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22.出撃しますわ! --どちらか--

ブクマ有難う御座います!


今回は、エレナ視点の後、マイヤー殿下視点になります!

 マイヤー殿下にエスコートされて、パーティー会場の中に足を踏み入れれば、シャンデリアが輝く煌びやかな会場と、華々しく着飾った人々の姿が目に映る。


 マリーアントワネットのお城のような絢爛さに、自分の家でありながらも、胸が高鳴る。


 ------ あの時代に生まれなくて良かった。あの髪型はちょっと出来ないわね。そういえば、アントワネットて、砂糖が高級って知らなかったのよね。知らないって、怖いわ。


「流石は第一王女である、アリステア殿下の誕生日パーティーですね」


 マイヤー殿下の言葉に、胸の高鳴りを抑えながら、鍛え上げられた表情で頷き返す。


 マイヤー殿下は、普段と違う私に目を細めてゆっくりと歩みを進めた。私達が歩いていくと、近くにいる女性から小さな悲鳴が聞こえ始める。


 ------ マイヤー殿下と黒ちゃんを見て、皆目を輝かせてるわね。


 マイヤー殿下と私に続き、一人で後ろを歩く黒ちゃんへ人が集まり始めた為、気持ち早足でその場から離れるように歩いて行く。


 私は、ハロルド、侍女長、副隊長の姿を探すべく会場内をゆっくりと見回した。


 ------ 庭師長は誕生日パーティーには参加出来ない変わりに、何処かで見てると言っていたけど、何処にいるのかしら?


「アリステア殿下の御入場です!」


 音と共に現れたお姉様は、宝石が散りばめられた黄色のドレスに身を包み、優雅にエスコートされている。

 あいつの蕩けた表情に腹が立つが、お姉様は真っ直ぐ前を向き、美しい所作で歩く姿は素晴らしいとしか言えない。


 父様の一言がフロアに響き渡ると、パーティーが始まりダンス曲が流れ出した。


「エレナ殿下、私と踊って頂けますか?」


「私で良ければ、喜んで」


 マイヤー殿下との身長差に緊張しつつも、思ったよりも踊りやすいリードに嬉しくなる。ハロルドと踊る事が多い為、他の人とはリズムを崩しやすいのだが、マイヤー殿下とは楽しく踊る事が出来た。


 ------ マイヤー殿下が、お姉様を気に入ってくれたら良かったのに。でも、強要は出来ないわよね---


 チラリとあいつとお姉様のダンスを見てみれば、明らかに温度差が感じられる。


 ダンスに喜びながらリードするあいつと、強引なリードに気を置けないお姉様の姿は、遠くで見ていても痛々しい----


 近くで踊る母様も同じ事を感じているのか、父様そっちのけで、あいつを睨みつけている。


 ------ 早くチャンスが来ないかしらね? 取り敢えずダンスが終わるまでは待たないと---- ああ、焦れったいわ。


 マイヤー殿下と共に黒ちゃんの元へ向かうと、黒ちゃんは王子モードで女性達の相手をしていた。


 可笑しく思いながらマイヤー殿下と顔を見合わせた私は、少し離れた場所で侍女長からドリンクを受け取ると、壁際に体を寄せる。


「エレナ殿下。有力貴族と警備にあたっている騎士達には根回しが済んでおります。皆、いつ起きるのかソワソワしておりますが、心配はありません。それではご武運を----」


「有難う。副隊長にも宜しくね」


 優しく微笑む侍女長が去ると同時に、会場内の人を見ていけば、チラチラと私に目線を寄こす者がいるのに気付く。


 ----- 根回しは大丈夫なようね。それにしても、あいつ何曲踊るつもりかしら?


 ダンス曲が終わったにも関わらず、ダンスフロアから出ないままお姉様と向き合うあいつの姿を見て、ハァっと息を吐き出す。


 ------ 次で三曲目よね? お姉様大丈夫かしら?


 再びダンス曲と共に踊りだした二人を見ていると、お姉様の顔色が徐々に悪くなり、表情は変わらないが額には薄らと汗が張り付いている。


「やばいな。足を挫いてるかもしれない」


 マイヤー殿下の言葉を聞いて、お姉様の足元に注意して見れば、確かに動きが片足だけ鈍く、強引なリードにどうにか耐えているようだ。


「凄いな。痛いだろうに、表情を変えないなんて----」


 マイヤー殿下の呟きが聞こえると、ダンス曲が終わり安堵したが、あいつは何も気付いてないのか、その場から動こうとしない。


 私は堪らずに動き出すと、後ろにいたはずのマイヤー殿下が私を追い越し、駆け足をするようにお姉様へと近づいていく。


 私が追いついた時には、あいつと対峙したマイヤー殿下は、お姉様の方へと手を差し出していた。


 ------ 凄いわ。マイヤー殿下の動く速さに驚いたけど、まるで白馬に乗った王子の様だわ。何て嬉しい誤算なのかしら!


「アリステア殿下、私とテラスで語らいませんか?」


 穏やか表情を浮かべるマイヤー殿下に、お姉様は少しだけ顔色を良くし、差し出された手に自身の手を重ねるよう動かすと、あいつが急に喚き始めた。


「アリス! 何度言えば分かるんだ?! お前は私の婚約者だぞ。それにマイヤー殿下、アリスに声を掛けるのは止めて頂きたい。婚約者のいる前で失礼だ!」


「それは、婚約者だと気付かず失礼致しました。ですが、アリステア殿下は足を痛めているご様子。それにも気づかず踊り続けるだなんて、婚約者のする事とは思えませんね」


「な、何?! アリスが足を? 何故気づいた? 女性の足を見るだなんて失礼な奴だ、私達に構わないで頂きたい。アリスお前は何て分からない女なんだ、ほら行くぞ」


 お姉様の手を掴もうとするあいつの手を、マイヤー殿下が振り払う。お姉様はマイヤー殿下の行動に驚きが隠せないようで、鍛えられた表情を崩し目を見開いていた。


 ----- どうしよう、素敵すぎる。マイヤー殿下の見た目で、こんな風にされたら女性は惚れるわ。でもどうしたのかしら? 


 ----- それにしても---- あいつ、本当なんなのかしら。

 私のこめかみには、青い筋がうっすらと浮かび上がる。


「君は---- 女性を何だと思っているんだ。失礼なのは君の方だよ、パーティーで騒ぐだなんて子供のようだな、アリステア殿下歩けるかい?」


 マイヤー殿下は、お姉様の肩を抱きしめて歩き始めた。お姉様は涙を堪えているのか、無言のままマイヤー殿下に体寄せて震えている。


「アリス! そんな浮気を俺の前でするなんて、何て淫乱なんだ! 今なら許してやるから早く戻ってこい!」


 ------ はあ? 


 こめかみに浮かび上がった青い筋は、音を立てて盛大に切れた。


 淫乱?! ふざけんじゃないわ!


「こーのー! マザコン! あんた煩いのよ!」


 お姉様に近づくあいつの脛を、思いっきり蹴り上げる!


 急に動いたからか、苛つきからなのか、ゼィゼィと息が上がるのもお構いなしに、扇子を取り出すと、尻餅をつくあいつを扇子で指して火のように攻め立てた。


 風と林なんか気にしてられないわ!


「あんたねー、お姉様を泣かせるなんてクソ中のクソなのよ! 私知ってるのよ?! あんたがバブバブの一人だって事! 子守唄を歌ってもらうのがお好きなようじゃない。しかもママって、あんたいい歳してママって呼んでるんじゃあないわよ! それにお姉様が淫乱ですってぇ?! あんたはどうなのよ! 四十五歳と庭で何してたのよ!」


「な、どうしてそれを---- いきなり無礼だぞ!」


 私は周りにも聞こえるよう、意図して声を張り上げる。根回しした有力貴族が他の貴族達も連れて、私達の周りを囲ってくれたようだ。


 人の話し声が途切れる事なく、ザワザワと私の耳にも届き始める。


「あんたこそ、無礼よ、何様なのよ! お姉様の婚約者にあんたなんか似合わないわ! 婚約破棄なさい! 慰謝料が欲しいなら、私がたっぷり払って差し上げますわ!」


「な、貴様! 何を勝手に話している! 父様に言いつけてやるぞ!」


 あいつは体を起こすと、勢いよく私へと向かってくる。あいつの拳が目に入ったので、思いっきり顔に力を入れて、歯を食いしばり目を瞑った。


「そこまでです。ウォルフ卿」


 副隊長の声で目を開けると、副隊長とハロルドが私の前に立っている。二人の肩越しから周りを見れば、何人かの騎士が待機しており、侍女長の姿も確認出来た。


「な、なにする! 騎士まで----- 何て失礼なんだ! しかもハロルド、お前は何だ? 俺に敬意を払うべきだろう!」


 あいつが、ハロルドへと歩き出し問い詰める。


 副隊長が横にいるからか、手は出してこないが顔に浮かぶ表情は、言葉に出来ない程、普段からかけ離れてる。


「アリステア殿下を泣かせる方に、敬意は払えませんね、引き下がっては如何ですか? あまりにも自重されないようですから」


「なんだと? 俺を誰だと思っている? 未来の王配であるぞ、国のトップにそんな口を聞くなど無礼だ! 騎士達、こいつを捕まえろ!」


 ------ 軽々しく王配なんて、言うんじゃないわよ!


 ああ、もう本当ムカつくわ、思う通りに進まないわね!


「ウォルフ!」


 前に出ようと足を動かしかけた時、凛としながらも冷えた声が響き渡る。あいつは動きを止めて、床にしゃがみ込みだした。


 背筋を伸ばし、人集りの中から冷ややかな表情で現れたあいつの母親は、あいつを無言のまま見つめた。



 ------ 味方か、ガイアなのか---



 私がアントワネットなら、この後確実に断罪されるわね。


 胸の音を激しくさせたまま、心の中で祈った。




 ------------------------------------




 入場を知らせる声が聞こえた為、エレナ殿下をエスコートし夜会会場へと足を踏み入れる。豪華なシャンデリアの輝きに目を痛くしながらも、華々しく飾られた人達が私達に振り向いた為、表情を引き締めた。


 ------ それにしても、先程のハロルド君は面白くなかったな。仕返し出来たと思っていたけど、中々難しい。


 エレナ殿下を部屋まで迎えに行った際、ハロルド君の表情は、最初私に見せていた感情のない表情だった。


 また仕返しを考えるか---- 巡らせながらもエレナ殿下の顔を伺えば、王女らしい表情で前を向いて歩いている。


 私がパーティーの出来栄えを褒め称えると、エレナ殿下は表情を変えないまま頷きで返してきた。


 ------ こういう面を見ると、流石と言えるな。叫ぶ姿が嘘のようだ。


 女性達の悲鳴をやり過ごしていると、後ろを歩くレオンに人が集まり出したのを見て、その場からエレナ殿下を連れて離れる。


 どの国でも然程変わらないな---- 見た目で女性は群がるものだと、つくづく思いながら歩いていると、アリステア殿下の入場を知らせる声が耳に届いた。


「アリステア殿下の御入場です!」


 噂の婚約者にエスコートされ、美しい所作で歩かれる姿は、素晴らしいの一言に尽きる。


 美しさを増長するように、黄色のドレスには宝石が散りばめられ、アリステア殿下から目が離せない。


 ---- やはり美しいな。でも心は動かない。


 ダンス曲が耳に届き、意識をエレナ殿下に戻せば、エレナ殿下もアリステア殿下の美しさに見惚れているようだ。


 ファーストダンスをエレナ殿下に申し込み、ダンスフロアで踊ってみれば、基礎をしっかり身につけてる様で踊りやすい。


 ハロルド君の顔が見たくなって、目だけで周りを見ていくが、見つけられず残念だ。


 ダンスが終わりレオンの様子を見にいけば、珍しく王子らしい振る舞いで、女性を相手している姿を見て、恥ずかしながらも感激してしまう。


 弟の成長に喜びつつ、エレナ殿下と顔を見合わせた私は、レオンから少し離れた場所でドリンクを受け取り、エレナ殿下と共に壁際に身を寄せた。


 エレナ殿下は、ドリンクを渡してきた侍女長と何やら小声で話し始めたので、気に留めずダンスフロアへと視線を動かす。


 噂の婚約者と踊る、アリステア殿下の姿勢の美しさ、表情の動きに再び目を奪われた。


 ----- 全くブレがないなんて、身を砕く程の努力を感じさせるな。


 表情や所作の一つ一つに、彼女の生き方が見えてくるようで、今までこんな女性がいたかと、自身に問い始めた。


 今まで見てきた女性は皆、自身を着飾る事ばかりで、礼儀は出来ていても、所作や姿勢が美しいと思える程精錬された様子はない。


 ------ アリステア殿下は、自身に厳しいのだな。


 アリステア殿下を見つめていると、先程よりほんの少しだけ違和感を感じる。よくよく見てみれば顔色が先程と違い、額には薄らと汗が張り付いていた。


 足の動きが鈍くなり、少しだけバランスを崩しかけたが、アリステア殿下は何事もなかったかのように、直ぐに立て直している。


「やばいな。足を挫いてるかもしれない」


 呟きながらも、アリステア殿下から目を離せずにいると、アリステア殿下の表情や姿勢が崩れない事に気付き、胸が大きな音を立てだす。


「凄いな。痛いだろうに、表情を変えないなんて----」


 ダンス曲が終わり、安堵しながらも様子を見ていれば、噂の婚約者は動き出す気配が全く無く、アリステア殿下も微笑みながら立ったまま。


 何故笑ってられる? どうしてもう踊れないと言わないんだ---


- 自分の胸の中にドロっとした感情が一気に流れ出す。


 ----- しかも話に聞いていた通り、最低の婚約者のようだ。


 気付いた時には噂の婚約者と対峙し、アリステア殿下に手を差し出していた。


「アリステア殿下、私とテラスで語らいませんか?」


 瞳を揺らすアリステア殿下に微笑みながら、私の手に手を添えるよう促す。


 アリステア殿下が、何処かホッとした様子を私に見せたと思うと、噂の婚約者が喚き始めた。


「アリス! 何度言えば分かるんだ?! お前は私の婚約者だぞ。それにマイヤー殿下、アリスに声を掛けるのは止めて頂きたい。婚約者のいる前で失礼だ!」


 アリステア殿下は、表情を変えないまま瞳だけを揺らしている。


 ------ 私に助けてと、何故言わない? 瞳だけ揺らして、表情にも表さないなんて、何て女性なんだ。


 私なら、甘やかして、優しくして、大切にするのに----


 胸の中のドロっとした感情は、先程より量を増やし胸を苦しくさせた。


 アリステア殿下を抱きしめたい衝動と、王族としての立場が心の中で激しく鬩ぎ合う。


 感情が乱れたまま噂の婚約者に言葉を返せば、私の言葉に更に喚き散らし、アリステア殿下の手を強引に掴もうとするのを見て、強く振り払った。


「君は女性を何だと思っているんだ。失礼なのは君だ。パーティーで騒ぐだなんて子供のようだな、アリステア殿下歩けるかい?」


 あいつの表情は怒りに溢れていたが、気にせずアリステア殿下の肩を抱きしめて、ゆっくりと歩き始めた。


「アリス! そんな浮気を俺の前でするなんて、何て淫乱なんだ! 今なら許してやるから早く戻ってこい!」


「こーのー! マザコン! あんた煩いのよ!」


 背後から騒がしい声が聞こえてきたが、アリステア殿下の小さな震えを感じ、振り向く事なく会場の外へと連れ出した。


 会場を出ると、待機していたであろう騎士に、部屋へと案内して貰う。


 会場を出たとたん、アリステア殿下は気が抜けたのか、力を無くしたように体を強く寄せてきたので、抱きしめるような形で部屋へと足を進めた。


 ------ 会場を出るまで耐えていたのか。一人で今まで戦って来たのだろう。誰かに甘えるなど、考えてもいないだろうな。


 部屋に入れば、直ぐにソファへと向かいアリステア殿下を抱いたまま腰を下ろす。


「もう、大丈夫。泣きたいのなら、泣けばいい。誰も見てないのだから」


 再び体が震え、小さな嗚咽を漏らし始めたアリステア殿下を優しく抱きしめて、背中を撫でた。


 ---- 何だか、ハロルド君の思い通りになったのは悔しいな。


 アリステア殿下を愛しむ自分に気付けば、止めるのはもう難しい。


 女王になると努力してきた女性を、どうすれば落とせるんだろうか---- 取り敢えず甘やかして、溶けさせてみせようか。


 アリステア殿下の頭に優しいキスを落として、震える体を強く抱きしめた。

読んで頂き有難う御座います!


今回の話はとても楽しく書かせて貰いました。


マリーアントワネットは、ケーキを食べれば良いじゃない?が有名ですが、実際はマリーアントワネットの言葉じゃなく、小説に書かれた言葉みたいですね。記述には、王女としか書かれていないみたいで、マリーアントワネットは、悲劇の人でもありますから、深く知ると考えさせられますね。



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― 新着の感想 ―
[良い点] いよいよクライマックスですかね、恋愛もそして断罪も盛り上がってきました。楽しみです。二人の王女のキャラもそれぞれ良いです。そして円卓会議の面々が好きですね。 [一言] いつも楽しく読んでま…
2020/04/17 10:52 退会済み
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