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中学で告白できなかった初恋が国民的人気アイドルになっていた。泥酔して目を覚ましたら、なぜか隣で寝ていた!?  作者: 天月瞳


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第4話:来訪者からのお知らせ


堂也は玄関のドアをしばらく見つめたあと、ようやく我に返って部屋へと戻った。


ピンポーン。


数歩歩き出した足が、インターホンの音に引き止められる。


「忘れ物でもしたのか?」


堂也は呟きながら引き返し、声を張り上げて応じた。


「はーい!」


そのまま玄関のドアを開けた。


「どうした? 何か……」


そこに立っていたのは、もう一人の見覚えのある若い女性だった。


堂也は慌てて言葉を飲み込む。


「西村さん、おはようございます。どうしてここに?」




西村里奈。


初めて投稿した作品の頃から、堂也の作品を担当してくれている編集者だ。


ショートヘアに童顔。


小柄な体つきのせいで、スーツを着ていなければ高校生と見間違えてしまいそうだ。


里奈自身の話によると、堂也が彼女にとって初めて担当した作家なのだという。

そんな新人編集者である彼女が、堂也に寄り添い、今日まで一緒に歩んできてくれたのだ。


「おはようございます、御堂先生」


里奈は小さく鼻を動かし、堂也のしわだらけの服とボサボサの髪へ視線を走らせた。


「すんすん」


「先生、昨日お酒を飲まれました?」


疑問形ではあったが、その口調には確信があった。


「あ、はい……」


堂也は気まずそうに視線を落として答える。


里奈はそれ以上追及することなく言った。


「中に入ってもよろしいですか?」


「あっ、すみません。どうぞ」


堂也は慌てて脇に退き、来客用のスリッパを出した。


「失礼します」


里奈は短く礼を言うと、室内をぐるりと見渡した。


「先生、お部屋を掃除してもいいですか」


「い、いえいえ!」


堂也は慌てて両手を振る。


「自分でやります。本当に大丈夫ですから」


「遠慮しなくていいんですよ。前から何度も言っていますけど」


里奈は袖をまくり、大掃除を始める気満々だった。


「先生は執筆だけに集中してください。こういう雑用は全部、私に任せてください」


「本当に大丈夫です!」


堂也は必死に説得した。


掃除も執筆に疲れた時の気分転換の一つなのだ、とまで説明し、ようやく里奈の大掃除を思いとどまらせることに成功した。


「ところで、西村さんは今日、一体……?」


「先生、忘れたんですか?」


里奈は少し眉をひそめる。


「今日は打ち合わせの日ですよ」


「ああ、それは覚えてます。でも、午後にカフェで会う約束でしたよね?」


忘れていなかったことに安心したのか、里奈の表情が少し和らいだ。


「はい。でも急ぎでお伝えしたい大事なお話がありまして。カフェだと人が多いので、先生のお宅で打ち合わせをすることにしました」


そう言ってから、付け加える。


「先生、もしかしてメッセージをご覧になっていませんか?」


堂也はスマートフォンを取り出す。


案の定、里奈からの未読メッセージが届いていた。


「あ、すみません。気づいてませんでした」


「お気になさらず」


里奈は慣れた手つきでキッチンの棚から茶葉を取り出し、お茶を淹れ始めた。


「ありがとうございます」


湯気の立つ湯飲みを受け取った堂也は、頭を下げた。


「それで、西村さん。大事な話というのは?」


「先生の作品、以前に映画化の権利が買われましたよね?」


「何か進展があったんですか?」


堂也は思わず身を乗り出す。


「はい。制作チームが正式に決まりまして、ヒロイン役のキャストも決定しました」


「本当ですか? 誰なんです?」


堂也は勢いよく尋ねた。


一応、意見だけは求められた。


だが無名である自分に決定権などあるはずもない。


「まだ公表前なので、教えていただけませんでした。ただ、すごい人だったそうです」


里奈は少し不満そうに首を横へ振った。


「そして、監督から先生へお誘いがありました。撮影現場を見学しませんか、と」


「いいんですか!? 一度、映画ってどうやって撮るのか見てみたかったんです!」


堂也の目が輝く。


そんな彼の様子を見て、里奈も微笑んだ。


「はい。日程は週末ですので、大学にも支障はありません」


「それは助かります」


堂也はほっと胸をなで下ろした。


小説家である前に、彼の本業は大学生なのだ。


「詳しい場所と時間は後ほどメッセージで送ります。当日は私も同行しますので」


「そうですか。よろしくお願いします」


映画の話が一区切りつくと、里奈は話題を切り替えた。


「先生。新作の進捗はいかがですか?」


「それは、その……」


堂也は居心地悪そうに視線を逸らす。


「先生、責めたいわけではありません」


里奈は小さくため息をついた。


「ただ、出版社のほうからは『だめなら、ホラーを書いていただけませんか』という声も出始めています」


「……分かっています」


堂也は拳を握り締めた。


里奈が出版社との間に立ち、何度も自分をかばってくれていることは分かっている。


彼女がいなければ、この作品はとっくに打ち切られていただろう。


(問題は、あの先輩をどうやって主人公と関わらせるかなんだよな……)


物語に登場する先輩は、若くして名を馳せた大スター。


一方の主人公は芸能界に入ったばかりの裏方スタッフ。


二人の立場は、まさに雲泥の差だった。


(でも、悠花に続きを書くって約束したんだ。期待は裏切れない)


悠花のことを思い浮かべた瞬間、堂也の頭に電流が走る。


(どうすれば……そうだ! メガネだ! 先輩がメガネをかけて普通の女の子に変装すれば、接点が作れるじゃないか!)


堂也は勢いよく口を開いた。


「西村さん!」


「はい?」


里奈は不思議そうに首を傾げる。


「作中の先輩って、普段はクールな大スターじゃないですか」


「はい、そうですね」


「でもね、彼女はプライベートではメガネをかけた文学少女に変装して、こっそり本屋へ小説を買いに行くんです」


「いいギャップですが、でもメガネだけなら、少しパンチが弱いかも」


「そうか。じゃあ……」


堂也は少し考え込んだ。


「彼女が買うのは流行の恋愛小説で、普段のイメージとは真逆なんです、これはどう?」




里奈は考え込むように頷いた。


「それならいいギャップになりますね、続きを聞かせてください」



堂也はますます熱が入る。


「そこで偶然主人公に見つかって、『このことを誰かに話したら撮影チームから追い出す』って脅すんです」


「読者を引き込めそうですね」


里奈も興味深そうに耳を傾ける。


「そこで、先輩がうっかりその本を座席に置き忘れてしまい、他の誰かに見つかりそうになる展開にしたいんです」


「ベタですけれど、効果的ですね」



「先輩が『自分のイメージが崩壊する』と絶望しかけたその時、主人公が自ら名乗り出て『それ、自分の本です』と言って、監督から怒られるんです」


「身代わりになるわけですね」


「そのおかげで先輩は罪悪感を抱いて、あとで主人公にお礼とお詫びをしようと近づくんです」


堂也は話し終えると、おそるおそる尋ねた。


「どう思いますか?」


「ええ、良いと思います」


里奈は納得したように頷いた。


「続きを読んでみたい、そう思える導入です」


「それなら!」


堂也は期待に満ちた目で里奈を見る。


「これはいいスタートです。先生、このまま書き進めましょう」


里奈はにこりと微笑んだ。


「ほかのことは、私にお任せください」



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感想や見たいもの、誤字などがあればぜひ教えてください!

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