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21.私の幸せ? --神話--

ブクマ、有難う御座います!

「ハロルド、遂に明日よね---- 皆も大丈夫かしら?」


 明日への戦いに向けて、興奮しつつも何か不備はないか、頭の中を巡らせていく。


 ---- 母様は、あいつの母親と会って話してくれたようだけど、結局はっきりした言葉は貰えなかったのよね----


 母様は昨日、少し申し訳なさそうに私の部屋に来て、あいつの母親との会話を詳しく話してくれた。


 ---- 母様って以外と直球なのね、と自分を棚にあげて呟く。


 あいつがお姉様を泣かせていると聞いて、あいつの母親は動揺していたようだけど、婚約破棄については濁したみたいなのよね。


 まあ、旦那様である宰相様と相談したいだろうし、息子に嘆いてはいても、結局は可愛いのだろうと思う。


「何だか不安だわー。ガイアが来たらどうしよう----」


 ソファに深く座りながら、近くにあるクッションを胸元でギュッと強く抱きしめる。


「ガイア? また何だ?」


 ハロルドは、いつもの様に私の言葉に疑問を感じたようだ。チラリと表情を見れば、案の定眉間に皺が寄っている。


混沌(カオス)から生まれたガイアはね、子供を産むんだけど、怪物みたいな子が生まれるのよ。それを旦那様が地の底に閉じ込めるんだけど、ガイアはそれが辛くて、最後に産んだ息子クロノスに、鎌で旦那様へ復讐する様お願いするのね。クロノスは了承して、母の復讐を無事果たすと、神々の王になるんだけど、クロノスは自分の子であるゼウスと、今度は戦争を始めて負けるの。それで、ゼウスが今度神々の王になったと思ったら、ガイアが現れて、ガイアは最強の怪物を生むと、ゼウスに戦いを挑むのよ! まあ、言いたいのは、ガイアは可愛い息子の為に、孫へと戦いを挑むのよね。だからあいつの母親が、あいつとの戦いの後、更に戦いを挑んで来るかもって思ったの」


 いつもの様に、上手く説明出来た自分に満足して、ゆっくりと喉を潤す。

 ハロルドは、またポーズを取りながら考え始めたようで、全く口を開かない。


 ハロルドの言葉を待ちながら、新しいお茶を淹れる為立ち上がると、ノックの音が聞こえて来たので、そのまま扉へと向かった。


「こんにちは、エレナ殿下。今お邪魔しても大丈夫ですか?」


「あら、足を運んで下さって有難う御座います。ハロルドも居ますが、宜しいですわよ」


 マイヤー殿下が部屋に入ると、ソファに座って頂くよう促す。ハロルドは考える事を止めたのか、マイヤー殿下に挨拶を口にした。


 淹れたお茶を、マイヤー殿下の前に置くと、穏やかな笑みを向けてくれるのを見て、やっぱり素敵ねっと思う。


 私は、お姉様とマイヤー殿下が会ったと聞いてから、尋ねたかった事を問う為、急ぎ気味に口を開いた。


「そういえば、お姉様に会われたようですわね? 視察に行かれていたので、先日お聞き出来ませんでしたが、お会いになられて如何でしたか?」


「早速聞かれましたか。--- アリステア殿下と庭でお会いして、お話しをさせて頂きましたが、エレナ殿下が言う通り博識ある方でしたね。それにとても美しい方でした」


「そうでしょう? お姉様はとても美しいのです。頭も良くて、美しくて、心も綺麗なんですの! それで、マイヤー殿下はお姉様を気に入りました?」


 前屈みになるのを抑えきれず、マイヤー殿下に体を近づけると、マイヤー殿下は愉快そうに笑い出した。


 どうしたのかしら? と思っていると、マイヤー殿下は珍しく愉快顔をされて、髪をかき上げる。


「エレナ殿下は、やはり面白い方ですね。アリステア殿下の事は美しいとは思いますが、今はそれだけですね。私自身、今まで恋というのを経験してませんから、どうなるかは分かりませんが---- ハロルド君の方が恋の経験者なので、参考までに聞かせて貰いたいですね。どうすれば、相手に恋したと分かるのか教えて頂けますか?」


「--------- 人それぞれでしょう。私にはお答え出来ませんよ、マイヤー殿下」


 ------ え?! ハロルドって好きな人いたの?


 そんな素振り見せてなかったから、気にしてなかったけど、誰なのかしら? 私には秘密なの?


「エレナ、何も今は言わないからな。気にしないでくれ」


「おや? ハロルド君、君まさか--- 」


 体を震わせたマイヤー殿下は、小さく息を吐くと少し意地悪な表情をハロルドに見せている。


 ------ マイヤー殿下ってこういう顔もされるのね。それでも黒ちゃんと違って、胡散臭くないし、前よりも親しみを感じるわ。


「とりあえず、今日伺わせて頂いたのは、明日の誕生日パーティーの事です。エレナ殿下、明日は私にエスコートさせて頂けませんか?」


 柔らかく微笑まれながら、スマートな言い方に大人の余裕を感じさせる。何だか、自分が大人になった気がして、私も微笑みを返しながら問いに答えた。


「ハロルドにお願いするつもりでしたが、えぇ、是非にお願い致しますわ」


「は?」


「おや、ハロルド君。何か言いたいのかい?」


「いえ----」


 ハロルドがマイヤー殿下へ軽く睨むと、再びマイヤー殿下は意地悪そうな顔で、ハロルドの睨みを受けている。


 ------ いつの間に仲良くなったのかしら? ハロルドとそんなやり取りする人、今までいなかったわよね。


 ハロルドが何だか可愛く見えるわ。


 ハロルドとマイヤー殿下のやり取りは、しばらくの間続いた。


 私は、静かに二人を見守るよう見ていたが、飽きてきたなと思い始めると、二人の話が終わったのか、マイヤー殿下が立ち上がる。


「それではエレナ殿下。明日お迎えに上がります。ハロルド君もまた明日」


 マイヤー殿下が部屋から出て行くと同時に、ハロルドは私の手をいきなり掴みだしたので、体がハロルドの方へ引っ張られた。


「エレナ。俺のエスコートは嫌なのか?」


「え? そういう訳ではないけど----- 明日くらい別にいいでしょう? マイヤー殿下の為だし」


「--------- それなら、次はまた俺にエスコートさせてくれ」


 ゴニョゴニョとハロルドは何か呟いているが、何を言っているのかはっきり聞こえない。


 でも---- さっき恋がどうとか言ってたわよね? ハロルドは良いのかしら?


「ハロルドは、好きな人がいるんでしょう? だったら、私に付き合ってばかりじゃなくて、その好きな人をエスコートした方が良いんじゃない?」


「いや、エレナがいい------ エレナは違う人にされたいのか?」


 ------ んー、何か良く分からないわね。しかもハロルドが弱そうに話すの始めてかも---- 何て言ってあげたら良いのかしら? 違うわよ、なのか、ハロルドを思って、そうよ! と言うべきなのか。


 でも何だかハロルドの表情を見るに、懇願してるような雰囲気なのよね---- なんでかしら? あぁ、分からなくてモヤモヤするわ!


「あぁー、もうどっちでも良いわ! ハロルドが決めてよ!」


 声を張り上げた私に驚いたのか、ハロルドは頭を下げたが、少しして私を強く抱きしめた。しかも抱きしめる力が強くて、ハロルドの体が少し重たい。


 ------ どうして抱きしめるの? 全く分からないわ。


 ハロルドに、抱きしめられたまま、明日の誕生日パーティーに思いを馳せるよう、顔を天井へと向ける。


「ねぇ、ハロルド。明日、上手く行くかしら?」


 呟くようにハロルドに問うと、ハロルドは私から体を離し、真っ直ぐに私を見た。


 青紫の瞳---- 何だか吸い込まれそう----


「明日は、何かあっても俺がどうにかするから、心配するな」


 私は、ハロルドの答えに頷きながら、ありがとうっと言葉にして返えす。


 明日が終われば、私はこれからの事に追われるだろう。お姉様がどうするかによって、行く先は違えど今のままではいられない。


 女王になるにしろ、他国に嫁ぐとしてもきっと私は受け入れる。そう考えていると、お姉様の幸せを望むばかりで、自分の幸せって考えていなかった。


 何でだろう------ 多分、今の自分で十分満足しているし、幸せだと思ってる。


 家族と仲が良くて、街には自由に遊びに行き、何かを好きに楽しく開発して、ハロルドが近くにいる----


 そう考えたら、ハロルドはいつまで私と一緒にいてくれるのだろうか? 女王になったら、近くにいてくれると言うけど、他国に嫁げば? ハロルドは男性だから連れて行けない。


 いきなり自分の胸が小さく痛みだし、視界が歪む。


 私にとっての幸せって、ハロルドが近くにいる事なのかしら----


 でも、ハロルドには想う人がいるのよね、それは応援しないといけないわ。


 何故だか急に胸が苦しくなり、ハロルドの温かさを感じたくなって、思いっきりハロルドの体へと抱きついた。



 ------------------------------------



「ハロルド、遂に明日よね---- 皆も大丈夫かしら?」


 エレナの言葉は、今の自分の心境を読まれたように感じた。


 アリステア殿下と話をした時の、最後にアリステア殿下が見せた、哀しげな表情が頭から離れない。


 ------ 少し言い過ぎただろうか。エレナが帝王学を学んでいたの、知らなかったしな------


 ジンバ先生からエレナと共に学んでいた時、急に内容が難しくなった。エレナは何も疑問に思わないのか、スラスラと答えて行くのを見て、この歳でこんな難しいのを王族は学ぶのか? と思ったのを覚えている。

 まあ、後でジンバ先生に帝王学と聞いて、エレナの頭の良さを、強く実感したものだが------ アリステア殿下が、今まで女王に成るべく努力してきたのは、俺にだって分かる。


 ----- まあそうだよな。エレナって、何もしていなそうに見えるしな。街や領地には、間違いなく遊びに行くのだが、行った先で改善する所を見つけて、何か対策したり開発するのがいつもの流れ。エレナの発想は一体どこから出てくるのか、一緒に育ち同じ本を読んできたのに、全く分からない。


 何だかやる事はやったのに、勢いを失い小さく息を吐けば、エレナの呟きが耳に届いた。


「何だか不安だわー。ガイアが来たらどうしよう----」


「ガイア? また何だ?」


 また、知らない言葉が出たな。エレナの頭の中は、本当どうなっているんだ? 


 頭の中を覗きたい衝動が、久しぶりに駆け巡り出すと、エレナがいつものように説明し始めた。


 ---- 何だ? まずは言わせてもらいたい。どうやって混沌カオスから生まれるんだ? しかも神が怪物を生むか? そもそも息子に復讐を頼むなんて、そんな母親がいるとは----- しかも祖母になってから、怪物産んで、孫と戦うなんて怖すぎるだろ!


 ------ はあ、実に気に食わない話だな。

 しかもそんな話、あいつの母親からよく連想したな、全然違うじゃないか!


 いつもの様に、顎に手を当てて考えていると、マイヤー殿下が現れたのに気づいて、立ち上がる。


 マイヤー殿下に挨拶し腰を下ろせば、エレナが急に直球で、アリステア殿下の事をどう思ったのか、マイヤー殿下に問い始めた。


 俺は耳を傾けながらも、緩くなったお茶を口に入れる。エレナの物語は聞くと疲れるからな----- 目を瞑り、ゆっくりと息を整えていれば、マイヤー殿下の笑い声が聞こえだす。


 どうしたんだ? と思い、目を開けて二人の様子を確認する。別に変な様子もなく、そのまま見守る事にして、再びお茶を口に入れた。


「エレナ殿下は、やはり面白い方ですね。アリステア殿下の事は美しいとは思いますが、今はそれだけですね。私自身、今まで恋というのを経験してませんから、どうなるかは分かりませんが---- ハロルド君の方が恋の経験者なので、参考までに聞かせて貰いたいですね。どうすれば、相手に恋したと分かるのか教えて頂けますか?」


 飲みきっていないお茶が、口から溢れそうになったがどうにか耐える。


「--------- 人それぞれでしょう。私にはお答え出来ませんよ、マイヤー殿下」


 ------ 絶対遊んでるな、俺で。

 マイヤー殿下も、意外と人が悪い。そもそも、エレナの前で遊ぶなんて。


「エレナ、何も今は言わないからな。気にしないでくれ」


 俺の言葉に体を震わせるマイヤー殿下は、意地悪な表情をしている。一体、俺で遊んで何が楽しいんだ?


「とりあえず、今日伺わせて頂いたのは、明日の誕生日パーティーの事です。エレナ殿下、明日は私にエスコートさせて頂けませんか?」


 ---- おい? 今日は一体何なんだ?


「ハロルドにお願いするつもりでしたが、えぇ、是非にお願い致しますわ」


「は?」

 思わず言葉が出た。何でエレナをエスコートする必要があるんだ? エレナも何故受ける必要がある?


 マイヤー殿下を軽く睨むと、マイヤー殿下は愉快そうに目を細めて俺を見る。


 苛立ちを抑えながらも、嫌味をマイヤー殿下に言えば、心外だなっと言い返してくる。


 ------ 何が心外だ! 俺が言いたい!


 笑っていたマイヤー殿下は、俺とのやり取りに飽きたのか、エレナと俺に挨拶をすると、スマートに部屋から出て行った。


 エレナは微笑みながら、マイヤー殿下を見送っていたので、苛立ちが止まらず、俺を見るようにエレナの手を掴んだ。


「エレナ。俺のエスコートは嫌なのか?」


「え? そういう訳ではないけど----- 明日くらい別にいいでしょう? マイヤー殿下の為だし」


 何となく動揺するエレナに、次のエスコートは俺がする、とはっきり言えたが、俺以外とするなとか、俺と一緒にいて欲しい、といった俺の願望は声には出すものの、どんどんと小さくなっていく。


「ハロルドは、好きな人がいるんでしょう? だったら、私に付き合ってばかりじゃなくて、その好きな人をエスコートした方が良いんじゃない?」


「いや、エレナがいい------ エレナは違う人にされたいのか?」


 ------  マイヤー殿下のせいだ! どうしてこうなるんだ。それとも、エレナは気になってくれてる?


「あぁー、もうどっちでも良いわ! ハロルドが決めてよ!」


 ------ 俺なんかどっちでも良いのか----

 俺はエレナじゃないと嫌なのに。どうしたらエレナは、俺の気持ちに気づくんだ? 誰か教えてくれ!


 俺は堪らなくなって、エレナを強く抱きしめる。

 エレナの柔らかさに、心が落ち着いて行くが、代わりにエレナへの独占欲は強くなる。


 絶対、エレナを他の男になんか渡せない。何年一緒にいたと思うんだ? これからも隣にいるのは、俺だ!


「ねぇ、ハロルド。明日、上手く行くかしら?」


 エレナにしては、珍しく弱々しい声で呟いたので、体を離し、エレナの瞳を覗き込む。


 エレナのブルーダイヤの瞳は、少しだけ潤んで揺れていて、俺はエレナの不安を取り除くように、優しく言葉をかけた。


「明日は、何かあっても俺がどうにかするから、心配するな」


 ありがとうっと返すエレナは、いつもの様な自由な雰囲気ではなく、今まで見た事がない程、何だか儚く見える。


 何かを考えているのか、暫く無言のまま向き合っていたが、エレナの瞳が大きく揺れだし、涙を浮かべ始めたと思うと、勢いよく俺に体を預けて抱きついた。


 ------ エレナが、こんな風に泣く事があったか? ああいった顔で、弱く泣き始めるのは初めてだ。大概だらし無い顔か、怒り出して叫びながら泣くのは見た事あるが--- 一体どうしたのだろう?


 エレナを抱きしめながら、明日の事へ思いを馳せる。


 明日は必ず成功させないとな、俺の為にも----


 エレナの体温を熱く感じながら、慰める様に先程よりも優しく抱きしめた。



読んで頂き有難う御座います!


ギリシャ新話のガイアが登場です!


クロノスはガイアに頼まれて復讐した時、鎌(大鎌)で父のいちもつを切り、海に投げ飛ばすのですが、このいちもつから生まれたのが美の神、アフロディーテなんですよね。

クロノスは倒した父から、お前も子供にやられるぞ!と言われ、産まれた自分の子供が怖くて飲み込んでいくのですが、ゼウスだけは母が隠して育てたんですよ。ゼウスは、母に頼まれて父に吐き薬を飲ませると、上の兄弟達がクロノスから吐き出された訳ですが、その兄弟がポセイドンやハデスなんです。

その後クロノスvsゼウス兄弟で戦う事になり、ゼウスは母から言われて、ガイアが産んで地の底に閉じ込められた子供達に会いに行きます。そこで地の底から開放し、武器を貰うんですけど、貰った武器が、三叉槍(ポセイドンの武器)や最強と言われる雷と言われていますね!是非一度検索してみて下さい。凄く面白いです!


次は遂に夜会スタートです、頑張って早めにお届けしたいと思います。


良ければ☆評価宜しくお願いします!

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