29. 私の物語 --完--
ブクマ有難う御座います!
最終話 エレナ視点になります!
------カァーン--- コォーン-------
見上げれば、どこまでも青く綺麗な空が広がる。
明るい日差しと青い空は、結婚式を迎えるのにまさにぴったり。
嬉しくなり、満面な笑顔をハロルドに向けた。
「おい、エレナ。早く行くぞ」
「うん、ハロルド。お姉様のドレス姿楽しみね!」
バレルシア王都にある荘厳な雰囲気の教会に入り、ハロルドと共に母様の横へと腰を下ろす。
正面にあるステンドグラスの窓からは光が入り、幻想的な空間はお姉様を祝福しているようだ。
隣に座る母様は、膝元でハンカチを握りしめ涙を堪えているのか、少しばかり体が震えている。母様の手にそっと手を重ねれば、寂しげな笑みを向けてくれた。
黒ちゃんやバレルシアの王と王妃が着席し、教会内が静けさに包まれると、立派な扉からマイヤー殿下が現れ主祭壇の前へと綺麗な姿勢で歩いていく。
髪を後ろに撫でつけ、襟に金の刺繍が施された白いタキシード姿は、どこから見ても素敵な王子様。
マイヤー殿下が主祭壇の前に辿り着き、入場の音楽が流れ出すと父様とお姉様が姿を現し、バージンロードをゆっくりと一歩ずつ歩き始めた。
真っ白の総レースで作られたウェディングドレスは、お姉様の素晴らしさを引き立たせ、美しい姿は理想のお姫様。
隣で歩く父様は威厳ある王ではなく、一人の父親としてお姉様を優しくエスコートしている。
素敵な王子様と美しいお姫様の結婚式は、穏やかな空気に包まれ、互いに微笑みあう二人は幸せそうだ。
隣にいるハロルドを見れば、私の肩を抱いて優しく微笑みながら未来の約束してくれる。
幸せな二人を見て、温かくなる胸に涙が抑えられず、目から一粒の涙を優しく落とした。
******
「エレナ! 母様は怒っているのですよ!」
城を抜け出し、ハロルドと城下に遊びに行って帰って来たら、部屋の前で母様が仁王立ちして私を待ち構えていた。
母様の般若のような顔に、何だか笑いたくなる。
仁王立ちに般若が混ざるなんて、面白すぎるわ。
「あら、母様。治水が上手くいっているか確認してきたのですよ? 貧民街が綺麗になったか、報告書だけでは分かりませんから」
「何を屁理屈言ってるんです! もうすぐ母親になるんですからきちんとなさい、ハロルド! 貴方も一緒に行かないでエレナを止めなさい!」
「アマリーリア陛下、申し訳ありません」
「また陛下などと! お義母様と呼びなさい! んっと全く貴方達は、頼みましたよ」
「はい、お義母様。以後気をつけます」
「わ、分かればいいのよ」
ハロルドにお義母様と呼ばれた母様は、表情を緩ませ嬉しそうに去って行った。
「エレナ、やっぱり怒られたな」
「でもハロルドのおかげで助かったわ、有難う」
お茶会の日からもう四年。
過ぎた日々はいつもと変わらないまま。
ふと、拙い記憶を思い浮かべる。
そうそう、ハロルドから好きと告白? された時、私の頭の中は真っ白になったのよ。
こんな都合の良い展開ってありなのかしら? 本の中でしか見たことないわ----- と思い、おもいっきり両頬を叩いたら凄く痛かった。
両頬を叩いた私に驚いたのか、ハロルドは私の両手を掴んで嘘じゃないって何回も言ったの。信じられなくて、ハロルドと一緒にいた女性が誰なのか聞いたら、従姉妹だと怒鳴られたわ。
勘違いした私は恥ずかしくて、その場に蹲ってしまったんだけど、ハロルドが柔らかく微笑んで好きだって言ってくれたから、やっと信じれたのよね。
ハロルドの想いが嬉しくて、暗く憂鬱だった気持ちはいつの間にか何処かへ消えていったわ。幸せな気持ちでハロルドに抱きしめられてると、忙しい事に今度は悲観してしまったの。
ハロルドと両想いなのに、他国に行くなんてって、ね。
どうしよう、ハロルドと一緒に逃ちゃおうかって考えながらお茶会に戻ったら、マイヤー殿下がお姉様にプロポーズしていたのよ。
急な出来事に驚いて、何だか拍子抜けしてしまった私は、お姉様の事すぐに祝福してあげられなかった。
今考えたら、私---- 自分の事ばかり考えていたわね。
ハロルドの事もお姉様の事も、何一つ考えてあげてなかった。勝手に突っ走って、相手の気持ちを聞かずに決めつけていたのよ。
何て愚かなのかしら、頭の緩い王家ってこの世界にもいるのかしら? じゃないわよね、私の事だったのよ。
あんなにもハロルドと近くにいたのに、互いの気持ちって言葉にしないと分からないし、伝わらないものなのね。
ちゃんとハロルドと、言葉を繋げば良かった。
自分の気持ちも、相手の気持ちも---- 言葉ってこんなにも必要なものだって、今の私なら分かるわ。
ああ、もう同じ過ちは繰り返さないわ。これからは一つ一つの言葉を、大事に繋いでいこうと思う。
言葉が繋いである物語のように、自分の物語を言葉で作っていくんだわ。
自分の言葉で感情や想いを伝えて、ハロルドの想いも言葉で貰えたら、それは私だけの物語。
何でも良いの、何か言葉でハロルドに私の気持ちを残したい。
私は、ハロルドの言葉を全て覚えていたいわ。
「エレナ? どうした? また良からぬ事を考えているのか?」
ハロルドの言葉に嬉しくなる。
いつもの問いに、私はいつもの言葉で返す。
「ううん、良からぬ事じゃなくて、良い事を考えていたのよ?」
「------ 今度は何なんだ?」
ハロルドの訝しげな表情は、本当変わらない。
今回は魔女は出てこないし、怖い母親もいないから安心して?
私の話を聞いたら、ハロルドは実に気に食わないって言うかしら?
何なんだとか、そもそもとか言うかしらね?
だってこれは私の物語。ハロルドが登場するのよ?
自分にそもそもって言うわけないわよね。きっと、初めて褒めてくれる筈。
私は期待しながらハロルドに言葉にして伝える。
「それはね、私の物語なのよ。ハロルドもちゃんと登場しているの」
詳しく説明すれば、顎に手を当ててハロルドが考え始めた。
------ もう、何で考えるのかしら? これだと当分口を開かないわね。
新しいお茶を淹れる為、ソファから立ち上がるとワゴンへと向かう。今日は東方の国のお茶。懐かしい匂いに、心が安らぐ。
ハロルドの前にお茶を置き、私はカップを手にしたままソファへと腰を下ろした。
温かなお茶を飲み込んで、ゆっくりと息を吐く。
---- もう、ハロルドも座ればいいのに----
「エレナ?」
「なあに? そもそもとか言わないでよ?」
「エレナの話を聞くに、私の物語っておかしくないか?」
------- ??
思ってた答えと違うわ--- 説明が足りなかったかしら?
「な、なんで? 私の物語でしょ? ハロルドには分からないの? 説明が足りない?」
「ああ、俺には分からないな。説明は十分だ、珍しく良く分かった」
「じゃあ何でよ! ああ、本当思うようにいかないわね、ハロルドによく考えたなって、褒めてもらう筈だったのに-----」
ああ、悲しいわ---- 何で思うように返ってこないのかしら?
私じゃやっぱり、物語に出てくるようなヒロインにはなれないし、物足りないのかしら。何だか切ないわね。
私ってやっぱりダメね、こんなんじゃハロルドに飽きられちゃうわ-----
「------- エレナ。何でエレナの物語なんだ? よく考えてみろ。何でエレナだけの話になってるんだ? そもそも、私の、が間違っているだろ。俺も出てくるし、子供だってこれから生まれる。それなら俺達の物語なんじゃないのか?」
俺達----?
「ど、どう言う事? 俺達って事は、私達?」
「ああ、そうだ。二人の言葉を繋ぐんだろ? それならエレナだけじゃおかしいだろ。それに、子供にだって言葉を伝えていくんだろ?」
「ハロルド! 私が愚かだったわ、でも嬉しい---- 大好きよ! 愛してるわ!」
今日もテリージア城にエレナの声は響き渡る。
王や王妃、円卓メンバー達にもエレナの声は届き、皆笑顔で耳を傾けていた。
これから始まる三人の物語---- 結末はどうなるのでしょう。
童話のお姫様のように、きっと幸せなのでしょうね。
最後まで読んで頂き有難う御座います!
初めての連載で、完結まで書けました。
最後はエレナの物語。
一人一人の物語があるという言葉を、昔本で読んだ時、自分の生き方を見直したものです----
後日、エレナとハロルドの後日談や、アリステア視点を更新する予定です。楽しみにしていて下さると嬉しいです!
またお会いできる日を、、、
有難う御座いました!
光政




