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中学で告白できなかった初恋が国民的人気アイドルになっていた。泥酔して目を覚ましたら、なぜか隣で寝ていた!?  作者: 天月瞳


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第15話:話し合いと待ち伏せ

「先生、お待たせしました」


電話を切って間もなく、里奈が足早に店へ入ってきた。


「先生、少しクマができていますね。また夜更かししたんですか?」


「……ちょっとだけ」


堂也は視線を逸らし、気まずそうに答えた。


「じゃあ、朝ご飯は?」


「食パンを半切れ食べたよ」


堂也は胸を張って答える。


「それ、食べたうちに入りませんよ。だから先生、こんなに痩せてるんです」


「そうかな? でも、お腹が空かなかったし」


堂也は自分の体を見下ろす。


自分では、ごく普通の体型だと思っていた。


「そんな生活じゃ体に悪いですよ。先生、もっとご自分を大切にしてください」


里奈は困ったようにため息をつき、自分のコーヒーと一緒にサンドイッチを注文した。


「せめて、これだけでも食べてください」


「……ありがとう」


堂也は素直に彼女の親切を受け取った。


「今日は出版社が開催するコンテストのお話をしようと思って来ました」


「もしかして、今月末の短編小説コンテストのこと?」


里奈は目を丸くする。


「先生、もう知ってるんですか?」


「えっと、その……」


堂也は少し言葉を選びながら、先ほど浅倉からかかってきた電話の内容を説明した。


「ああ!私が今から先生にお話しするつもりなのに!」


里奈は少しだけ頬を膨らませたあと、表情を引き締める。


「でも、長谷川編集は本当に優秀な方ですし、私もたくさんお世話になりました」


「そうなんだ」


「人脈も経験の面で言えば、浅倉先生のおっしゃる通りです」


里奈は少し寂しそうに視線を落とした。


「でも、俺は編集を替えるつもりはないよ。これからも西村さんと一緒に頑張っていきたい」


「先生……」


里奈は感動したように堂也を見つめる。


自分でも少し照れくさくなり、堂也はそっと視線を逸らした。


「と、とにかく、そういうことだから」


里奈は両手で自分の頬を軽く叩き、気持ちを切り替える。


「分かりました。それでは、この勝負について考えましょう。先生は受けるつもりなんですよね?」


「うん」

堂也は頷いた。


理由の一つは、ホラー以外の作品も書けることを読者に証明したかったからだ。


「それに、俺が恋愛小説を書くって決めたことを、間違いだったとは思いたくない」


「条件だけ見れば、意外と公平ですね。浅倉先生はホラーを書いた経験がありませんから、そこだけ見ればこちらが少し有利です」


里奈は冷静に分析を始める。


「ただ、今回のコンテストは短編です。その点では、ホラーのほうが相性はいいんですよね」


もっとも、その程度のハンデで、あの天才に勝てるかどうかは別問題だった。


「それでも、挑戦してみたいんだ」


堂也は真っすぐ前を見つめる。


「俺の恋愛小説で」


「分かりました。それでは、まずコンテストの詳細を確認しましょう」


里奈はスマートフォンを取り出し、資料を開いた。


「今回の応募規定は2万文字以内。ジャンルは自由です」


「2万字か……」


堂也は少し考える。


自分のホラー短編も、このくらいの長さの作品は多かった。


「最近賞を取りやすいのは、どんでん返し系、復讐もの、あるいは冒頭からインパクトのあるタイプが多いですね」


里奈は最近の傾向を簡潔に説明する。


「先生が今連載している作品は、お仕事ものとアイドルを組み合わせた恋愛小説ですよね」


「うん」


堂也は頷く。


里奈は少しだけ言いづらそうな表情を浮かべながら続けた。


「どちらかというと、じっくり読ませるタイプなんです。なので、今回のコンテスト向きではないと思います」


「たしかに。短編は、一つの見せ場に集中しないといけないから」


堂也も同意した。


「その通りです。だから今お話ししたようなジャンルは、短時間で読者を惹きつけて感情移入させやすい定番なんです」


「うーん……」


その三つは、どれも堂也があまり書いたことのないジャンルだった。


一度試しに書いてみなければ、自分に向いているかどうかも分からない。


堂也の考えを察した里奈は、それ以上引き留めることはしなかった。


「ちゃんとご飯は食べてくださいね」


「分かった。ありがとう」


里奈と別れた堂也は苦笑しながら、自宅のアパートへ向かった。


(何を書こうかな……?)


堂也が思いながら歩く。


「……やっと帰ってきた」


玄関の鍵を開けようとした、その時だった。


背後から、ぽつりとした声が聞こえる。


「うわっ!?」


振り返ると、いかにも怪しい女性が立っていた。


深く帽子をかぶり、マスクと大きな黒縁眼鏡で顔を隠した。


「ゆ、悠花!?」


堂也は思わず叫びそうになり、慌てて自分の口を押さえながら小声で尋ねる。


「こんなところへ来て、大丈夫なの?」


(見た目、完全に不審者なんだけど……)


心配そうに聞く堂也に、悠花は腰へ手を当てる。



「そんなこと気にしてる場合じゃないの」


「と、とりあえず中に入ろう」


堂也は急いで鍵を開け、悠花を部屋へ招き入れた。


パタン、とドアが閉まる。


——その直後。


少し離れた階段の踊り場。


壁の陰から、一人の人影が静かに姿を現した。


閉じられたドアを数秒見つめる。


やがて、その人影は何も言わず、ゆっくりと階段を下りていった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感想や見たいもの、誤字などがあればぜひ教えてください!

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