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50,回転寿司と「いい知らせ」

 新郎新婦は美男美女で、絵のように美しかった。葉菜は今まで結婚に憧れたことはなかったし、今のところ、恋愛にもあまり興味はないけれど、いつかウェディングドレスは着てみたいと思った。

 

 

 姉が妊娠中のこともあり、新婚旅行には行かず、今夜はこのまま二人でホテルに一泊するのだという。

 

 式の後、父は葉菜に、今夜はどうするのかと聞いた。久しぶりに、一緒に家で過ごすことを望んでいるのかもしれない。

 

 だが、父と二人きりで過ごすのは気まずかったので、友達が待っているから、寮に帰ると言った。父は、どことなく不満そうだったものの、「ああそうか」と言っただけだった。

 

 みんなと挨拶を交わし、葉菜は、佑紀乃とともにホテルを後にした。

 

 

 

 駅のホームで電車を待ちながら、佑紀乃が言った。

 

「お父さんと一緒におうちに帰らなくてよかったの? お父さん、なんだか寂しそうだったけれど」


「いいんです。お父さんと二人でいても、何を話したらいいかわからないし」


 佑紀乃は微笑む。

 

「何も話さなくたっていいのよ。親子なんだから」


 そんなものかと思うが、普段は、別に家族がいて一緒に暮らしているのに、何年ぶりかで日本に帰って来たからといって、急に父親面をされるのはごめんだ。それはなんだか、自分勝手な気がするのだ。

 

 父がそうであるように、葉菜にだって都合があるし、葉菜なりの生活があるのだから。

 

「でもやっぱり、佑紀乃さんや、寮の人たちといるほうがいいから」


「そうなの。葉菜ちゃん、寮でお友達が待っているから、まっすぐ帰るの?」


 葉菜は笑う。

 

「さっきのあれは、嘘です。みんな夕方にならないと帰って来ないと思います」


「それじゃ、どこかでお夕飯を食べて行きましょうか」


「はい!」




 佑紀乃に、何が食べたいかと聞かれたので、葉菜は、回転寿司のお店に行きたいと言った。お金の心配ならいらないと言われたけれど、ホテルで高級なフランス料理を食べたので、夕飯は、リラックス出来て、お腹いっぱいお寿司が食べられるところがよかった。

 

 姉と何度か行って、とてもおいしくて楽しかったのだ。佑紀乃は、まだ一度も行ったことがないと言うので、葉菜がシステムやメニューの説明をした。

 

 値段のわりにおいしく、サイドメニューもたくさんあるので、佑紀乃も気に入ってくれたようだった。食べながら、結婚式の感想や、最近の学校での生活や、そのほかにもいろいろなことを話して、楽しい時間を過ごした。

 

 

 

 葉菜にはめずらしく、門限ギリギリに寮に戻ると、先に戻っていた三人が笑顔で迎えてくれた。

 

「おかえり。結婚式はどうだった?」


「お姉さん美人だから、素敵だったでしょうね」


「葉菜ちゃんも結婚したくなったんじゃない?」



 ひとしきりしゃべった後、瑠衣がにやりと笑って言った。

 

「葉菜ちゃんに、いい知らせがあるよ」


「え、なんですか?」


 見海は、スマートフォンに何やら打ち込んでいる。その姿をじっと見ていると、見海も、スマートフォン置いてにやりと笑った。

 

「いい知らせって?」


 みんなを見回しながら問いかけるが、淳奈もにやにやしているばかりで、誰も何も言ってくれない。

 

 葉菜は困惑する。いったい何事?

 

 

 だが、すぐに部屋のドアがノックされた。瑠衣が、にやにや笑いのまま葉菜に言う。

 

「行っておいで」


「はあ……」


 言われるまま、立って行ってドアを開けると、待ちかねた顔があった。

 

「郁美ちゃん!」


「葉菜ちゃん!」


 二人は、どちらからともなく手を取り合う。

 

「戻っていたんだね」


 郁美は、息を弾ませて言う。


「うん、今日のお昼過ぎに。今日はお姉さんの結婚式だったんだってね。


 今、見海さんに葉菜ちゃんが帰って来たってメッセージをもらって、早く会いたくて階段を駆け上がって来たの」


 なるほど、見海は、葉菜が帰って来たことを郁美に知らせていたのだ。

 

「郁美ちゃん、私も会いたかったよ!」


 うれしくて、手を取り合ったまま、二人して、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。

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