血も傷もなかった。
(くそっ、この愚か者め! あれが私たちの唯一の機会だったというのに、自分の命よりあいつの命を選びおって!)
神の声が薄れゆく中、カエリアンは叫んだ。
「ナエヴィア!!」
最後の意識の中で、彼女は思う。
(いいえ……私は道具として生き直すより、一人の人間として死ぬことを選んだのです)
ナエヴィアの体はカエリアンの腕の中で、少しずつ崩れ去り始める。
彼女がいた場所をじっと見つめたまま、彼は問いかける。
「……彼女は……死んだの……?」
遺産が答える。
(……いいえ……彼女の体は石に戻っただけよ)
カエリアンは石を拾い上げたが、何かが違っていた。石にはひびが入っている。
「召喚するよ」
水の球体を作り出す。
(ダメよ! そんなことをしたら、彼女を見るのはこれが最後になるかもしれないわ)
「……でも、ナエヴィアは……」
(その石は彼女の魂を繋ぎ留めるための媒介のようなものなの。もし石が壊れたまま彼女が再び外へ出れば、その時は魂も壊れてしまうわ)
「じゃあ……私にできることは何もないってこと?」
(そうとも限らないわ。その本の中に答えが見つかるかもしれない)
カエリアンは石をしまい、儀式の書を拾い上げる。
「ナエヴィアは……『神』って言ってた。きっとそいつが、彼女に私を殺すよう強要していたんだね……彼女はまた、私の命を救ってくれた。今度は私が、彼女に新しい命を与える方法を見つけてみせる」




