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7/26 依存性

ウスターソース直飲み大魔神についての話なんですが、文頭に強い言葉を云々の話はせいぜい寿命が35文字と言うのは良く知られるところである。


なのでさっさと本文に移りますが、私は長らく依存できる間食というものを求めてAmazonやスーパーを旅してきた。


始まりは小学生の頃、夏場狂ったように食べていた龍角散のどすっきり飴だったように思う。


当時住んでいた祖母の家の2階。


ゲーム機も携帯も持っていなかった当時は、やることと言ったらTSUTAYAでまとめ買いしたドラえもん大長編十数巻を一気読みするか壊れた風呂の蓋で剣を作る事しかなかった。


刺激が足りてなかったのだと思う。


ミントの抜けるような刺激と、噛み砕く時の硬さ。

食べたあと飲んだ水が凍りつくほどに冷たく感じるのも悪くなかった。


一日1袋はザラで、多い時は2袋、3袋と量を重ね、そしてある日全面的に禁止された。


当然と言えば当然だが、口内の刺激が失われた当時の絶望は深かった。


何もかもが喪失したような感覚。

自分の口が、まるで自分のもので無いかのような、器官を一つ失ったような感覚。


家から完璧にのどすっきり飴は失われたが、それでもこの感覚の喪失は耐えられるものではなかった。


当時の私は次なる刺激を求め、紆余曲折あってカリカリ梅にたどり着いた。


爽味は無くなったが、変わりの強烈な特有の酸味は素晴らしかった。中の種にも長く味が残り、噛み砕いた内にある新芽も好きだった。


狂ったようまた食べ続けた結果、案の定それも禁止されたのだが、その間食への異常な執着は大学に上がっても続いた。


というか一人暮らしになったせいでより悪化した。


初めはポテトチップスだった。


堅あげポテトブラックペッパー味。箱でいくつも買っていたが、それなりに費用が嵩んだ上、内容量も少なく、継続的な依存性に足らず2ヶ月ほどで収束した。


次はポップコーン。


電子レンジで自分で作るタイプに依存していた前期、市販のマイクポップコーン濃厚バターしょうゆ味に依存していた後期が存在し、このポップコーン依存期間は前期後期合わせて1年ほど続いた。


その間もコーラにハマり、糖尿病の気配を感じたり、冷蔵庫が壊れて完全にそれを失ったり、味の素の刺激を覚えてファミマの塩味ポップコーンに味の素をかけて食うという蛮行を犯したりしたが、それも含め、最終的に肉体がポップコーンを受け付けなくなって終了した。


次に依存先になったのがコメダの豆菓子である。


これは個包装なのが良かった。

一個当たり8粒程度で、業務用袋から取り出して破いては食い、破いては食いを繰り返した。


唯一の問題は誰かと喋りながら食べていると喉に詰まってよく咽せることだったが、その程度依存性の前には些細な事だった。


占めて500袋ほど摂取したところでそれは颯爽と目の前に現れた。


おやつカルパスである。


コーラをやめ、味の素もやめ、味蕾への刺激が減少していたタイミングで目に留まったそれ。


そこに含まれる致死量の塩分と旨みが、私の脳を焼き尽くした。


止まることはなかった。


一回の注文当たり200個入り。


プラスチック瓶に入ったそれをベッドの脇に置き、VRを眺めながら喰らい続ける。


このあたりからだ。

部屋が絶望的に汚くなって行ったのは。


コメダ豆菓子もおやつカルパスも個包装という特性上、信じられないくらいゴミが出る。


そして、信じられないことだが私は怠惰な性格である。


奇跡的な相性だった。


絶望的な相性だった。


端的にいうなら、部屋は終わった。


さらに、私はこの二つの間食に飽きるということがなかった。


それぞれ200個スパンで交互に食らい続け、片方がなくなればもう片方を買い、もう片方がなくなればまた片方を買うというセットを無限に繰り返した。


ベッドの横には飲み終わった綾鷹濃い緑茶が捨てられ、個包装の殻が詰まったビニール袋が幾つも転がった。


止まらなかった。


何度時計が回ろうと、どれだけ月日が流れようと、暖かくなって暑くなって酷くなって涼しくなって寒くなって酷くなって暖かくなって、そして唐突に“それ”が来た。


限界。


食物と毒物の間に明確な差は存在しない。


全てのものに許容摂取量は存在し、グルタミン酸ナトリウムもボツリヌストキシンも、食物的な観点から見ればそこに差異はない。


それは同時に訪れた。


最後の一袋だった。


許容摂取限界。


豆も肉も、その瞬間一切が口に入らなくなった。


脳内で何かが書き変わった。


黄金に輝いていたそれは、今やギトギトした酷く悍ましいものに見えた。


そして私は、間食をやめた。


…やめはしなかった。


一日中何か食べていた所を、2日に一回ポテチ一袋とかにした。


しばらくはそれで堪えた。


味のない口腔も、それはそれで悪くなかった。


酷く疲れていた脳の一部が、安らぎを見つけたようだった。


しばらくは。




無理だ。


限界だ。


人はそう変わらない。


学習によって刻み込まれたその皺も、それによって貌造られた肉も、それを指し示していた。


耐え難い。


忍び難い。


変わらない。


変われない。


終わらない。


堪えきれない。


執着は消えない。


依存は癒えない。




今私のベッドの横には、1kgの天かすが置いてある。


食べ方は簡単だ。


そこの浅いこのプラコップに天かすを注ぎ、スプーンで掬って食う。


味の素も塩もある。


ポップコーンの頃に買ったヤツだ。


かけてもうまい。


混ぜないと全体にかからないので、いい具合に。


無くなったら足せばいい。


他にも、こういうのを買ってきた。


醤油と、あとこのウスターソース。


天かすって結構ソースと一緒に使うしな。


合うんだわこれが。


ドバーッとかけて。


ああ。


すぐ食べるからあんま吸わないんだわ。

天かす。


底に。


洗うのもな。



部屋にウスターソースを啜る音が響いた。



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