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流星群  作者: こでまり


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18/18

拓人

チャペルの広間では鍋島と今西、更には隣町のラジオ局勤務の笹本早百合と商店街会長の高松真理子がいた。

「そういえば、稲田貴子さん、どうなったの?」

高松が聞く。

ケーキを一口食べて鍋島が答える。

「治療が上手くいっているみたいなのと、県外にある大病院に転院が決まったそうです」

「稲田拓人さんはどうなるの?」

今度は笹本が聞いてきた。

「彼は、注意だけですみました。それで貴子さんの病院の近くに住んで付き添うそうです」

今西が答える。

「そうなの?」

笹本が驚く。

「はい。拓人は森野大貴を身代わりに別荘に潜伏させていただけで火災は森野自身の煙草の不始末でしたから」

「稲田拓人の被害者たちが帰ってきていたのは?みんながあのタイミングで戻ってきたのはどう説明するの?」

今度は高松が聞いてきた。

「それはあの人たちの土地は研究所に売られたからで、その売買契約のために戻ってきていたそうです」

今度は鍋島が答える。

「家は売っていなかったのね。それじゃあ、あのマンションは?」

高松が聞いた。

鍋島たちが拓人のことを調べている時に見かけた、隣町のいくつかのマンションに住んでいた被害者たちのマンションのことだ。

「あのマンションは洋平さんの所有で示談金を田中昌大に奪われるのを防ぐために被害者たちに提供していたそうです。その被害者たちは今回、自宅が売れたのでそのお金であのマンションを購入するそうです」

「そうだったんだ。じゃあ、稲田拓人は引き続き、洋平さんの会社で働くの?」

高松が聞いてきた。

「そうみたいです。近々、商店街にも挨拶に行くと言っていましたから」

鍋島が言うと高松が納得していた。

「そうだ!この間、刑事さんたちが尋ねてきて感謝状を贈りたいと言ってきたわ」

笹本が言う。

「私たちのところにもきました。お二人が集めてくれた映像から望月瑠美や栗元悟志の行方がわかったので稲田貴子さんの殺害を未然に防ぐことができたと言っていました」

鍋島が言うと高松が聞いてきた。

「その事、町内の広報に載せていいのかしら?街の人たちに協力してもらったからお礼も兼ねて報告したいと思うのだけど」

「あぁ、いいですね。うちもケーブルテレビで流そうかと話しているのです」

鍋島が言うと笹本もラジオで紹介したいと言ってきた。

四人はそれぞれ、どんなふうに紹介したらいいか話しが弾む。

チャペル担当者の宇佐美はご機嫌だった。

チャペルの広間では鍋島と今西の前には高松真理子と笹本早百合がいた。

4人の会話はすこぶる弾んでいる。

もしかしたら二組のカップル誕生かしらと頭の中の電卓が希望的観測の金額を叩き出していた。

宇佐美は少し前にチャペルイベントに参加していた高松と笹本から上田京子の話を偶然聞いていた。

詳しく聞いていると上田京子は望月病院の院長夫人の親戚だとわかり、これは使えると思って高松と笹本に話をしてみたところ、二人は乗り気だった。

二人の仕事柄、鍋島と今西とは会話が弾むと思ったからだ。

丁度、鍋島と今西に会ったので強引に予定を決めておいた。

しかし、その直後、鍋島たちは高松たちと会っていた。

鍋島たちは二人に会ったことで容疑者を見つけ出すことに成功したのだ。

偶然の産物だ。

宇佐美はこれまでにも同様の手でカップルを作り出してきた。そのため、二人が鍋島たちと会ったと聞いて半分成功したと内心確信していた。

今では聖地とまで噂が出るまでになっているこのチャペルの人気はうなぎのぼりだ。

そういえば、先月お見合いをセッティングした菅田からはなかなかいい返事が貰えた。

相手の女性からも是非と返事が来ている。

「宇佐美さん…宇佐美さん」

チャペルの広間を覗き込んでいた宇佐美が振り返ると佐伯が立っていた。

よく見るとその隣には菅田の父親がいた。

宇佐美は嫌な予感がしたが顔には出さないで笑顔を作った。

この間のお見合いが断れられるかと心配した。

「なんでしょうか?」

「菅田くんのお父様が鍋島さんと今西さんに会いたいそうです」

宇佐美が鍋島たちを見ると丁度、帰るところだったようで四人は席を立って歩いてきた。

鍋島たちが宇佐美の近くまで来ると鍋島と今西が気づいた。

「研究所の所長さん?」

「こんにちは。先日はとても良い紹介文を書いてくださりありがとうございます。研究所のみんなもあの紹介文を読んで更にやる気を起こしていますよ」

所長の言葉に鍋島と今西は研究所の新たな取り組みを紹介する冊子を発行した。

研究所で開発したこの街の気候に合わせた作物ができた。それに合わせて、商店街にアンテナショップが出来て、ホテル星華でも研究所で作られた作物の料理が食べられる事を紹介した。

漁業がメインの街で農作物で賑わいが出来たことで新たな活気が生まれた。

研究所の所長は丁寧にお礼を言って帰って行った。

鍋島たちは所長の後ろ姿を見送りながら、今回のお手柄はあの所長ではないかと内心思った。

先日、吉村から聞いた話では本物の稲田拓人は田中たちが研究所に忍び込む前に研究所の所長に会いに行っていたらしい。

そのため、研究所では対策が取られていたので被害は無かったと聞いた。

以前、今西が稲田拓人の写真を見せた時、所長が稲田拓人と会ったのが稲田拓人が整形後だったので顔が違っていて驚いたと言っていた。

研究所の所長から稲田拓人の話を聞いていた警察は裏どりを進めていて早い段階で稲田拓人が二人いることに気づいていたそうだ。

それでもう一人の稲田拓人を探している過程で望月瑠美に行き当たったそうだ。

そのため、楠木智恵子殺害は田中昌大の犯行だとわかり、望月正嗣と瑠美を探していた東京の警察に連絡をするとすぐに動いて正嗣を拘束出来たと言っていた。

望月瑠美と上田京子が捕まったと聞いた稲田拓人は安堵の表情を見せたと聞いている。

その稲田拓人は洋平の会社で土地管理を学んでいるらしい。

田中昌大が稲田拓人に扮してはたらいていた悪事の数々や、その対応をしていた洋平に真摯に向き合っているようだと吉村が言っていた。

チャペルからの帰り道、今西の運転する車に乗っていると鍋島に言ってきた。

「さっき高松さんが言っていた風鈴祭り、うちの街でも企画しませんか?」

隣町の商店街で地元のガラス工房で作られて風鈴を飾りイベントをすると言っていた。

鍋島は少し考えて言った。

「隣町と合同でしてみようか」

稲田拓人の問題も片付いたから新たな情報発信をしなければと思い立った。

「それじゃあ、早速高松さんたちに連絡を入れてみます」

今西も張り切り出した。

鍋島もそろそろ、新しい企画書を出さないと、うちの所長が文句を言い出しそうだと思った。

海岸沿いの道路を走っていると漁港に帰ってくる漁船が見えた。

今年は漁港でも祭りをすると澤谷が言っていたのを思い出す。

漁港では研究所の農作物に対抗しているようだ。

鍋島はそれが地域の活性化につながれば良いと思いながら窓の外を眺めた。



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