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中学で告白できなかった初恋が国民的人気アイドルになっていた。泥酔して目を覚ましたら、なぜか隣で寝ていた!?  作者: 天月瞳


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11/13

第11話:遠すぎる一等星


ついにライブ当日を迎えた。


堂也は運よくチケットを当選させることができた。


「人、多すぎるだろ……」


堂也は圧倒され、驚きのあまり少し口をぽかんと開けてしまった。


これが人生で初めてのライブだった。


見渡す限り、人、人、人。


外のいたる場所から悠花の存在が伝わってきた。


ポスター、旗、そして悠花の応援グッズを手にした大勢のファン。


「それにしても、デカいな……これが武道館か」


堂也は遠くにそびえる巨大な建物を見上げた。


調べたところによると、武道館ライブには約一万四千人もの観客を収容できるらしい。


堂也の記憶では、チケットは発売初日で完売していた。




「この人たち、みんな悠花を見に来たのか……?」


目の前にいる全員が、たった一人のために集まってきたという事実が、堂也には信じられなかった。


人の流れに乗って物販へ向かうと、そこには悠花のグッズがずらりと並んでいた。


「全部一つずつください」


迷うことなく、全種類をまとめて購入した。


「ネットのみんなの言う通り、早めに来てよかったな」


堂也はしみじみとつぶやいた。


もう少し遅ければ、全部そろえることはできなかったかもしれない。


道すがら、隣を歩く何人かの学生たちが楽しげに雑談しているのが耳に入ってきた。


「今日の悠花ちゃん、何歌ってくれるかな。楽しみだね」


「あの曲は絶対に外せないでしょ」


そう言いながら、女の子は振り付けを真似して踊っていた。


堂也は微笑みながら、人の列に並んで入場する。


会場に入ると、まず祝花や展示を見て回った。


「おお……」


有名な歌手や俳優から贈られた花だけでなく、大企業やテレビ局からの祝花も数多く並んでいる。



「すごいな……あれ?」


堂也は『カタッ』制作チームの名前を見つけ、驚いた。


自分もその作品に関わっていたからこそ、どこか自分も祝福を届けられたような気がして、自然と笑みがこぼれる。


「でも……花か」


堂也は心の中でつぶやいた。


(いつの日か、俺個人の名義で悠花に花を贈るチャンスなんて、あるのかな……)


客席へと足を進める。


堂也が引き当てたのはかなり条件の良い座席だった。


ステージ全体をはっきり見渡すことができる。




周囲の熱気を感じるうちに、自然と緊張が高まっていく。


やがて、ライブが始まった。


場内の照明が一斉に落ちる。


「お?」


パッとスポットライトが灯り、ステージを照らし出した。


その瞬間。


周囲から響く歓声は、耳をつんざくほどだった。


アイドル衣装に身を包んだ悠花が、ゆっくりとせり上がり、光の中心へと姿を現す。


眩しい笑顔を浮かべたその姿は、息を呑むほど美しかった。


堂也は思わず見入る。


周囲の音がすべて消えてしまったような気がした。


目の前にいるのが悠花だということは分かっている。


しかし、眩いスポットライトを浴びて立つ彼女は、まるで。


まるで、全く違う世界に住む人のようだった。



黒縁眼鏡をかけたまま、自分と乾杯していた少女。


中学生の頃、一緒に夢を語り合ったあの女の子。


その面影が、急に遠く霞んでしまう。



「……遠いな」


堂也はぽつりと独り言を漏らし、すぐにぶんぶんと激しく首を振った。


(俺は何を考えてるんだ。落ち込んでる場合じゃないだろ)


無理やり意識をライブへ向ける。


しかし、そんな心配はすぐに消えた。


堂也は、あっという間にこのステージへ引き込まれていく。


悠花のパフォーマンスは眩しすぎて目を開けていられないほどだった。


音楽が流れ始めた瞬間。


一万本を超えるペンライトが一斉に灯る。


まるで満天の星々が、会場全体を埋め尽くしたかのような絶景が広がる。


堂也も慌てて自分のペンライトを点け、周囲の動きに合わせた。



華やかなダンス。


輝く笑顔。


どこまでも透き通るような歌声。


そのすべてが会場を熱狂へと包み込む。


歓声は波のように、何度も何度も押し寄せた。



その熱気に飲まれた堂也も、不器用に隣の人を真似しながらペンライトを振り、声を上げる。


だが、動きにはまったくついていけなかった。


代表曲での激しいダンスの最中。


堂也は一瞬だけ悠花と目が合ったような気がした。


(……え?)


悠花はいたずらっぽくウインクすると、


堂也に向かって指でピストルを作り、撃つ仕草を見せる。


(気のせいだよな……こんなに観客がいるのに、俺に気づくわけがない)


堂也は胸に手を当て、急激に高鳴る鼓動を感じていた。



二度のアンコールを終え、ライブはついに幕を閉じた。


堂也は満足感と疲労感を胸に、グッズを抱えながら会場の外へと出た。


「やっぱりタクシーにするか」


人混みがあまりにも激しい。


大切なグッズを押しつぶされたくなかった。

堂也はひとまずタクシーで武道館を離れ、人の少ない駅まで行ってから電車に乗り換えることにした。


タクシーの中で、堂也は目を閉じて体を休める。


ピロン。


スマホの通知音に、堂也は再び目を開けた。


「悠花……?」


送られてきたメッセージを見て、慌てて開く。


(ライブが終わったばかりなのに、どうしてメッセージを送る時間があるんだ?)


【今日は来てくれてありがとう。ライブ、どうだった?】


その下には、小猫が首をかしげるスタンプが添えられていた。


(じゃあ、あの時のは……気のせいじゃなかったのか?)


堂也は驚きに目を見開く。


【俺のこと見えてたの!?】


【あの時、目が合ったでしょ?】


その一言だけで、


胸いっぱいに大きな感情が込み上げる。


堂也はしばらく黙ったまま、心を込めて返事を打った。


【最高のライブだった。君はやっぱり、一番眩しく輝く一等星だね】


【ありがとう〜】


続けて、小猫が口元を押さえてくすっと笑うスタンプが送られてきた。




***


彩里は事務所の送迎車の中で、スマホを見ながらこっそり笑っている悠花へ視線を向けた。


「どうかした?何かいいことでもあった?」


「ううん、ちょっと嬉しいことがあっただけ」


悠花は慌てた様子でスマホを隠しながら答える。


「そう」


彩里はそれ以上何も言わなかった。


(……本当に分かりやすい子だね)


ただ、意味ありげな視線だけを悠花へ向けていた。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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