4/2 *18kg
最大限の対策はしたと思った。
流石にまずいのは知っていた。
適性よりも遥か下からラインを見上げる。
逸脱する事が美徳とされるにしても、それに際しては少なくとも並にいる事がベストだった。
時刻は15:00。
健康診断は15:45からだった。
私が慢性的に抱えている問題は数多くあるが、部屋のゴミ、怠惰に次ぐそれが、体重にある。
始まりは高校3年の冬。
部活も引退し、受験勉強という名目のもと特別積極的に外出する事もなく部屋に引きこもり、部活があった日々と変わらぬ食事を取り続けた結果たまりにたまった脂肪は私の全身を覆い尽くしていた。
具体的に言えば体重は2年後期から数えて+15キログラム。
1年のうちにぶら下がったそれら贅肉は私の足元を覆い尽くすほどに溢れていた。
それに気付いたのは大1の春。
ゴールデンウィークに帰省した時多くの人からその体型を指摘されたことにあった。
「だいぶ…ね。ふくよかになった?」
「大学生活楽しそうだね。」
私は努力した。
具体的には首周りと顔面あたりを痩せさせる系のダイエット動画をみまくり、2日に一回はそれをした。
朝は早く起きようと思ったが、当時は色々あって授業のほとんどがオンデマンドになった影響で1日27時間くらいのループをしていたためそれは大体叶わなかった。
徒歩15分圏内のマックに毎日歩きで向かい、帰りには間食用のポテチを買い漁った。
とにかく私は努力した。
具体的なプロセスはほとんど伴わなかったが、それでも私は努力した。
そうして3ヶ月後。
私の体重は20キロ減少していた。
20キロ減少していた。
20キロ減少していた。
顔周り及び腹回りの肉はそげ落ち、足は細く、そしてパンツはダルダルになった。
今振り返っても謎の飛躍があるが、半月で5キロずつなんか減っていったので、やはり努力そのものというより努力したと思い込むことが大切なのだとそこで悟った。
かくして私のダイエットは成功、3ヶ月激痩せダイエットを情報商材として売り出しまくり、学生の身分にして大金持ちとなって話は終わる。
…筈だったのだが、ここで問題が発生した。
減ったはいいが、今度は減りすぎた分が戻ってこない。
適正体重は痩せる前の基準で-10kg、痩せた後の基準で+10kgくらいである。
オーバーしている。
私は適正体重にて健康的な日々を送れればそれで良かったのに。
2年の健康診断は寝坊でいけなかったのだが、当時はそれが逆にチャンスだと思った。
後1年ある。
3年の健康診断は外せない。
それまでの体重を戻す。
かくして私の計画がスタートした。
コメダの豆菓子、マイクポップコーン濃厚バターしょうゆ味、おやつカルパス。
いつでも食べられて軽く、依存性の高そうな諸々。
1週間に2回はマクドナルドに足を運び、1週間に3回はかつやに丼を喰いに向かった。
そうしてたどり着いた今日。
長い道のりだった。
準備は万全。
絶対の自信があったため、体重計はここ半年見ていない。
最後の調整、てりたまバーガーLLを食し、いざ健康診断の地へと足を運ぶ。
「お願いします。」
「はい、それではここに立っていただいて、背筋は伸ばして下さい。…はい、ありがとうございます。」
「…。」
緊張の一瞬。
ここで一年の努力が見れる。
画面に映った私の体重を見て、そして検査の方が私にそれを見せる。
「…体重が随分と変動していらっしゃいますが、これはご自身で管理などを…?」
体重の欄の下には赤文字で*前回測定より18kg減少しています。
と出ている。
「あ、えっと、2年の時に参加できなくて、すみません。」
「あ、なるほどー。」
自分でも訳のわからない言い訳を述べ、先方が返してくれた診断カードを持って次のブースに行く。
血液検査の列に並ぶ私の心は屈辱に塗れていた。




