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冒険者ギルドへ

 橋を降りると、倉庫街に出た。


 石造りの建物が通りの両側に並び、入口の大扉は開け放たれている。

中では荷物の出し入れが続いていた。木箱、樽、布袋。荷運びの男たちが

忙しく動き、帳面を片手にした商人がその間を歩き回って数を確認している。


「そこ置け!」「次の船は昼だ!」


 声が飛び交い、荷馬車の車輪が石畳を軋ませる。港に近いらしく、運河の

音がまだ聞こえていた。俺は邪魔にならないよう道の端を歩きながら、通りの

流れを観察した。


 建物は石造りが多い。木造もあるが、背の高いものはほとんど石だ。窓は

小さい。防犯か、風避けか。壁の石は古く、角が丸くなっている。長い時間を

かけて積み上げられた街だということが、石の色だけでわかった。


 しばらく歩くと、大きな橋が見えてきた。さっき渡った橋より幅が広く、

荷馬車がすれ違えるくらいある。橋の下を主運河が流れていた。さっきの

水路とは規模が違う。細長い荷舟が連なり、船頭が長い竿で水底を押しながら

進んでいく。橋の向こうには細い水路が街の奥へ向かって枝分かれしていた。


 陸と水、この街はその両方で動いている。


 橋を渡ると、途端に空気が変わった。人が増え、店が並んでいる。屋台、

露店、道の両側に布を広げた商人。


「香辛料だ!」「焼きたてのパン!」「南の果物、今日だけだぞ!」


 肉とパンと甘い果物の匂いが混ざる。市場だ。服装もさまざまで、肌の色が

違う者、訛りの強い者、別の言葉で商談している声も聞こえる。文化が混ざり

合い、それでも値段の交渉だけは共通の言語で進んでいた。


(まず宿、それからギルド)


 頭の中で整理する。三日以内に身元を通す。手元には銀貨一枚。宿の相場も

食事の値段もわからない。情報が足りなすぎる。


 市場の人の流れを目で追う。橋から来た人、運河沿いを歩く人、市場の奥へ

進む人。その流れの先に、一つの建物が見えた。


 石造りで、他より少し大きい。入口の上に紋章があった。剣と秤、そして

歯車。


 俺は足を止めた。


(……ここか)


 冒険者ギルド。大きな木製の扉から人が出入りしている。鎧の男、剣を

背負った女、旅装の男。どう見ても普通の住民ではない。


 少しだけ息を吐いた。宿より先にここへ来るべきかどうか迷ったが、身元

証明の期限がある。順番を間違えている余裕はない。


 扉を押して中に入った。


 熱気が来た。


 広い室内に大勢の人間がいた。木のテーブルが並び、鎧姿の男女が酒を

飲み、飯を食い、声を上げて話している。壁には紙が何枚も貼られ、人が

それを眺めていた。奥にカウンターがあり、受付らしき女性が書類を捌いて

いる。天井は高く、煙と話し声と笑い声が混ざって漂っていた。


 森の静けさとは、正反対の場所だった。


 俺はそのまま室内を見渡し、カウンターへ向かった。ギルドの入口にいた

若い男性職員が声をかけてきた。その視線が一瞬だけ止まった。


「……旅の方ですか?珍しい髪色ですね」


(そうか、目立つのか)


 答える前に、軽く息を吐いた。

挿絵(By みてみん)

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