6話 ラジオ振り返り
「えっ、じゃあみんな知ってたの?」
・知ってた
・知 っ て た
・SNSで大々的に告知してたじゃん
「そうそれ!俺それ知らんかったんよ!」
・あれに気づかない人間がいるとは……
・ラジオの告知と同時にしてたのに……
・嘘乙wあれに気づかないわけないやんww
俺は基本的にSNSは配信の告知以外で開かないようにしている。理由としては、どこぞのゴリドルのせいで俺のリア垢があいつのファンにバレてるからだ。俺のリア垢には大量の誹謗中傷が寄せられている。と言っても大抵は捨て垢だから、一部の暇な人たちが送ってるだけだと思うけど。
まさか、見たくないものは見ないようにするという俺のポリシーがこんなところでデバフとして働くとは思いもしなかった。ていうか、ラジオの告知とかいう俺が見てる可能性が高い場所で逆ドッキリの告知もしてる先輩がおかしくないか?
「しかもさぁ、あれからDMとかでめっちゃ可愛いって言われるんだよね」
・あれは可愛かったな
・可愛かった
・可愛かったぞww
「うっせぇ!!可愛いって言うな!!バーカバーカ!!」
・可愛い
・可愛い《白沢景》
・可愛い《黒野哀》
「可愛くないッ!!って、えぇ!?なんでいるんすかあんたら!?」
・徹夜明け《白沢景》
・下に同じく《黒野哀》
・大人気やん
なんでこの人達デフォで徹夜してんだよ……。俺の勝手な偏見だが、Vtuberって昼夜逆転してる人が多い気がする。白沢先輩なんて殆んど毎日深夜まで配信してるもんな。身体壊さなきゃいいけど。
「寝たほうがいいですよ。身体壊しますよ」
・眠たくない《白沢景》
・徹夜明けって逆に眠れないよね《黒野哀》
・わ か る
「そっかぁ、残念だなぁ〜。今日は事務所に行く予定あるから先輩達に会えると思ってたのに」
・眠たくなってきたわ《白沢景》
・おやすみ《黒野哀》
・ちょろすぎて草
ちょろ過ぎないか?この人達。詐欺被害とかあったりしそうで怖いわ。にしても、ヤバいな。先輩達にオフで会うのは流石にダメな気がする。
「さーて、どうしよ……」
・どしたん?
・悩み事?
・話聞こうか?
「いや、男の俺が女性の先輩達にオフで会うのはいかがなものかと思いまして……」
・大丈夫だろ
・気にすんな
・心配しすぎ
「みんななんでそんなに呑気なの?仮にも推しが燃える可能性があるんだよ!?」
・だって、ねぇ?
・公式設定女の子じゃん?
・俺っ娘じゃん?
「あ、そっか。なら大丈夫だわ。安心安心」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ねぇ悠ちゃん!今日の放課後空いてる?」
「空いてない。予定に満ち溢れてる」
「え〜、なんで?」
「べつに、ちょっと人と会うだけ」
「へぇ、それって女?あたしの知ってる人?」
また始まったよ。俺の彼女でもないくせに質問攻めにしてきやがって。こういうところが嫌いなんだよ。俺がいつ誰と会おうが俺の勝手だろうが。ふざけんな。
でもこいつとの縁切ったら金貰えなくなるんだよな……。いや、俺はもう企業Vなんだ。収益化が通りさえすれば金貰う必要もないし、縁切ってもいいのでは?とはいえ、高校が同じで家も知られてる以上、無闇矢鱈に縁を切ったら遥香がストーカーになりかねない。というか絶対なる。自信をもって言えるわ。適当に誤魔化そっと。
「バ先の先輩だよ。遥香の知らない人」
「ふーん、それでその人は男なの?それとも女なの?」
え、めんどくさ。マジめんどくさ。なんなの?そんなに俺の人間関係把握したいの?ふっつうに気持ち悪いだろ。性別逆だったら事案だぞこれ。
「ねぇ、あんたが皇遥香?」
「………そうですけど、どうかしました?」
まぁまぁイケメンな男を連れた見覚えのない女子生徒が遥香に話しかけた。ありがとう、本当にありがとう。誰だか分からんが君のおかげで俺は助かった。おそらく面倒事だろうが、さっきの質問攻めよりは圧倒的にマシだ。
「人の彼氏を誘惑しといて、よくそんなに堂々としてられるね」
「誘惑?」
彼氏というのはおそらく隣にいる一般人にしてはイケメンな部類の男のことだろうが、遥香が誘惑なんてするわけない。大方、男の方が遥香に告ったとかそういう話だろう。にしても、この男、どこかで見た気がするんだよな。
「あのぉ〜ちょっといいですか?」
「何よあんた」
「多分その彼氏さん?が遥香に告ったと思うんですけど、なんでそれで遥香が悪くなるんですか?彼女がいるのに他の女にうつつ抜かしてるそいつが悪いでしょ」
遥香の近くにいるとよくこういうのに巻き込まれるからいつも思っていたが、なんでこういう人たちってみんな遥香のせいにするんだろ。勝手に告白されただけなんだから遥香は何も悪くないじゃん。
「その子が誘惑したから靡いちゃったんでしょ!」
「その程度で靡くなら愛されてなかったんじゃないっすか?」
「あんたも何か言ってよ!!」
「あ……いや…その………」
めっちゃしどろもどろな話し方するなこいつ。やっぱこいつどこかで………あっ!思い出した。あれだ、この前廊下で遥香を絶対に落とすとかほざいてたやつだ。それとたしか―――
「3学年コンプリートする。後は2年だけだ」
「へ?」
「前にそう言ってましたよね。2年は遥香のことでしょうし、彼女さんは3年ですよね。あれ?1年がいませんね」
「ちょっと、あんたどういうことよ!!1年にも手出してたの!?」
彼女さんの方が男に詰め寄った。急にめちゃくちゃ修羅場になるじゃん。俺は何を見せられてるんだろう。喧嘩なら他所でやってくれないかな。まぁいいや、今のうちに逃げよっと。
「あ〜怖かった。お前どこであんなのに絡まれたんだよ」
「あれ、この前言ってた米沢先輩」
あれがあのしつこい男の米沢先輩か。やっぱり面倒事になったな。これ以上何もなけりゃいいけど。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日俺が事務所に来たのは、シチュエーションボイスの収録のためだ。バ美肉とはいえ男である俺のシチュボに需要があるのかとも思ったが、ボイス出せと言う人もいるくらいなので需要があるのだろう。世界って不思議だ。
「うわぁ……これが世に出るって本当に言ってます?」
「ええ、本当ですよ」
「うそん…」
セリフは事務所が用意したものだし、声もボイスチェンジャーのおかげで女性のものと遜色ない。男性向けのシチュボとしては申し分ないだろう。それはそれとして、自分がこんなくさいセリフ吐いてる作品が世に出るなんて恥ずかしいことこの上ない。改めてこれを何本も出してる先輩達って凄いんだな。
「あの〜、すいません」
「ん?僕ですか?どうかなさいました?」
収録も終わって、今朝のこともあるので事務所で少しゆっくりしていたら、かなり小さいお姉さん?に話しかけられた。
「いえ、用事とかじゃなくて、初めて見る方だったので」
「事務所の方ですか?はじめまして、高橋と申します」
「ご丁寧にどうも。淡井杏として活動させていただいてます。よろしく」
「そっちで名乗った方がよかったですね。すいません配慮に欠けてました」
「そっち?」
淡井杏ってめちゃくちゃ先輩じゃん。あの褐色元気っ子で低身長の南国風美少女設定の人でしょ?ガワだけだと思ってたけど、中身の方も小さいんだ。140くらいかな?現役のJCって言われてもギリ信じるぞ。
「はじめまして、春色皐月として活動させていただいてます」
「えっ!?あの新人さんの?」
「はい、そうです。その新人のバ美肉です」
「昨日のコラボ見たよ!いつも頑張ってるねぇ」
淡井先輩に頭を撫でられた。俺が新人だからかな?すんごいちっちゃい子みたいな扱いされてる気がする。不本意だが、これはこれでいいかも。なんか安心する。こりゃファンの人たちからママって呼ばれるわけだ。
「淡井さーん」
「呼ばれちゃった。じゃあね、いつかコラボできたら嬉しいな」
淡井先輩がスタッフさんに呼ばれて行った。もう夜だし、さっさと帰って飯食って寝よ。ちなみに、今朝の先輩2人は事務所で会わなかった。行く時間とか伝えてなかったし、俺が来る前に帰ったとかかな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わお、なにこれ」
帰ってから寝て起きたら、俺のVの方のSNSの通知が凄いことになっていた。内容もあまりいいものじゃないし、俗に言う炎上ってやつみたい。




