表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
51/58

51,みんなと一緒に乗るバスとわくわくが止まらないこと

 そのまま五人でおしゃべりをして盛り上がり、気がつくと、消灯時間が近くなっていた。あわててみんなでシャワールームに向かう。

 

 

 一旦、自分の部屋に戻って、着替えを持って来た郁美が、葉菜に向かって言った。

 

「瑞希がいなくなったから、蓮沼さん、一人になっちゃって寂しかったって」


 蓮沼というのは、郁美と同室の二年生だ。瑞希も、自主退学したのだ。

 

「じゃあ、郁美ちゃんが戻って来て喜んでいるね」


 郁美が、ふふっと笑う。


「そうだといいけど。


 あっ、それで、蓮沼さんは、もうシャワーを浴びたっていうから、葉菜ちゃん、私の次に入っちゃえばいいよ。なんなら私の前でもいいし」


「じゃあ、郁美ちゃんの次に浴びさせてもらうね」


「うん」


 郁美が、にっこり笑った。

 

 

 

 その夜、ベッドの中で、葉菜は、ここに来てからのことを思い返した。

 

 初めは、転校もさることながら、寮に入ることが嫌で嫌でたまらなかった。もともと友達はいなかったし、ほしいとも思っていなかった。

 

 姉さえいれば、それでよかったのだ。それなのに、大好きな姉と離れ、しかも四人部屋で暮らさなければならないなんて、心の底から絶望した。

 

 赤の他人と生活をともにするなんて、絶対にうまく行くはずがないし、ストレスしかないだろうと思っていたのだ。

 

 

 だが、実際に来てみると、年上のルームメイトたちは、みんな親切で優しかったし、仲良くしてくれる友達まで出来た。

 

 学校ではいろいろ嫌なことがあったし、そのことで、寮の人たちにも迷惑をかけてしまったけれど、ルームメイトたちは、どんなときも葉菜を信じてくれ、今も温かく接してくれている。

 

 一度は寮を去った郁美も、今日、戻って来てくれた。それに、偶然出会い、孤独だった葉菜に優しくしてくれ、今では姉とも親しくなった佑紀乃。

 

 泣きながら、姉とともにタクシーでやって来た日には、まさかこんな未来が待っているとは思いもしなかった。まさか、こんなにたくさん大切な人が出来るとは。

 

 こういうのを、多分幸せと言うのだ。そう思いながら、いつの間にか、葉菜は眠りについた。

 

 

 

 1ヶ月後の週末、朝食を終え、身支度を整えた葉菜は、みんなと一緒にバス停へと向かう。見海、瑠衣、郁美は実家へ、淳奈は恋人の部屋に行くという。

 

 淳奈は、アルバイトがバレて以来、彼の部屋でモデルをすることになったのだそうだ。それについて、淳奈は言った。

 

「結局やっていることは変わらないし、バイト代ももらっちゃってるけどね」


「部屋で二人きりでなんて、なんだかイヤラシイわね」


 そう言う瑠衣の言葉に、淳奈はあっけらかんと言った。

 

「ま、恋人同士だからね、それなりにやることはやってるよ」


 

 寮の前の坂道を下りながら、隣に並んで歩く郁美が言う。

 

「葉菜ちゃん、バスに乗るのは初めて?」


「うん」


「パスモは?」


 葉菜は、肩にかけたトートバッグをポンと叩く。

 

「バッチリ。スマホに入ってるよ」


 最近は、人並みにスマートフォンを持ち歩くようになった。みんなや姉にすすめられて、電子マネーデビューもした。


 

 今日、寮に入って以来、初めて実家に帰るのだ。家には、すでに洋館を引き払った佑紀乃が住み始めている。

 

 今日は姉も帰って来ることになっていて、ともに一泊することになっている。これから、どんな楽しい時間が待っているのかと思うと、わくわくが止まらない。

 

 

 

 駅に着き、バスを降りると、それぞれの方向の電車に乗るため、改札を入ったところで、手を振って別れた。葉菜は、途中まで、見海と二人で行くことになった。

 

 ホームに並んで電車を待ちながら、見海がしみじみと言った。

 

「葉菜ちゃんと一緒に電車に乗ることになるとはね」


「はい」


「葉菜ちゃんが寮に入って最初の週末、すごく心細そうで、一人にして出かけるのが心配だったけど」


「私、そんなに心細そうに見えましたか?」


「見えたよ。お姉さんと別れるときも、小さい子みたいに涙をぽろぽろこぼして泣いていたし」


「あ……恥ずかしい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ