14話 参加型配信
「今日の夜は久しぶりにゲーム機使ったゲーム配信しちゃうよ〜!」
・イェーイ!
・久しぶりだな
・畳以来か
・PC買ったん?
「あれは…やな事件だったね……」
ホラゲーの配信をして少しした頃、俺は初めてゲーム機を買ってウッキウキで配信した。だが、何を隠そう俺が使っているのは低スペのノートPC。カクつきまくって配信どころじゃなくなってしまった。その結果、何を血迷ったのか当時の俺は一度配信を閉じてから外付けのキャプボを外し、普段の雑談配信と何ら変わらない状態で配信開始。一応、事情を説明してからゲーム画面も映らずゲームの音声も入っていない俺がゲームしてる声だけの状態で配信をすることになった。今となっては笑い話だが、しっかりとアーカイブは非公開になっている。
「ちなみにPCは買ってないよ。今日は事務所のスタジオから配信する」
・なんでぇ
・買えよww
・買い替えたほうがいいって
「先月収益化通ったばっかだしボイスも先月からだから金入るの今月からだし、来月は親戚がくるから……」
・あっ…(察し)
・終わっとるやんけ
・最悪だわ
ホントにマジで勝手に決めやがってよぉあのBBA。俺の仕事のこと知ってんだろうが。身バレしたらやばいんだよ。誰のおかげでその家住めてんだとか言われたら従うしかないだろうが。脅しやがって。思春期のネットリテラシーの無さ舐めんなよ?自分の親戚がバ美肉Vとかわかったら自慢したくなっちゃうって。知らんけど。
「なんでね、いつもだったら夜はあと寝るだけの状態にしてから日付変わる前までやってるけどそれだと帰り補導されかねないんで今日は夕飯どきに始まるから。よろしく」
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「早く来すぎたかな」
スタジオで配信する以上事務所に迷惑かけないようにしようと学校が終わった後なるべく早く着くように急いだが、どうやら早く着きすぎたらしい。配信開始まであと1時間近くある。
「どうしたもんかねぇ」
「あっ!皐月ちゃん!」
「ん?あぁ、淡井先輩。それと」
俺に話しかけてきたのは淡井先輩。そしてその隣には俺よりデカくて無口なショートヘアのボーイッシュな雰囲気のお姉さん。ついでに胸もデカい。絶対女の子にモテるタイプ。この人が多分―――
「藍田先輩……ですよね?」
「………」
「よくわかったね、この子があたしの同期の愛梨ちゃん。愛梨ちゃん、この子があたしの言ってた新人の皐月ちゃんだよ」
「はじめまして、春色皐月です」
「………どうも」
うーん、塩対応。そりゃあみんながみんな俺に好感示してくれるわけじゃないよな。悲しいけど人それぞれ考え方はあるからな。
「もう!愛梨ちゃん!そんな対応してたら勘違いされちゃうよ!」
「勘違い?」
「皐月ちゃんごめんね?愛梨ちゃん、この前皐月ちゃんがあたしの同期紹介してくれって言ったときに選ばれなかったから……」
「あ」
完ッ全に忘れてた。あれ見てたんだ。いや見るよな、一応同期出てるし。俺の配慮が足りてなかったわ。100%俺が悪いじゃん。そりゃこんな反応にもなるよ、自分怖がられてんのかな?とか思っちゃうよ。
「ああ!藍田先輩!違うんです!僕は好きな物を最後に食べる派なんです!先輩が大好きだから最後にとっておきたかっただけなんです!」
「ほんと……?」
「ほんとです!なんなら今すぐお友達になりましょ!」
「いいの…?」
あれ、なんだろうこの人。見た目はすごいかっこいい系だけど、人間関係というか俺のことで悩んでたり、返答が遠慮気味だったり。もしかして、お話するのが苦手だったりする?そして意外と妹属性あったりする?何そのギャップ、クッソ萌えるんですけど。
「当たり前じゃないですか!」
「やった…!」
やっぱ可愛いぞこの人。え、ヤバい、マジで可愛い。これがギャップ萌えってやつか。どこぞの白い人とはやっぱ違うんだな。
「そうだ!ねぇ皐月ちゃん、あたし達これからご飯食べに行くんだけど、皐月ちゃんも来ない?」
「行く!と言いたいところなんですけど、ごめんなさい。今日はこれから配信しなきゃなので、また機会があったら誘ってください」
「それはいつ頃終わるの?」
「え?」
驚いたことに、俺に質問を投げかけたのは藍田先輩だった。
「配信、どれくらいで終わるの?」
「い、一応、レースゲームで1位取れるまで耐久配信の予定なんで、最長でタイムリミットの3時間、早ければ10分とかですかね?」
「じゃあ待つ」
待つなよ。待っていただけるのは嬉しいけど待つなよ。絶対後で気まずいんだよ。配信して3時間も待たせた場合どんな顔して先輩と飯食えばいいんだよ。
「でも淡井先輩が……」
「あたしはいいよ?」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
助け舟ぇ……。求めてんのよ。かなりいいパスだったと思うんだけどなぁ〜。なんで気づかないんですかねぇこの人は。己はラブコメの鈍感系主人公か。
「つーわけで、今俺の後ろに淡井先輩と藍田先輩がいます」
・どういうわけだよ
・ママいんの?
・王子も?
「いるよ?諸事情により喋れないけど。誰だよ俺のバ美肉デビュー提案したやつ」
・お前だよ
・自分だろ
・鏡見ろよ
「そうじゃん、俺じゃん」
何やってんだよ過去の俺。バ美肉じゃなくて普通に男としてデビューしてたらわけわからんくらい炎上してただろうけど、そのかわりボイチェンとか気にせずに事務所で先輩達とオフコラボできたじゃん。
いや、何を言ってるんだ今の俺は。ボイチェンで声変えてなかったら、どこからか聞きつけた遥香にVのことが間違いなくバレてただろ。ボイチェンは多少不便だけど、Vtuberにとって一番怖い身バレの危険性が0に等しくなるんだからそれでいいじゃん。
「んなことより、今日の参加型は俺が1位なった瞬間に終わるから。タイムリミットは3時間ね。まあ、この配信は10分あれば充分かな」
・舐めてるだろ お前
・喧嘩売ってる?
・なんだァ?テメェ……
「1レースで配信終わって先輩達と飯食いに行くんだよ」
・させません
・許すわけねぇだろ
・濃密な3時間を過ごさせてやるよ
「あ、言うの忘れてたけど、俺このゲームやるの初めてだから」
・ウッソだろ、おい
・さっきの自信はどこから来てたんだよ
・マジかこいつ
「前作?は友達の家でやったことあるよ」
こういうゲームって高校入ってからやってないんだよな。スマホあるし。地元にいた頃は友達の家でそれなりにやってたけど、それでも1年以上のブランクか。ま、なんとかなるだろ。
「なぁんか俺の知らんキャラがめちゃくちゃおるんやけどぉ?」
・そいつ前作からおるぞ
・前作最強だぞ
・前作はやってたんじゃないの?
「じゃあ、あれだ、前前作だ。こんな車体とかタイヤとか選べんかったもん。空飛べんかったもん」
・カートのカスタマイズは前前作やで
・空飛ぶのも前前作やで
・どんなのやってたん?
「どんなの……バイクでウィリーしたりとか?」
・前前前作やないかい!
・それ、15年以上前のゲームだぞ
・15年以上前?うそだろ?
え?俺がやってたのって俺と同い年かワンチャン年上のゲームだったの?嘘じゃん、嘘だろ?嘘だと言ってくれよ。
「じゃ、じゃあ、俺はスタンダードなカスタムでやろうかなぁ〜。キャラも左上の最初に選ばれてるやつで」
・明らかに動揺してて草
・今、ゴリラから目を背けたよな?
・ゴリラから逃げるな!
「べつに逃げたわけじゃ……ってゴリラァ!!」
始まった第一レース。俺以外の全員がゴリラのキャラクター。俺の知る限りでは何の打ち合わせもしてないはずなのになんでこんなに合わせられるんですかねぇこの人たちは。
「君達は俺のことを奇人変人・イロモノ枠だとおもってるんでしょうがねぇ!そういうのはどこぞの白い人とかゴブリンのことを言うんですよぉ!俺は清楚枠なんで」
・違ったの?
・ゴリラが清楚だと?
・清楚系ゴリラ?
「ゴリラは奇人変人・イロモノ枠だろうが!俺はゴリラじゃない!」
・コースアウトしてるぞ
・コントローラー小さかったか?
・コントローラーの耐久性が弱かったか?
順位 7位
・10分で終わるのでは?
・こりゃ3時間コースかな
・おせーよホセ
「これはあれかな、カスタムが悪かったかな。せっかくだから、このゲームの経験がある先輩方にカスタム選んでいただきましょうかね。お二人の共同作業です」
・共同作業!?
・てぇてぇ!?
「なんでこの人たちは流れるようにゴリラ選んでるんすかね?」
・本人だからだろ
・流石は奇人変人・イロモノ枠
・バ美肉ゴリラだから
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結局、配信終了まで2時間かかった。




