第8話: すれ違う背中、届いた拳
(教室に戻ったサエキが、月白の机の方へと向かう)
(月白の机の前に来たサエキだったが、一瞬躊躇ってから自分の席へと戻っていく)
(月白は力なく机に突っ伏している)
サエキ(M): なんだよ……寝てんじゃん。眠いからさっき逃げるように戻ってったのか……。
(サエキが重い足取りで自分の席につき、授業が始まる)
(授業が始まると同時に、月白はまるで起きていたかのように勢いよく上体を起こす)
(そんな月白の姿を、サエキは遠くからじっと見つめる)
サエキ(M): なんだよ……寝てなかったのか……。ただ疲れて突っ伏してただけなのか……? 全然わかんねぇ……。
(そのまま授業が終わり、移動教室の時間になる)
(月白が力なく席から立ち上がり、教室を出ていこうとする)
(その姿を見たサエキは、すぐに席を立って彼女の後を追いかける)
(サエキが呼びかけると、廊下の空気が重く沈み込む)
サエキ: ツキシロ、何でそんなに元気ないんだよ……。今日に限ってさ。
(月白は後ろにいるサエキを振り返りもせず、沈んだ声で冷たく言い放つ)
月白: ううん、何でもない。ただ疲れてるだけだから。……だから、今日は学校で私に話しかけないで。
(廊下の空気がさらに重苦しく冷え込んでいく)
(月白が重い足取りで歩き出す)
(サエキはその言葉にショックを受けたように、その場に立ち尽くす)
(その後、お互いに一言も口を利かないまま学校が終わり、下駄箱でサエキが月白に声をかける)
サエキ: ごめん、ツキシロ。昨日のLINE、ちょっと冷たすぎたよな。次からはもっと……。
(サエキの言葉を遮り、上履きを履き替えた月白がサエキの目をまっすぐ見つめて言う)
月白: そういうことじゃないの、サエキ……。サエキ、お願いだから、これからは私の友達の言葉なんて無視して生きてよ。お願い。
(月白がそのまま立ち去っていく)
(サエキは何の言葉も返せないまま、呆然とした表情で立ち尽くす)
(一方、路地裏を歩いていた月白に、何者かが声をかける)
不良1: おい、そこの。ちょっと来いよ。
(月白が動揺した声で)
月白: え……わ、私ですか……?
(不良が月白を指差しながら詰め寄る)
不良2: お前以外にここに誰がいんだよ! 早く来いって言ってんだろ、あぁん!?
不良1: おい、そんなに怒鳴るなよ……。耳が痛ぇじゃん。
(不良2が不良1を睨みつける)
不良2: そんなこと気にしてる場合かよ!?
(月白がおびえた足取りで不良たちの方へと進み出る)
(月白が不良たちの顔を見て、怯えた声で口を開く)
月白: あんたたち……隣の学校の生徒でしょ……?
(不良がニヤニヤと笑いながら)
不良2: ハハッ! 何で分かったんだよ?
不良1: 俺たちの制服……見れば分かるだろ……。
不良2: ああ……そっか。コホン……。それはそうとさ、俺たちの頼み、ちょっと聞いてくんねぇ?
不良1: 大したことじゃないんだよ。俺たち買い物がしたいんだけど、ちょっと金が足りなくてさ……。
(不良が月白にじりじりと近づいてくる)
月白: それってどういう……どういう意味よ? 来ないで……!
(不良たちが月白を鋭く睨みつける)
不良2: ああ? ちょっとしたお願いも聞いてくんねぇのかよ?
(月白が不良たちを無視して、その場を離れようとする)
月白: それのどこが……お願いよ!?
(月白が背を向けて走り去ろうとしたその瞬間、不良2が月白の手首を荒々しく掴んで離さない)
月白: 何するのよ……離してっ!
不良1: やっぱり……言葉だけじゃダメだな。素直に協力してくれりゃ可愛いのに、何でそんなに言うことを聞かないんだ?
(同じ頃、サエキが家路を歩いている)
サエキ(M): 何なんだよ……あの言葉。『これからは私の友達の言葉なんて無視して生きて』って、一体どういう意味だよ、ツキシロ……。俺、何かやらかしたか……?
(そうして歩いていたサエキの目に、不良たちに手首を掴まれている月白の姿が飛び込んでくる)
サエキ(M): な……あそこにいるの、ツキシロ……!? あの男のやつらは……一体何なんだよ……!?
(再び、月白の側)
(不良2が月白の顔を殴ろうと、拳を振り上げる)
(月白は恐怖のあまり、ギュッと目を瞑る)
(その瞬間、背後から目を見開いたサエキが怒涛の勢いで激しく飛び込んできて、不良2の拳をガシッと力強く掴み取る)
(不良2が驚愕の表情でサエキを睨みつける)
不良2: ああ!? なんだお前は……!?
(恐る恐る少しずつ目を開けながら)
(月白が後ろを振り返ると、そこには不良の拳を完全に受け止めているサエキの背中があった)
(月白が震える声で叫ぶ)
月白: サ……サエキ……!?




