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エレナとハロルドの結婚式

「ど、どうしたら良いのかしら----」


 結婚式に向けてプリンセスラインの白いウェディングドレスを着たまでは良かった。


 小さなティアラを頭に乗せて、クルクルと鏡の前で回っていると頭からティアラが落ちたのだ。


 伝統あるティアラが床に落ちたのを見て、エレナは慌てて拾い上げる。


 壊れた箇所がないか確認すると、宝石が一つ外れていた。宝石がはまっていたであろう場所には、丸く象った細工が施されている。


 ------ ああ、何で回ってしまったのかしら。


 私ってやっぱり愚かだわ---- 灰かぶり姫のようにはいかないわよね。


 どうしよう---- また母様に怒られるわ。


 しかも今日は結婚式当日。伝統あるティアラを壊したなんて知ったら発狂するわね----


 とりあえず宝石を見つけないといけないわ。探さなくちゃ。


 白いウェディングドレスを着てるのもお構いなしに、猫のように床へ四つん這いになって探しているとハロルドの声が聞こえた。


「エレナ、一体何してるんだ? 今日ぐらい大人しく出来ないのか?」


「ハロルド---- 私ね、クルクル回って壊しちゃったの----」


「クルクル回って壊す? どういう事だ?」


「これ--------」


 ハロルドが見えるように、ティアラを前に差し出した。ハロルドは良く分かっていないのか首を傾げている。


 ------ もう、気付いてよ。自分から言うのは辛過ぎるわ。でもこのままじゃ駄目よね。


 ハア。結婚式でもハロルドを呆れさせるなんて、私ってなんなのかしら----


 これじゃまるで裸の王様みたいじゃない。


 商人に愚かな人には見えない生地を見せられて、愚かだと思われたくない王様は見えないのに服を作って貰うのよね。


 目に見えない出来上がった服を着てパレードに出ると、子供から裸だって言われるのよ。


 自分が愚かだと認められないから、商人に騙されたのよね。


 ああ、私もこのままだと騙されてしまうわ----


 どうしたら良いのかしら----


「エレナ、どこが壊れてるんだ?」


 ------ ああ、憂鬱ね。ハロルド何て言うかしら。


 先日も怒らせたのに、今日もだなんて---- 折角の気分が台無しね。


「ここを見て? 丸く象ってあるでしょう? ここの宝石が一つないのよ----」


「エレナ、どこの宝石がないんだ? よおく考えてみろ。このティアラには宝石が何個ついてた?」


「えっ、そんなの三つ----」


「だろ? 三つついてるじゃないか。どこの宝石がないんだ?」


「えっ、丸く象ってある細工----」


「それは左右対象にある細工だろ」


 ------------


 -------- いや、今日だけは叫ばないわよ。


 ああ、本当私って---- 自分が嫌になってきたわ。


「エレナ、まずは立とうか。ウェディングドレスが汚れるぞ?」


 脱力しながらハロルドの手を取って、ゆっくりと立ち上がる。


 ハロルドの顔を恐る恐る見ると、柔らかく愛情ある表情で私を見ていた。ハロルドの気持ちが伝わってくるようで、私の胸は跳ね上がり音が煩くなっていく。


 私のドレスの裾を綺麗に直したハロルドは、息を吐くと私の前で片膝をついた。


「エレナ、今日から俺達は夫婦だ。だけどエレナにはちゃんと言葉にして言ってなかったな。ごめん。結婚式をする前にどうしても伝えたかった。エレナ---- 幼い頃から、ずっとエレナと一緒にいたいと思ってた。これからエレナは女王になる。きっと辛い事が多いと思うから俺がエレナを支えて見守りたい。だから、エレナ俺と結婚してくれないか? 俺はエレナを愛してる。エレナじゃないと駄目なんだ」


 -------- 言葉にできない。


 ハロルド---- こんな私でいいの? 後悔しない?


 私は後悔なんてしないわ。ハロルドといるのが幸せなんだもの----


「ハロルド---- 私で本当にいいの? 呆れたり嫌になったりしない?」


「エレナは馬鹿だな。エレナの全部が俺は好きなんだ。俺はエレナと一緒にいたいんだよ」


「ハロルド! 私もハロルドを愛してるわ!」


 感極まってハロルドへと抱きつく。


 ドレスなんて気にしないわ、ハロルドの温もりを感じたいもの------


 こうして私達は無事に結婚式を迎えて、お姉様の時のように幸せな表情を浮かべる事が出来た。


 父様と母様の顔が少し引きつっていたけど、何だったのかしら?


 まあ、いいわ。ハロルドと結婚出来て私は幸せだから。


 幸せな結婚式はあっという間に過ぎ、綺麗な青空は暗くなっていく。披露宴パーティーも無事に終わり、後はハロルドと一つになるだけ。


 ハロルドとの初夜に向けて、私は気合を入れながら浴槽へと体を沈めた。



 --- この日の事を踏まえ、後日長年の侍女は新米侍女へとこう伝えた。


 ------ エレナ様はウェディングドレスでさえシワを付けた方、ドレスを着た時は必ず近くから離れてはいけません。と



 ------------------------------------------------


 これは一体どうしたんだ?!


 式場に入る前にエレナへプロポーズしようと部屋へ来てみれば、エレナはウェディングドレスを着て猫の様に四つん這いになっている。


 今日は一体どうしたんだ? 


 想像していたのと違い過ぎる光景に後退りしそうになりながらも、四つん這いのエレナへ近づいた。


「エレナ、一体何してるんだ? 今日ぐらい大人しく出来ないのか?」


 エレナに問いかけて見ると、珍しく潮らしい雰囲気で話し始めた。


「ハロルド---- 私ね、クルクル回って壊しちゃったの----」


 ------ クルクル回って壊す? どう言う事だ? 言葉が足りな過ぎるだろ---- 全然分からない。


 エレナに何なのか聞くと、ティアラを俺の前に差し出してきた。


 ------ ティアラを壊したのか?! 何て馬鹿なんだ。


 どこが壊れているのか分からず、マジマジとティアラを見るが全然分からない。


 エレナを見ても、また妄想しているのか俺の目線に気づきもしないままコロコロと表情を変えている。


 このままじゃ埒が明かないな---- 


「エレナ、どこが壊れてるんだ?」


 俺の問いにエレナは何故かむくれ始めた。俺が何か変な事言ったか? と少し苛ついてると、エレナはティアラの細工に指を指して口を開いた。


「ここを見て? 丸く象ってあるでしょう? ここの宝石が一つないのよ----」


 はあ? 何を言ってるんだ?


「エレナ、どこの宝石がないんだ? よおく考えてみろ。このティアラには宝石が何個ついてた?」


「えっ、そんなの三つ----」


「だろ? 三つついてるじゃないか。どこの宝石がないんだ?」


「えっ、丸く象ってある細工----」


「それは左右対象にある細工だろ」


 ------- ああ、勘違いか。勘違いして焦って宝石を探してたんだな。まあエレナらしいっちゃ、エレナらしい----


「エレナ、まずは立とうか。ウェディングドレスが汚れるぞ?」


 エレナは俺の差し出した手に大人しく手を重ねてゆっくりと立ち上がった。俯いたまま落ち込むエレナを見て笑えてくる。


 結婚式とかエレナには関係無かったな。まあそこが可愛いか----


 ウェディングドレスがシワだらけなのを見て、余計に笑えてきたが仕方なく屈んでシワを出来るだけ取る。


 顔を上げると赤い顔をしたエレナを見て、俺は今しかないと片膝をついてエレナの手を握った。


「エレナ、今日から俺達は夫婦だ。だけどエレナにはちゃんと言葉にして言ってなかったな。ごめん。結婚式をする前にどうしても伝えたかった。エレナ---- 幼い頃から、ずっとエレナと一緒にいたいと思ってた。これからエレナは女王になる。きっと辛い事が多いと思うから俺がエレナを支えて見守りたい。だから、エレナ俺と結婚してくれないか? 俺はエレナを愛してる。エレナじゃないと駄目なんだ」


 緊張していた俺は、上手く言えなかった事に悔やみながらもエレナの返事を静かに待つ。すぐにエレナから答えが貰えず、少しだけ不安になってきた。


 ---- 俺じゃ駄目なのか? 


「ハロルド---- 私で本当にいいの? 呆れたり嫌になったりしない?」


 ああ、そっちか。良かった----


「エレナは馬鹿だな。エレナの全部が俺は好きなんだ。俺はエレナと一緒にいたいんだよ」


「ハロルド! 私もハロルドを愛してるわ!」


 エレナが勢いよく抱きついてきて、床につけた膝が少しだけ痛い。


 ------ 良かった。やっとエレナの横に並べる。


 長かった------ でもこれからもっと長い時間エレナといられる。今までの辛かった気持ちは、胸の中にしまっておこう。


 感極まったままのエレナを立たせると、ウェディングドレスはしわくちゃになり形が崩れてしまっていた。


 そんなドレスの状態なんか気にせず幸せそうに笑うエレナを見て、俺も幸せな気持ちでエレナを連れて式場へと向かう。


 結婚式と披露宴パーティーは何事もなく終えて、俺はエレナとの初夜に向けて部屋へと下がった。


 準備が終わり緊張した俺は、お酒を一口入れてからエレナの待つ寝室へと歩きだす。


 胸は痛いし喉は乾くしで体が何だかおかしい。エレナの部屋の前で立ち止まり、深く息を吐いて胸を落ち着かせてからようやく部屋へと入った。


 ろうそくだけの光が初夜を演出していて、何だかいやらしい。見慣れたソファにエレナの姿はなかった。


 ベッドの上で薄い布を被ったエレナを見つけると、胸がまた煩くなる。


 緊張しながらベッドの前に立つと、エレナの体のラインが布越しでもはっきりと分かり、俺は腰のラインを見て喉を鳴らした。


 ---- どうして被っているんだ? エレナも緊張しているのか?


 胸が更に煩くなったが、エレナに触れられる嬉しさの方が強く声を掛けないままゆっくりと布へ手を伸ばした。


 布を掴みどうしようか迷っていると、耳にエレナの息の音が微かに届く。


 ------ 流石の俺もこれは落ち込む。折角初めての夜なのに----


 思いきって布をめくると、体にぴったりと張り付いたナイトウェアを着てすやすやと眠るエレナの姿が現れた。


 -------- 落ち込んでも仕方ない---- これから毎日一緒に寝れるしな。それにしても、エレナはこのナイトウェアを良く着たな。体のラインが分かり過ぎだろ。


 俺、今日寝れるのか------


 時折寝返りをうつエレナにドキドキしながら、ハロルドは眠れず切ない初夜を過ごす羽目になった。




読んで頂き有難う御座います!

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