第30話:二人、見上げる花火
(そうして座っているサエキの目に、あるフードトラックが飛び込んでくる)
サエキ: ツキシロ、もしかしてお腹空いてるか?
月白: ん? あ……ちょっと空いてるかも。
サエキ: じゃあ、あそこにあるたこ焼き食べるか? たこ焼き以外にも色々売ってるみたいだけど。
(月白の目がキラキラと輝き出して)
月白: うん! すっごく食べたい!
サエキ(M): 相当お腹空いてたんだな……。 じゃあ行こうぜ。
(二人がフードトラックの前に並んで立つ)
店員: いらっしゃいませ〜! 何にいたしますか?
月白: 私……たこ焼きにする。
サエキ: じゃあ、たこ焼きの大きいのを一つください。
店員: はーい! 少々お待ちくださいね〜。
(たこ焼きを受け取り、箱を持って再びベンチへと戻ってくる)
(サエキが箱を開けると、思わず驚きに目を見張る)
サエキ: なんだよこれ……二人なのに何で爪楊枝が一本しか……。
(サエキが再びフードトラックのほうに視線を向けて)
サエキ: 列もめちゃくちゃ長いな……。
(サエキが少し考えてから言う)
サエキ: 交互に食べるしかないな、これで。
(月白の顔がカッと赤くなり、目をぎゅっと瞑りながら激しく動揺する)
月白(M): 本当に一本の爪楊枝で食べるの!? それってサエキと間接キスじゃん……どうしよう!
サエキ(M): 何であんなに焦ってんだ……?
(サエキが月白に先に食べさせようと差し出す)
月白: え? あ、ううん大丈夫! サエキが先に食べて、サエキが買ってくれたんだから!
サエキ: え? おう、分かった。
サエキ: ――ん、ここ美味いな。ほら、ツキシロも食べてみなよ。
(月白が顔を真っ赤にしたまま、たこ焼きを口に運ぶ)
月白(M): 本当に間接キスしちゃった……どうしよう!
(月白が可愛らしくもぐもぐと咀嚼しながら言う)
月白: すっごく……美味しいね、ここ。
サエキ(M): 美味しそうに食べるな、ツキシロは。
(サエキは全く気づいていない)
(そうして、たこ焼きを食べ終えると館内アナウンスが流れ始める)
アナウンス: まもなく、当イベントのフィナーレを飾る花火大会が始まります。ご覧になるお客様は、ベンチや芝生にお座りになってご観覧ください。繰り返しお勧めいたします……。
サエキ: もうそんな時間か。急ごうぜ、ツキシロ。
月白: うん、行こう!
(そうしてあのベンチへと向かう途中、人混みが激しくなり、サエキと月白の手が離れてお互いにはぐれてしまう)
月白: サ……サエキ……!
(サエキと月白が慌てふためきながら)
サエキ: 人が多すぎる! ツキシロ! あの丘のほうに来い!
月白: うん! 分かった!
(そうして月白が先に丘のほうへと登っていく途中、階段で数人の男子高校生のグループに見つかってしまう)
男1: そこのお姉さん?
月白: え……わ、私ですか? 何……何ですか?
男1: 彼氏とかいるの? いないなら、俺と一緒に下で美味いもんでも食いながら花火見ない?
(男1と男2がニヤニヤと笑いながら)
男2: おいお前、正気かよ? 適当にしとけって、女を見るたびに何なんだよ〜。
男1: めちゃくちゃ可愛いじゃん。で、彼氏いるの? いないの?
(月白が恐怖に怯えた声で)
月白: い……います、彼氏。
男1: そーう? なんか嘘っぽいな。何でそんなに震えてるの? 俺たちが怖いの?
(月白の手がブルブルと震えて)
月白(M): サエキ……早く来て……。
(サエキが丘の階段を登っている)
サエキ(M): 思ったより高いな……。ツキシロはもう先に来てるだろうか……。
(その時、サエキの目に男たちに囲まれている月白の姿が飛び込んでくる)
(佐伯が男1と 男2の後ろから、高い身長を活かして静かに立ち塞がり、冷たい視線で見下ろす)
(男1と 男2が背後に人の気配を感じ、ゆっくりと振り返る)
男1: あ……だ、誰ですか……?
サエキ: この子の彼氏だけど。お前らこそ誰だよ。
男2: あ……俺は関係ないです!
(男2が急いで階段を駆け下りていく)
男1: す……すみません! 次からは絶対にしませんので!
(サエキがじっと見下ろしながら)
サエキ: 何してんだよ? 早く行けよ。消えろ。
(男1が慌てふためきながら逃げ去っていく)
サエキ: どこか怪我はないか、ツキシロ?
(サエキが月白の目線に合わせて、その場に少し屈みこむ)
(すると月白が、屈んだサエキの胸へと勢いよく飛び込んでくる)
(月白がサエキの顔をもう一度確かめ、涙をボロボロと流しながら抱きつく)
月白: すっごく怖かったんだから、サエキ……! ありがと……!
(サエキの顔が少し赤くなりながら)
サエキ: 悪かった、遅くなって……。世の中、正気じゃない奴らが多いな……。
(その時、大音量と共に花火が打ち上がり始める)
(サエキと月白が手をしっかりと繋ぎながら言う)
サエキ: 綺麗だな、花火。ここは人目にも付きにくくて良い場所だな。
月白: そうだね……。サエキ、来年もここに来たいな。
サエキ: ん? ああ……そうだな、来年も来ようぜ。
(月白が約束を交わすジェスチャーをしながら)
月白: じゃあ、約束ね。
(サエキと月白が微笑み合いながら、指切りげんまんをする)
サエキ: おう、約束する。
(そんな二人の様子を、下から中村が見上げて、嬉しそうな笑みを浮かべているところで幕を閉じる)
次回のエピソードも楽しみにしていて、お付き合いいただき、いつもありがとうございます!




