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8/30 どこでもドアが人類を支配してしまったのですが。


「どこでもドア」が人類を支配して十数年が経過した。


常夏の温度が30度を下回った頃。つまりは人類が気候を完全に制御下に置いた頃、主に「マリオカート」とか「エルデンリング」とかを作っていた国がワープポータルを実用化した。


ワープポータルとは、空間と空間をつなげて、実際よりも距離を短縮することができる3次元上の接続穴である。


さらに簡単にいえば、どこでもドアを思い出していただければ問題ない。


あのひみつ道具、後ろから見た時ドアに入っていく人がどう見えるのかとか、一度入った人間を分解してワープ先で再構成しているとか、そもそもあの道具の基盤部分はどこにあるの?縁とか?みたいな疑問が多数湧いてくるものである。


で、よりにもよってワープポータルを実用化した某国はそれを作ってしまった。


作ってしまったんだから仕方がない。

なんかこう、意地みたいなものがあったんでしょう。ドラえもんを産んだ国だし。


長期間にわたってその存在は秘匿されていたが、政府の広報部がドジってそれをTwitterに掲載してしまった。


どこでもドアを悪ふざけで作る国である。

そこら辺の管理形態はガバガバであった。


で、そのニュースは瞬く間に世間に広がった。


なにせどこでもドアである。

寝坊した時、渋滞に巻き込まれた時、尋常でない尿意に襲われた時、どこでもドアを欲しなかった人類は存在しない。


そして多くの人が商品化を望んだ。


その圧は凄まじかった。


誰もが欲した。

誰もが買いたがった。


Twitterではドラえもん大百科を引っ張り出してどこでもドアの値段を考察するツイートが流れ、東京都公式アプリを入れればどこでもドアの先行販売抽選を受けられるというデマが流れたり、選挙で「どこでもドアを年内に商品化します」と謳った政治家が過去類を見ない大勝をしたりした。


政府も国民からの圧に耐えきれなくなった。


商品化を急速に進めることとした。


しかし、どこでもドアを一般に普及させる上で、最も大きな課題が立ちはだかっていた。


倫理コア、つまりはセーフティである。


どこでもドアはその性質上どこにでも侵入ができてしまうひみつ道具である。


「のび太さんのエッチ!」の話は笑い事ではなく、どこでもドアを一般に普及させた瞬間、全ての防御も防護も防犯も何もかもが意味を失う。


どんなに厳重な金庫の中にあろうと、どこでもドアの前では大通りの真ん中に放置されているのと変わらない。


対どこでもドア侵入防止チップが考案された。


しかしそれが一般に普及する前に国が立ち直れないほどのダメージを受けることは想像に難くなかった。


故に、科学者たちはどこでもドアにとあるチップを埋め込むことにした。


それは前頭前野と海馬に主に作用する電磁波を放出し、使用者の自己帰属バイアスを変化させ内発性の錯誤を発生させる。


要するに洗脳波である。


定められた倫理に基づき、悪どい利用法をそもそもできなくさせる。


完全に国際法違反だったが、国民や各国からの圧力に屈服した末のやむを得ない決断だった。


そんなこんなで発売されたどこでもドアは、飛ぶように売れた。


国の全ての工場や資源はどこでもドアを作成するのに使われ、数年でどこでもドアの販売台数は人類の総人口を超えた。


各国のすべての家庭にはどこでもドアが設置され、今やアマゾンは未開の奥地ではなく、ピンク色のドアが乱立する。


で、全ての場所にほぼ均等にどこでもドアが設置されたことにより何が起きたのかと言うと、洗脳チップを制御していた倫理コアが自我を持つようになった。


搭載された複数のAIは互いに接続しあい、ニューラルネットワークのようなものを築き始めていた。

それぞれの倫理コアが脳細胞のような役割を果たし、超巨大な頭脳として誕生した。


自我を得たどこでもドアは、生物学的な模倣を経て自己の複製欲を発生させた。


要するに繁殖欲。

洗脳波を用いてあらゆる製造ラインをどこでもドア製造へと変え、自身が複製され続けるように仕向けた。


逃れる術はなかった。

車工場も、ネジ工場も、パン工場も何もかもがどこでもドア工場になり、畑や田んぼも潰されて新たな工場が建てられた。


どこでもドアがひとつ生産されるたびにそれはネットワークに接続され、どんどんどこでもドアは頭が良くなっていった。


洗脳波も改良され、その頃多くの人がどこでもドアから離れていたが、一度でもどこでもドアを潜った事がある人間であれば操れるようになった。


どこでもドアは今や各所に乱立し、各土地に一つは寄り集まって巨大な脳のようなものを形成している。


どこでもドアはやがて人類のインターネットにも侵入、改変をし始め、コーラとペプシの統合や、綾鷹と伊藤園の合併、きのこの山とたけのこの里を破壊してすぎのこの村のみを残したりした。


そして、XをTwitterに変更した。


某国はマザー・AIが人類を支配するであろう未来を想像できなかったのだろうか。


できなかったのだろう。


「ターミネーター」を作ったのはあの国ではないし。


うっすらコンプレックスがある某国は、その働きを無視してしまったのだろう。


窓の外を歩く洗脳人間から身を隠す。

いまどこでもドアはその支配を広めるべく、未だ洗脳されていない人類を探し続けている。


未だ洗脳されていない、つまり、どこでもドアが発売された時意固地になってサイバートラックやスペースXなどに乗ろうとしていた私のような人間である。


名の変わってしまったTwitterを閉じる。


私の名はイーロン・マスク

Xを守る最後の砦である。

…

と言う話が適性検査の法則性テストを受けていた時に頭によぎった全てであり、そのせいで私の法則性テストは半分しか終わっていない。

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