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27.どうしたらいいの。 --救い--

ブクマ、評価頂き有り難う御座います!


今回は

ハロルド→エレナ視点です。

 

 ------ 一体、何なんだ! ハロルドは叫びたかった。


 アリステア殿下に会いにいく為、泣き止んだエレナと手を繋いでいる。


 それはいつもと変わらないのだが、エレナの事が理解出来ない。


 目の周りを腫らしたエレナが痛々しく、指で目元を触ろうとしたら、何故かエレナに拒絶された。


 何が起きたか分からず、声を掛けてみるものの返事はなく、唯々俺から顔を背けるだけ。


 背ける顔を覗き込んでも、俺を見返してこなかった。


 暗い穴に落ちた俺は、辛くなる前にエレナから離れようと立ち上がると、拒絶した筈のエレナが俺の服を引っ張った。


 お姉様のところへ連れて行ってと、お願いされて今に至るのだが------


 ------ 女って分からない。いや、エレナが難しいのか?


 俺の手を握りつつも、無言のエレナに何だか苛立ちが募る。


 手は繋ぐのに、顔は合わせないのか---- 一体何なんだ?


 ダガリー王から、他国に嫁げと言われたんだよな---- エレナはそれで泣いていたし、だからおかしくなったんだろうか?


 まあ、俺も考えが甘かった---- こんなに早く動かれるとは、全くの想定外だ。


 まだ先の事だと高を括っていたのが、そもそも間違いだったな。


 エレナが自国にとってどれほど利益があるのか、早く纏めなければならない。他国へ婚姻の申し込みが送られたら、エレナと近くにはいれなくなるし、婚姻を望むことさえ出来なくなる。


 ------ 悔しさと遣り切れない思いに、心が潰されそうだ。自分の未熟さが嫌になる。

 

 とりあえずは、父様に相談しなくては----


 期限が分からないのが一番の難点だな、明日という事はないだろうが、それさえも分からない。


 エレナは、俺にとって唯一の望み。


 エレナが居なくなるなんて無理だし、ずっと一緒にいたい。 


 不安やエレナへの想いが湧き上がり、胸が締め付けられて悲鳴を上げる。


 このまま、どこかに二人で行ってしまおうか。


 お金ならあるし、ひっそりと二人で暮らすのも良いかもしれない。二人きりで過ごせるなら、国を超えてもいいな。


 エレナが居なくなるぐらいなら------


 俺はエレナを連れ出そう。



 黒い感情を奥深くに沈め、アリステア殿下の部屋に着いたのでエレナに声を掛けた。


「エレナ、大丈夫か?」


「------ ん。一緒にいてくれる?」


「----------- いいよ」


「あ、りがと」


 はにかむエレナの顔を見て、やはり手放せないと強く思う。


 連れ出すと言ったら、エレナはどう思うだろうか? 


 俺を嫌がるだろうか?

 それとも一緒に行きたいと、喜んでくれるだろうか?


 エレナは俺をどう思ってるんだ?



 ------ 自分に問いかけても無駄だな。



 答えは、エレナしか持っていないんだから------




 カチャ、と扉が開く音に気づき、我に帰る


 出てきた侍女に声を掛けると、アリステア殿下は部屋ではなく庭にいると教えて貰い、再びエレナを連れて歩き出す。


 屋外に出て庭に近づいていくと、無言だったエレナが急に声を上げた。


 何だ? と思いながらエレナへ振り返ると、何やら目を見開き一点を見つめている。


 どうしたんだ? エレナの様子が何やらおかしい。


 気になった俺は、眉間にシワを寄せたままエレナの視線を辿っていくと、マイヤー殿下とアリステア殿下がガゼボで抱き合っていた。


 -------- なっ、一体何が起きたんだ? 


 期待していた筈の光景であるのに、喜ぶよりも疑ってしまう。慰めているとしても、二人の距離が近過ぎて恋人にしか見えない。


 ---- マイヤー殿下は、アリステア殿下に心動かされていなかった筈。いつの間に抱き合う仲にまで発展したんだ?


 あいつとエレナが対峙してる時、アリステア殿下を連れ出してくれていたが------ その時だろうか?


 俺もエレナと同じく、立ち止まったまま二人を見つめていた。


 するとアリステア殿下が俺達に気付いたのか、慌てたようにマイヤー殿下から体を離し立ち上がる。


 マイヤー殿下はその様子に驚いていたようだが、俺達を見つけると穏やか表情で手招きをしてきた。


 ------ 今日は、分からないことだらけだな。


 何だか試練を与えられた気分だ。

 マイヤー殿下の笑みが憎らしく感じるな。


 長く息を吐き出すと、少しだけ気持ちが落ち着いてくる。


 ------ 事情を聞く為にも、二人の所に行くか。


 俺はエレナの手を強く握ると、ようやく足を動かした。




 ------------------------------------------------



 な、何て事かしら? 



 ------ 何で抱き合っているの?!



 ガゼボで熱く抱きしめ合う二人を見て、今までなら歓喜の声を上げる筈なのに、羨ましいとしか何故か思わない。


 ハロルドを好きだと自覚してから、見慣れている筈のハロルドの顔が恥ずかしくて見れなくなった。


 ハロルドに目元を指で触られそうになった時には、意識しすぎて拒絶までする始末。


 あぁ------ 気付きたくなかったわ。自分が嫌い。


 何だかハロルドが格好良く見えるのよ、不思議よね。


 ------ 恋ってこういう事なのかしら? 初めてでよく分からないわ。


 拙い記憶を探るが、今まで経験した事のない気持ちに少しだけ怯えてしまう。


 ハロルドには好きな人がいるし、このままだと確実に離れ離れになる。


 ----- 人魚姫の悲しみが今なら理解できるわ。


 ただ悲しかった訳じゃないのね。

 胸の奥にある小さな希望が、胸をより痛くするんだわ------ 


 別れのキスをした時、王子の寝言(奥さん名前)を聞いてどう思ったの?


 小さな希望は消えた? 


 私が助けたのよって、叫びたかった?


 舌を切ってまで足を得たのよね? 王子に会えても、気持ちを伝える為の声がないなんて------ どちらもあったらと、最後は思ったのかしら----


 人魚姫は泡になるけど------ 最後の終わりは救いだったと思う。


 もし王子を殺したとしても、生き続ける方が苦しかったわよね。


 罪に悩む事も、王子を想いながら自分を抑える事もしなくていいもの。


 私も泡になりたい------


 この高鳴る胸や、一緒にいて欲しいと思う気持ちをどうしたら無くせるの? ------ 苦しいし、分からないわ。


 自分の気持ちに、重い蓋を乗せようとしても無理なの。隙間から想いが漏れて、ハロルドと一緒にいる小さな希望が無くならないのよ。


 私、どうしたら良いの------ 


 遠い青い空を見つめていると、繋いでいる手が痛くなりハロルドが動き出した。


「昨日は大変だったね」


 マイヤー殿下が、私とハロルドに座るよう促した。


 何だかお姉様の顔が見れず、ハロルドの横に俯いたまま椅子に座る。誰も口を開かず、空気が重く感じた。


「エレナ----」


 お姉様の声が聞こえて、体が小さく震える。


 ------ お姉様に謝りたい。でも何て言ったらいいの? またお姉様の気持ちを無視してしまったら?


 言葉を口にするのが、こんなに難しいなんて------


「エレナ、母様から話しを聞いたわ」


「母様? 私、お姉様にあんな風に言わせるつもりじゃなかったの。幸せになって欲しかっただけ---- お姉様の気持ちを考えてなかったわ。本当にごめんなさい」


「------------」


 お姉様の言葉が返ってこない------

 そうよね、私なら許さないかもしれないわ。


 ------ 怒って当然よね。


 俯いたまま、スカートを強く掴んでいるとハロルドが手を握ってくれた。


「エレナに何て言ったらいいか---- でもこれだけは言わせて欲しいの。私の為に有難うエレナ」


 お姉様の言葉に驚き、顔を上げる。


 お姉様は、目に涙を浮かべて微笑んだまま私を見ていた。


 穏やかな笑顔を浮かべるお姉様を見るのは久しぶりで、私の目からも涙が溢れる。



「私ね、今心が凄く落ち着いているのよ。昨日までは違ったのよ? ウォルフ様の事------ 本当は結婚するのが不安だった。我慢すればする程、とても辛かったわ。あのまま結婚していたらと思うと------ 今は怖く思うのよ。エレナ---- 本当は駄目な事だけど、お礼を言わせて? 有難うエレナ、大好きよ」


「お、ねえ様ー」


 お姉様に抱きしめられて、私もお姉様を強く抱きしめた。嬉しい筈なのに涙が止まらず、息も苦しい。


「わ、たしもー、お姉さまがぁだ、いすきぃ」


「知ってますよ。私の可愛い妹ですから」


 お姉様の胸元は柔らかく、日が傾くまでお姉様は私を抱きしめてくれた。




読んで頂き有難う御座います!


今回は、以前あまり書き込めなかった人魚姫にしました。


私の好きな話です。本当はナイチンゲールと薔薇で書いてたのですが、愛の種類が違うと気づき、人魚姫で書き直しました。笑。


ここまで読んで頂けて嬉しいです。

もうすぐ終わりなのが、何だか切ないです。


完結したら、エレナとハロルドの幼い時や後日談をちょこっとあげる予定です。


もう少しだけお付き合いと、応援宜しくお願いします!


感想もお待ちしてます。


皆様お体に気をつけて、ご自愛下さい。

大変な時ですが、乗り越えていきましょう!

光政


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