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中学で告白できなかった初恋が国民的人気アイドルになっていた。泥酔して目を覚ましたら、なぜか隣で寝ていた!?  作者: 天月瞳


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9/12

第9話:私……君にとって、最高のヒロインですか?

映画の余韻に浸りながら、堂也はソファに腰を下ろし、胸の中で渦巻く様々な感情に身を委ねていた。


自分の作品が映像化された喜び。


悠花の圧倒的な演技に対する感動。


そして、言葉では言い表せないいくつかの複雑な感情。



「そうだ、悠花にメッセージを送ろう」


スマホを取り出し、文字を打つ手がふと止まった。


(迷惑にならないかな……)


しばらく迷ったあと、


(でも、一言だけなら大丈夫だよな)


そう自分に言い聞かせて送信した。


【今、見終わったよ。すごく良い演技だった】


【!】


【本当に?】


返事は堂也が思っていたよりもずっと早かった。


【うん。最高だったよ】


次の瞬間、スマホが鳴った。


「えっ?」


堂也は慌てて通話ボタンを押した。


「こんばんは~」


受話器越しに聞こえてきたのは、鈴の音のように澄んだ悠花の声。


けれど、何かを気遣うように、いつもより少しだけ声を潜めていた。


「こんばんは」


「お姉ちゃんがお風呂に入ってる間にこっそり電話してるから、少ししか話せないんだけど」


「そうなんだ」


まるで二人だけの秘密話をしているようで、堂也は胸の奥がくすぐったくなる。


「堂也、もう見終わった?」


「うん。全部観たよ」


「あのね……堂也」


「うん」


悠花は少しだけためらってから、小さな声で尋ねた。


「私……堂也にとって、最高のヒロインだった?」


「もちろん」


堂也は考える間もなく答えた。


悠花より演技が上手くて、もっと有名な女優はたくさんいるのかもしれない。


それでも――。


堂也にとって、悠花だけが唯一のヒロインだった。


「……そっか」


その言葉を噛みしめるように、悠花は微笑み混じりに答える。


「ありがとう」


二人は少しだけ他愛のない話を交わし、それから「おやすみ」と言って通話を終えた。


堂也は電話を切ったあともしばらく、静かにスマホの画面を見つめていた。


ピロン。


【先生! 映画がさっき急上昇ランキングに入りました!】


画面には里奈からのメッセージが表示される。


【今はトレンドランキング一位です】


【そうなんだ】


堂也は数字のことはあまり詳しくない。


それでも少なくとも、映画は失敗ではなかったのだと理解した。


【明日、集計が出たらまた先生にご報告しますね】


【ありがとう。でも、ちゃんと休んでね】


【ありがとうございます。でも、今は先生にとって絶好のチャンスですから。絶対に逃せません】


里奈からの返事を見て、堂也は苦笑した。


  ***


深夜。


堂也は天井を見つめながら、小さくため息をつく。


「思っていた以上に気になってるんだな……」


悠花との仕事は、本当に良い結果へつながるのだろうか。




何度も寝返りを打ち、ようやく少し眠りについた、その時だった。


激しく鳴るスマホの着信音で、堂也は飛び起きた。


「先生!」


向こうから聞こえてきた里奈の声は、興奮で弾んでいた。


「再生数がとんでもないことになっています! 今、ネット中が『カタッ』の話題でいっぱいです!」


「つまり……順調ってこと?」


「はい! 一晩でこれほどの数字を叩き出すなんて、この勢いを維持できれば『大成功』と言って間違いありません!」


「そうか……」


堂也は安堵の息を吐いた。


「それから先生。編集部で『カタッ』の映画公開記念限定版として、新たな映画シーンを収録した重版を出すことになりました」


「限定版か……」


堂也は感慨深そうにその言葉を繰り返す。


これまでにも重版は経験してきた。


だが、ここまで大きく作り直されるのは初めてだった。


これも全部悠花のおかげだ。


「はい。それに、インタビュー記事も収録される予定です」


「インタビュー?」


「出演者や監督だけじゃなく、もちろん先生にも取材がありますから、心の準備をしておいてくださいね」


「心の準備って……俺、インタビューなんて受けたことないぞ」


「詳しい内容が決まったら、改めてご説明します」


そこで何かを思い出したように、里奈は嬉しそうな声を上げた。


「それと、『恋するアイドル〜みんなには内緒だよ〜』の第三巻も無事に校了しました。編集長が宣伝にも力を入れてくださるそうです」


「編集長に、お礼を伝えておいて」


「はい、承知しました」


出版社。


映画公式。


そして配信プラットフォーム。


三者が同時に動き出し、宣伝は一気に加速していく。


それが、御堂逸中という作家が世に知られる始まりだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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