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7/31 成功体験

よくない楽観主義。


不確実な成功体験。


数年にわたって組み上げられた生存バイアスは、巡り巡って私の首を締め上げていた。


時刻は23時30分。

1時間前からパッケージをインストールし続けているRstudioの停止ボタンにカーソルが動くのも、これが5度目。


脳裏に色濃く映し出されてきた絶望の結末を、必死に振り払おうと頭を振る。


掃除の甘かったフローリングの上で膝をつく痛みも感じられないほどに、私の意識はそれに向いていた。


思えば、この状況は在るべくして有り、必定の流れを確かに汲んでいた。


私には重度の先送り癖がある。


課題の大きさからギリギリ問題にならない地点をなんとなく見極め、焦りとやる気の均衡が崩れた瞬間に手をつけ始めるのが普段の流れだ。


今まではそれでなんとかなってきた。


私は夏休みの課題を最終日にやるタイプである。


14年近く磨き上げられた課題解決までの時間感覚は、達人的な域にまで達していた。


7/31締め切りの課題は長らく手をつけていないESとプログラミングの最終課題。


まぁ大丈夫やろと思った。


ESはもともとまとめてあるし、プログラミングは適当で良い。


多めに見積もっても3時間、実際にかかるのは1時間と少しだと思っていた。


余裕があった。


それ故油断があった。


YouTubeとXを眺め、ノートパソコンを開いたのは22時。


明日の予定も早いし、昼寝はしたとはいえ23時には床につく心算だった。


ESは15分もかからずに終わり、プログラミングに手をつけたのが22時15分。


私の課題解決時間の感覚は達人的である。


しかし、私が見落としていたのは、そもそもプログラミング課題の内容を知らなかった事である。


重要な変数を知らずに、その概算が正しくなる筈がなかった。


必要なパッケージがいろいろインストールできてない。


課題をなんとなく見渡してジワリと汗が滲んだものの、焦りはまだ無かった。

コードは出来栄えのものをそのまま使えば良い。


データを適当に入れ、動かすだけだった。


インストールパッケージ…


私の家は、夜になると回線速度が昼間の1/100に落ちる。


実行され続けるコード。


終わらないインストール。


10分…


20分…


30分…


気づけば、時刻は本来寝ようとしていた時間を越していた。


インストールは終わらない。


冷や汗が吹き出す。


ベッドから起き上がる。


インストールは終わらない。


画面右下の時刻が進んでいく。


ルーターの近くにパソコンを運ぶ。


インストールは終わらない。


デスクトップPCから有線LANを引き抜き、ノーパソに繋げる。


有線接続に切り替わる。


インストールは終わらない。


スマホ、iPad、VRのWi-Fi接続を切る。


有線LANの関係上床に置かれたノーパソを自ベタを這いずりながら恨めしげに眺める。


インストールは終わらない。


丸まったりひっくり返ったりしながらwifi速度が上がる事を祈る。


教授への土下座メールの文面を考え始める。


インストールは終わらない。


浅い呼吸を繰り返す。


吐きそうになりながら画面を見つめる


インストールは終わらな…終わった!!!!


元々書いてあったコードを全部ブチ込み、結果を確認せずCtrl +Enterを連打する。


出てきたグラフをWordに貼り付け、毒にも薬にもならない考察を垂れ流し、なんの意味もない結論を出す。


全てが終わり、提出フォームに課題を提出し切ったのは、23:57。締め切り3分前だった。


安堵感と疲労感の前に床に倒れ込む。


震える手でパソコンを閉じ、そして目を瞑る。


また得てしまった。


成功体験を。


トラブルが起きた時の失敗経験を得られなかった。


私は長期の痒みより短期の激痛を選ぶ傾向にある。


今回も乗り越えてしまった以上、これは学びにならない。


修繕機会がない。


激痛が致命傷になるまで、止まることがない。


もうどうしようもない。


私には重度の先送り癖がある。







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