第13話:震える身体、近づくふたり
ここまで楽しんで頂きありがとうございました!
(そうして気まずくなった空気の中、ベガがサエキの膝の上へと飛び乗る)
(サエキと月白が驚きに目を丸くする)
サエキ: え……何だ? 何で俺の膝の上に……。
(月白が嬉しそうにクスッと笑いながら)
月白: サエキのこと、気に入ったんだよ! そうやって固まってないで、ちょっと撫でてみなよ!
サエキ: え? あ……ああ、分かった。
(サエキがベガの頭をゆっくりと撫でる)
(ベガが満足そうに目を細める)
サエキ: うわぁ……すっごく気持ちいいな。毛並みも柔らかいし、ツキシロがちゃんと手入れしてやってるんだな。
(月白の目がパッと輝き、自信満々に胸を張る)
月白: 当然でしょ! 私が毎日愛情込めてお世話してるんだから! ……って、サエキ何で分かったの? 手入れが行き届いてるって。
サエキ: ああ……姉貴が昔から猫好きでさ。よく猫カフェに連れていかされてた……から。
(月白が楽しそうに笑う)
月白: 何それ! サエキってそういう場所には絶対行かないタイプだと思ってたのに!
サエキ: 何がそんなにおかしいんだよ……。
サエキ: あ、それとちょっと気になるんだけど。
月白: ん? 何が?
サエキ: 猫も犬みたいに『お手』って言ったら手を出すのか?
月白: うん! お手できるよ! でも……。
サエキ: マジで? じゃあ……。
月白: おやつをあげないとやらないよ!
(月白が言い終わる前に、サエキが先に手を差し出してしまう)
(ベガがサエキの手を爪で引っ掻く)
(月白が慌てて声を上げる)
月白: ひゃあぁっ! だ、大丈夫……!? サエキ!?
サエキ: いっ……あー、血が出てるな。まぁ、これくらい大したことないけど。
(月白がベガをキッと睨みつける)
月白: ベガ……あんたって子は!
サエキ: いや、違うんだツキシロ。お前が最後まで言い終わる前に俺が勝手にやったからさ。
月白: それでも……。
サエキ: だったらツキシロ、おやつ貰ってもいいか? 一回試してみたい。
月白: え? あ……うん、分かった。
(サエキがおやつを受け取って手を差し出すと、ベガが大人しく手を重ねる)
サエキ: 本当におやつが大好きなんだな。
(月白がハッと我に返る)
月白: ちょっと、感心してる場合じゃないでしょ!? 早く傷の手当てしなきゃ!
サエキ: え? でも、このくらいなら別に……。
月白: ここに軟膏と絆創膏があるから大丈夫!
(月白が救急箱を床に置きながら中身を取り出そうとする)
(サエキが軟膏を掴もうとした瞬間、月白も同時に手を伸ばし、二人の手が重なる)
(サエキと月白がバッチリと目を合わせ、一瞬で顔を赤くする)
月白: わ、私がやってあげる……サエキ……。
サエキ: あ……いや、このくらい自分で……できるけど。
月白: ダメ! サエキはうちのお客さんでしょ……? だから私がやるのが筋だもん。
サエキ: あ……ああ、分かった。じゃあ、ツキシロにお願いするわ。
(月白が軟膏を塗るために、サエキの手を優しく包み込む)
(サエキの身体がビクッと僅かに震える)
月白: ど……どうしたの? サエ키、痛む?
(サエキが小さく息を吐き出しながら)
サエキ: いや……大丈夫。ちょっと……傷口に染みたから息を止めてただけだ。
(月白もサエキも、顔を真っ赤にしたまま沈묵する)
月白(M): サエキ、照れてるのかな……。私もすっごく恥ずかしいけど……でも、嫌じゃないな、この状況。ただサエキと二人きりだから緊張してるだけかもしれないけど……。何て言うか、全然嫌じゃない……。
(傷の手当てが完了する)
(サエキが名残惜しそうに床から立ち上がる)
サエキ: じゃあ、俺はそろそろ帰るわ。いつまでも居座るのもアレだしな。
月白: え? 帰っちゃうの……? あ……そ、その、サエキ! ベ、ベガのこと、もっと見たくない? 今日を逃したらこんなチャンス、そうそう無いんだからね……ハハ……。
(サエキがぽかんとした表情で月白を見つめた後、ふっとからかうように笑う)
サエキ: 『素直に、もう少し一緒にいてほしい』って言えよ。
(その言葉に月白が大きく目を見開き、言葉を失ったままサエキを凝視する。そして数秒の後、意を決して叫ぶ)
月白: ほ……本当に、もう少し一緒にいてよ! サエキ!
(サエキの顔がカッと真っ赤に染まる)
サエキ: いや……そ、そんなストレートに言えって意味じゃなかったんだけど。ただの冗談のつもりで……。
(月白も顔を真っ赤にしてうつむく)
サエキ: ……分かったよ。じゃあ、もう少しだけお言葉に甘えようかな。
(二人が少し気恥ずかしそうに目を合わせる)
(次の瞬間、月白の表情がパッと明るくなる)
月白: よしっ! じゃあ、何か食べるもの探してくるね! ベガのこと見てて!
(台所へと嬉しそうに駆けていく月白の後ろ姿を見送りながら、サエキが呟く)
サエキ: 随分と……嬉しそうだな。
次回のエピソードも楽しみにしていて、お付き合いいただき、いつもありがとうございます!




