子供はハロルド似?!
「ハンナここにいたのね? 何をしているの?」
ハロルドとの間に出来た愛娘は、庭にある木の側で本を読んでいる。
女王になる為の戴冠式が近くハンナと一緒にいる時間が減ってしまったので、こっそりと執務室から抜け出しハンナを探していた。
「母様。どうかされましたか? また抜けだしてきたわけじゃありませんよね?」
うっ---- もう6歳になる愛娘は私に対して厳しい目を向けてきた。無表情な顔で私を見るだなんてまるでハロルドね----
「あら、ハンナに会いたかったのよ。ハンナも母様に会いたかったでしょう?」
「いえ、わたくしには本があるからへいきです。早くもどってくださいませ。父様がおこりますよ?」
「あら、ハロルドなら大丈夫。何の本を読んでいるの?」
「しかたないですね。これです----」
歴史の本? また難しい本を読んでるわね、何でこんなにハロルドに似たのかしら。私のDNAはどこに消えたの?
小さい頃に聞かせた親指姫の話も気に入っていたし、どうしてなのかしら?
「そ、そう---- ハンナは勉強家ね。偉いわねえ」
「わたくしは勉強がすきです。しょうらいはジンバ先生のようになりたいです」
「ジンバ先生? ハンナはジンバ先生が好きなのね。それは母様も嬉しいわ」
「はあ、母様は勉強しなくても頭がよかったとききましたわ。何でそんなに勉強ができるのに変なものがたりばかりよんでいたのです? 母様はわたくしにまじょやひめの話ばかりおしえてくださいましたよね?」
------ 自分の子に変な物語と言われるとは。
何て返したら良いかしらね? こんな時はどうすれば良いのかしら?
拙い記憶から探す。
ああ、反抗期ってやつかしら? あまり構いすぎてもダメだし放っておきすぎてもダメなのよね?
確か愛情を子供が感じてないからと書かれていたかしら? 確かに最近忙しくてハンナと一緒にいてあげられなかったし、寂しかったのかしらね?
「ふふ、じゃあ今日は新しい物語を話してあげましょう、ハンナの横に座っても良いかしら?」
「は、はあ----」
ハロルドの若かった頃の返事に似ていて笑ってしまいそうになったが、地面にお尻をつけてハンナの顔を覗き見た。無表情なのは変わらないままだが、少しだけ話を期待しているかのように無言で私を見てくる。
「今日はね、赤ずきんちゃんの話をしましょう。赤ずきんはねお婆さんと二人暮らしでした------ 悪いオオカミがいなくなって、お婆さんも赤ずきんも安心しました。ああ、怖かった、もう二度と、森の中で寄り道したりしないと心に決めたのでした。おしまい」
ふう、中々上手く話せたわね。満足したわ。
赤ずきんなら普通の童話だし大丈夫よね? ハンナはどう思ったかしら?
「ハンナ? 赤ずきんはどうだったかしら?」
ハンナは表情を変えないまま顔を伏せ始めた。
え? もしかして悲しくさせてしまったかしら?
狼が怖かったのかも---- どうしよう、これじゃ逆効果だわ。
ハンナを抱きしめようと手を伸ばすと、ハロルドが姿を現した。
「エレナ探したぞ、陛下が呼んでいる。ハンナもいたのか、何してたんだ?」
「ハンナに会いたくて来てしまったの。ハンナに新しい物語を聞かせたんだけど---- ハンナごめんなさい。狼が怖かったのね」
「狼? とりあえずエレナは執務室に行ってくれ。ハンナには俺がついていよう」
「ハンナごめんね、また夜に会いに行くわ。ハロルドお願いね?」
ハンナの頭を撫でてからハロルドに目で訴える。
---- ハロルド、頼んだわよ! 慰めてあげてね!
私はハロルドが頷くのを見てから、父様の待つ執務室へと向った。
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「ハンナどうした? 大丈夫か?」
エレナの外見にそっくりな愛娘は無表情のまま顔を伏せているようだ。
中身までエレナに似なくて良かったが、なんでこう俺に似て無表情になったんだか----
ハンナの横に腰を下ろし空を見上げる。
地面に座ったの何て久しぶりだな------ 昔はエレナと良く座ったもんだ。
「-------- 父様? 父様はなぜ母様とけっこんされたのですか?」
今日のハンナは変だな、何かあったのか?
「母様と父様が恋愛結婚なのはハンナも知っているだろう? 父様は母様を小さい頃から好きだったんだよ」
「わたくし、それが信じられません。どうして好きになったのですか?」
---- どうして? 困ったなあ。
どうしてとか理由はないんだよなあ---- いつも一緒にいたし気づいた頃には好きだったし----
「母様といつも一緒にいたからかな。ハンナどうしたんだ?」
しばらくハンナは無言でいたが、体を震わせると急に顔を上げて俺を見てきた。
幼い頃のエレナにそっくりで嬉しくなってしまう。しかしハンナが話始めるとそんな気持ちも萎んでしまった。
「母様はなぜあんなにも変なものがたりばかりわたくしに話してきかせるのです?! きょうなんて狼におそわれたお婆さんが飲みこまれた筈なのに生きてたんですよ?! 変わりに石をつめるだなんて、そのじてんで普通しぬじゃないですか?! なんで生きてあるけるんですか? そもそも飲み込むって何ですか? そんなに大きい狼がいるわけないです!」
------ エレナ---- よりによって赤ずきんとは。
まだいばら姫の方がまともだろうに。
「ハンナ? 物語だから色々都合の良い話になってるんだ。母様の話す物語が気に食わないのは父様も一緒だ。でもたまに、ソンシとかまともな話もあるんだよ?」
「そんなの嘘よ! まともなものがたりなんて聞いたことないわ! 小さいころは楽しかったけど、わたくしはもう6歳よ? 母様はわたくしのこと嫌いなのかしら?」
「いや、ハンナ。それは違うよ? 母様がおかしな物語を語るのはハンナを愛しているからだよ。外では普段の母様と全然違うだろ? 母様は好きな相手にしか変な物語は話さないんだ。父様は今でも母様の物語を楽しく聞いているよ?」
「父様が? どうして楽しく聞けるのですか?」
「それはねハンナ。母様が話す物語って気に食わないけど現実じゃないから文句も言えるし楽しいんだよ。ハンナが聞いた話は現実だったら怖すぎるだろ?」
「そ---- そうですわね。父様こわすぎるわ。それなら母様はわたくしを愛してるの?」
「そうだよ。母様も父様もハンナを愛してるよ。最近忙しくて一緒にいてやれず寂しくさせたな。今日は一緒に寝ようか?」
「ほんとよー! 父様だあいすき! 母様からまたへんなものがたりを教えて貰うわ!」
ハンナは俺へと抱きついてきて嬉しそうにしている。
------ はあ良かった。まさかエレナもハンナが物語を気に食わなく思っていたとは知らなかっただろうな。
これは俺の胸に秘めておくか。
それにしても嫌いだから話されていると思うだなんて---- 俺も最初の頃は嫌がらせかと思ったしな。
まあ、誤解も解けたしいいか。俺がフォローしておこう。とりあえずハーメルンの笛吹男の話は禁止しておくか。夜が怖くなったら困るしな。
それから一週間、ハンナはエレナから毎晩物語を教えて貰っていた。初めて鶴の恩返しという物語を聞いた俺は少しだけ切なくなったのは内緒だ。
ハンナはエレナから聞いた物語を最近では侍女に話すようになったようで、長年の侍女から酷い顔で相談された時には笑ってしまった。
長年の侍女は真剣な顔をしてこう伝えてきた。
---- ハンナ様がエレナ様に似てきた---- と。
読んで頂き有難う御座います!
今回は赤ずきんと鶴の恩返し。赤ずきんはリアルに考えると怖いですよね。でもさすが童話。楽しくて好きな話です。
鶴の恩返しは見てしまったから終わりを迎えましたが、見てなければ2人の生活は続いていたのでしょうか?見てはいけないと言われると気になるのが人間らしいですよね。




