初めての円卓会議 ---- 中編
ブクマ頂き有難う御座います!
今回はハロルド視点→エレナ視点です。
「私にお話しですか?」
アマリーリア陛下の部屋から出てきた所をエレナが捕まえ、半ば強制的に部屋へ連れてきた。
何故こういった時に限って行動的なのか、少しだけ呆れてしまう。
「母様が落ち込んでいるでしょう? お父様の事、何か話してないかしら?」
「そう言われましても---- 殿下の頼みだからと陛下の事を軽々しく話す訳には----」
「そこをどうかお願い! 母様が心配なの」
しょぼんとした顔を作りエレナは侍女を見つめる。最初戸惑いを見せてた侍女だが、エレナが引かないと感じたのか溜息を漏らした。
「殿下---- 直接陛下に伺ってみては---」
「それは駄目よ。母様はああ見えて強情でしょう? 絶対私に話してくれないわ!」
エレナも十分強情だが---- 何だかんだアマリーリア陛下に似てる性格だと俺は思っている。最近愚妹といわれるようになったエレナだが、飄々としたままで気にしてもいないようだ。
「ですが---- 」
「一生に一度のお願いよ! 話を聞いたら大人しくしているわ! 聞いた事も言わないしお願い!」
「---- 約束出来ますか?」
「ええ! 神に誓って約束するわ!」
「ハア。絶対ですよ?」
侍女が話した内容を纏めれば、普段お酒を飲まないアマリーリア陛下が酔い潰れていたらしい。何でも陛下の名前を呟き悲しんでいたとか---- 違う侍女に陛下の部屋から出てきた侍女を調べさせた結果、シルビア様で間違いないようだ。
ジーナの名前が出てきてないが、アマリーリア陛下は知らないのだろうか。
とりあえず余計な事は言わないよう黙ったまま話を聞き続ける。話が終わりエレナにお礼を言われた侍女は、約束ですよと念を押して去っていった。
侍女が部屋を退室したとたん、エレナは顔を真っ赤にして体を震わせ始める。
あー、絶対約束なんか守る訳ないよな。あの侍女も可哀想に----
「ハロルド、シルビア様の元へ行くわよ。こうなったら直接聞いてやるわ」
「エレナ、侍女に大人しくしていると神に誓ってなかったか?」
「誓ったわ。でもね、約束は破る為にあると思わない?」
何だ? 呆れてものが言えない。
約束は守る為にあるもんだ、怒りで頭がおかしくなったのか?!
「もし我々の敵が我々を咎めるなら、我々のやることはすべて正しいのだ! さあ行こうシルビア様の元へ!」
エレナの決まったという表情を見て腑に落ちる。いつもの様に何かになりきっているようだが、全く検討もつかない。
アーサー王ではないよな? 今までの人物とも違うし----
それにしても今度の奴は何か悪そうな奴だな。約束は破るし、やる事全て正しいと言い切るとは。
張り切って歩くエレナを止める事はもう難しいだろう。俺がそばに居ないとな----
思いの外歩くのが早いエレナに中々追いつく事が出来ない。エレナの横へ何とか到着した時、既にシルビア様へ声をかけた後だった。
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「シルビア様! ちょっとお時間頂けるかしら?」
「エレナ殿下。私に何かご用でも?」
しらばっくれるつもり? ネタは上がっているのよ!
「ほほっ。ここでは何ですから、近くにある東屋へ行きましょう。ついて来なさい」
東屋にあるソファへハロルドと共に座ると、シルビア様は優雅に腰を下ろした。未亡人であるシルビア様はまだお若くとても美しい。
母様とはまた違う美しさに喉をならしてしまったが、ここまで来て引く訳にはいかないわ。
「殿下? どうかなさいました?」
「シルビア様。シルビア様は、父様の愛人ですか?」
私の直球過ぎる質問に目を見開き固まるシルビア様。
あー、もう間違えたわ! 気になり過ぎて直球で投げてしまったじゃない。
チラリとハロルドを見ても口を開いたまま動かず私を見てるだけ。
失敗したわ---- 初めて母様から言われた愚妹という言葉が胸に突き刺さる。
言われて当然だわ。自分の事なのに今になって気付かされた。ハロルドから聞こえる溜息にちょっとムカついてたけど、仕方ない事なのかも----
「エレナ殿下、あの愛人というのは----」
シルビア様の困惑した表情を見て申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ごめんなさい。夜に父様の部屋からシルビア様が出てきたと聞いて疑ってしまったの」
「その事でしたか。心配させましたね陛下とはそういった関係ではありませんわ」
「じゃあ、どうして父様の部屋から出てきたの?」
「私の旦那様が亡くなったのはご存知ですわね?」
シルビア様の言葉に頷く。早くして病で亡くなったシルビア様の旦那様は優秀な近衛騎士だったと聞いている。
「私の旦那様は陛下と学院時代から仲が良かったようです。亡くなって行き場のない私を侍女にしてくださったのは陛下なのです。今の生活に不満はないか聞かれただけですわ」
「そっ、そうなの? でもそれなら部屋に行く必要は----」
「お部屋へ伺ったのは旦那様の剣を受け取る為です。旦那様は陛下に忠誠を誓っていましたから、誓いに使われた剣を私に渡して下さったのですよ」
「私。何も知らずに突然おしかけてごめんなさい」
「いえ、心配するのも致し方ありませんわ。誤解を招いてしまい申し訳ありません」
「シルビア様は悪くないわ---- 私がいけないの」
「ふふ。エレナ殿下、陛下はアマリーリア陛下を愛しておられますわ。ご安心下さい」
「有難う----」
微笑んだまま去っていったシルビア様をテーブルに寝そべった姿勢で見送る。
「ハロルド、私が愚かだったわ。怒らないで頂戴」
「---- それにしても直球だったな。シルビア様が違うとなると後はジーナか?」
ジーナの名が聞こえてきたが気力をなくしてしまう。私って何て馬鹿なのかしら----
来る前はスターリンになりきっていたつもりなのに、今ではおおかみときつねの狼になってしまったようだ。
私が狼ならハロルドは狐よね。
頭がよくない狼は狐のように上手く立ち回れず、欲をかいて人間に殺されるのよね。死ぬ間際、狐に冷たくされたと書いてあったけど、ハロルドも私を冷たい目で見るのかしら?
想像したら何だか泣けてきた。
そんな悲しい死に方は嫌だわ。挽回しないと冷たい目で見送られてしまう。
ジーナの事、どうやって調べようかしら?
考えては見るものの悲しい気持ちには勝てず何も考えられない。
ハア。もうどうでも良くなってきたわ。
先程までの怒りは消え、近くの木に止まった鳥に思いを馳せる。
私も飛んでいきたい。
テーブルに額をつけて落ち込んでいたら、ハロルドに肩をゆすられた。
何? 上体を起こしハロルドへ顔を向けたとたん、侍女長の声が耳に届いた。
「エレナ殿下、ジーナについての調査が終わりました」
先程からあまり時間は経っていない。侍女長が優秀なのは知っていたが、これ程早く情報が聞けると思っていなかった。
侍女長を座らせ話を聞く為に姿勢を正す。侍女長から聞くジーナの話は、私の想像とはかけ離れた内容だった。
じっくりと話を聞いた後、私はハロルドを連れてジーナの元へ動き出した。
思いの外長くなってしまい、三部に分けました。来週末にまた更新します。
今回は(スターリン)と(おおかみときつね)です。
スターリンはソビエト連邦の政治家で軍人。レーニンの後、29年間に渡り同国の最高指導者の地位にいた人です。同世代ではヒトラーが有名ですね、最後に私はもうおしまいだ。て人を信じれず亡くなった方です。
おおかみときつねは有名な童話。
狼の我儘に狐は大喰らいがいなくなったと喜ぶシーンを思い出します。
ではまた来週に会いましょう。




