央都防衛戦の終結
第26話です。
騎士団集会所へ戻ると外には俺たちのように防衛戦を乗り越えた人々が集まっていたが、その中には傷を負った人も複数人いて今回の戦いの被害の大きさを物語っていた。
シーナとノルデンは外で待っているとのことだったのでハルタと二人で建物に入った。
騎士団集会所の会議室に戻るとまず最初にウルドとカナリアの姿を探した。彼らは副団長の机の前で騎士団副団長のイヴェルと話をしていた。彼らの姿が見えると安心した。
「ウルド、カナリア、無事だったか!」
二人がこちらに体を向けた。そしてカナリアは笑顔を浮かばせた。
「二人も無事で何よりだよ。ここに戻って来た時にいなかったから今まで心配していたんだよ。ほんと良かった、こうしてまた四人揃うことができて」
「そうだな。カナリアの言うととおりだ。大丈夫だったかウルド?」
「ふっ、お前に心配されるほど俺は弱くない」
相変わらずな調子で安心した。だが、彼が着ている服ををよく見ると、所々に血がにじんでいる。俺たちと同じように彼もまたディアブロと激しい戦いを繰り広げたのだろう。
「そうそう、今回何度も危ない場面があったけれどウルドくんのおかげで乗り越えられたんだよ」
カナリアが自慢するようにウルドの活躍ぶりを語った。
「そうだったのか。さすがだウルド」
「んっん」
机を隔てて向こう側に座っているイヴェルが咳ばらいをして自分に注目を集めさせた。
「四人とも無事に帰還できたことを私も嬉しく思っているよ。状況把握を任せていたテレシア先生から君たちの活躍ぶりは聞いたよ。今回の央都防衛に協力してくれたことを騎士団の代表として感謝するよ。ありがとう」
「俺たちも央都ユグドラシルを騎士団の皆さんと一緒に防衛できたことを光栄に思っています。それで今回の襲撃の被害はどのくらいだったんですか?」
「まだ正確な値は出ていないが、今のところ死者は数十名、央都全体の建物の約五分の一が倒壊又は半壊といったところだよ。恐らくこれから増えると思われる。我々騎士団も数人死者を出してしまった。私がもっと適切でより早く指示を出していれば……」
イヴェルが落ち込んだ様子で肩を落とした。
「これは誰の責任でもありませんよ。それにイヴェルさんの指示があったからこの最小限の被害で済んだんじゃないですか。央都をディアブロから守れたのだから騎士団メンバーの死も無駄ではないですよ!」
ハルタがイヴェルを励ますように語りかけた。ハルタの言っていることは正しい。イヴェルという集団を率いる存在なしでは今回の防衛は失敗していたに違いない。
「ありがとうハルタくん。そう言ってくれると少し心が軽くなるよ」
「イヴェル貴様、騎士団副団長ならもっとしっかりしろ。戦いに犠牲は付き物だ。代表者がそんなへぼでは頼りにならないな」
俺たちの会話に外で待っているはずのノルデンが割って入ってきた。ノルデンは腕を組んで、イヴェルに励ましの声を掛けた。そういえばこの二人はノルデンの事件の件で接点があった。
「何だその言葉は。もう少し言葉に品を持ったらどうだ。そしてなぜお前が央都にいるんだ?」
「私の弟子達の卒業があったからだ。だが来てみると、ディアブロが央都を襲撃し、その襲撃している側に実の弟が加勢していた。なんて日なんだ」
ノルデンに弟子なんて言われるのは初めてかもしれない。何だか弟子と呼ばれるのが呼ばれるのが恥ずかしかった。
「ガリウドさんがか?」
「ああ、あのクソ野郎がだ。あいつはこうも言っていた。サザンカ村襲撃も俺が企てたと」
ノルデンの顔がガリウドと戦おうとていた時のように恐ろしい形相になった。
「なんであの人が。すごくフレンドリーでいい人だったのに」
「色々と恨みがあったらしい。まああいつは私の手で殺したから一件落着だ」
ノルデンは恐ろしさとは裏腹にどこか悲しそうだった。
「今回の件に関しては後日また全員に事情聴取をしたいと思っているから、そのうちまたここに呼び出すことになるけど、協力をよろしく頼むよ」
その場にいた全員が了承をした。
状況の確認が終わりひとまず落ち着くと、俺たち四人とノルデン、シーナで壊れているかもしれない宿へ向かった。
到着すると元の形を残したまま宿が建っていた。宿はメイン通りから近くに建っているのにも関わらず壊されておらず、周りの家々も一切襲撃の被害がなかった。ということは何かしらディアブロ側の事情があったのかもしれない。
ドアを開けて入ると中には静寂だけが広がっていた。食堂へ入ってテーブルを見るとくしゃくしゃになった紙が一枚置いてあった。手に取って読んでみるこう書いてあった。
『みんなへ
これをみんなが見ているということはディアブロの央都襲撃は失敗に終わって俺はもう既に死んでいるということだろう。今回の襲撃で既に分かっている事だと思うが俺はディアブロ側の人間だ。サザンカ村の襲撃を企てたのも俺だし、他にも沢山の悪事に加担してきた。今まで散々色々な面で貶されたり見下されて、耐えられなかったんだ。でも今こうして手紙を書いていると後悔しかない。なんで俺はこんなことをやっているんだと。タツキとハルタには信用を裏切るような形になってしまって申し訳ない。そしてサザンカ村のみんなには最低なことをしたと思う。本当にすまなかった。最後に姉貴。才能ある姉貴の顔に泥を塗ってしまってすまない。俺の恨みを作ったのは決して姉貴のせいじゃない。全部俺のせいだ。俺の死で自分を責めないでくれ。俺はこれからディアブロの加勢をしてくる。みんなこれからも元気で。
ガリウドより』
ガリウドの心の中に後悔の感情があってホッとした。手紙から読み取れるように襲撃には後悔の念を含みながら向かったということになる。もしかすると襲撃を断りたくても断れない事情があったのかもしれない。もう遅いが、今になってガリウドの姿が宿にないのが寂しかった。
手紙をみんなに渡して見せた。
ノルデンは手紙を受け取り、読み出した。彼女の顔を見ると頬に涙が流れていた。ノルデンが泣いているのを見るのは初めてだった。
「大丈夫です。ノルデンさん。ガリウドさんは自分が進もうとしている間違った道へと行くのをノルデンさんが止めてくれたことに感謝していると思いますよ」
シーナが涙をこぼしているノルデンを腕で優しく包んだ。その様子を周りにいた全員が優しく見守った。
央都襲撃が行われてから一週間が経った。一時恐怖の場と化した街は少しずつではあるが元の活気を取り戻し始めた。ガリウドを自らの手で裁き、身内を失ったノルデンも以前と同じような頼もしい姿に戻った。
今日は襲撃の日に行われた卒業試験の合否発表の日だ。ハルタ、カナリア、ウルドの三人と共に受かっていることを期待しながら、合否発表が行われる昼にハルタと共に学校へ向かった。
合否の発表は卒業試験を行う戦闘場で行われるため、学校の入口でカナリアとウルドと落ち合い戦闘場へ向かった。
戦闘場に入るとフィールドの中央には大きな壇上が組み上げられていた。壇上にはテレシア先生やフレイヤ先生などの教師が座っていた。
俺は三人と観客席に着席し、合否の発表の時を今か今かと待った。
「私受かるかなぁ。心配で心臓が飛び出そうだよ」
「カナリアなら大丈夫だよ。だってあの時よく戦えていたじゃないか」
ハルタがカナリアを励ました。
「そうかな……」
「そういえばお兄さんのイヴェルさんは大丈夫そうか」
騎士団副団長のイヴェルはおそらくこの一週間央都復興のために計り知れないほど働いたはずだ。
「一週間経ってやっと落ち着いてきたみたい。一週間前なんかは一睡もせずに復興の計画を立てていたよ」
「それは大変だっただろうな。しっかりとした礼もしていないし、騎士団入団についての件も報告しないとな」
「あ、そのこと完全に忘れてた。タツキはイヴェルさんにどう答えようと思っているんだ?」
「俺は今回断ろうと思っているよ。だって俺はまだこの世界の一部分しかまだ見ていない。俺はもっとこの世界について知りたい! でもいつかはお世話になった騎士団に入ろうと思っているさ」
「ということはタツキ貴様、卒業後どこかへ行くのか?」
ウルドは興味がなさそうに聞いてきたが、どうやら俺の卒業後の予定が気になるらしい。もちろん旅をしたいけれど、どこに行けばいいのやら……。
「行こうと思っているけど、どこに行くかはまだ決めていない。だが、それにはまず卒業試験に合格することが前提だがな」
始業のチャイムが鳴り、待ちに待った合否発表が始まった。
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まもなく第一章完結です!




