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第6話 尋問

城に戻ったレイは、執務室にも大広間にも向かわず、地下室へと降りていった。


そこは湿気ていて冷たく、黴と古い血の匂いがした。壁の松明は頼りなく揺れ、揺らめく影を石壁に映し出していた。山賊の頭領は鎖に繋がれ、隅で項垂れていた。甲冑は剥ぎ取られ、汗と血で染まった汚れたシャツだけが身に残されていた。


レイは向かい側に座った。椅子ではなく、逆さまにした木箱の上だった。


「顔を上げろ」


頭領は従わなかった。レイはため息をつき、衛兵に合図した。衛兵が頭領の髪を掴んで無理やり顔を上げさせる。


レイは彼のタイマーを見た。


残り寿命:2年と3日


数字は微動だにしない。頭領は尋問も死も恐れていない。しかし、それは何の意味も持たなかった。レイは彼を屈服させる方法を知っていた。


「お前はあと二年で死ぬ。剣でもなく、飢えでもない。お前の主人がお前を裏切るのだ。誰が雇ったか教えろ。そうすれば、俺はお前の命を延ばしてやる」


頭領は嘲笑した。


「お前に何が分かる」


「分かっている。お前のタイマーが示しているのは、俺の手で死ぬということではない。主人がお前を不要と判断した時に、お前を消すということだ。お前は役に立つ限りは使われる。しかし、今のお前は囚われの身だ。お前の主人にとって、お前はもう何の役にも立たない」


沈黙。頭領は黙っていたが、タイマーが初めて揺らめいた。


「私はお前に寝返れとは言わない」とレイは続けた。「取引を持ちかけているのだ。名前を教えよ。そうすれば、お前の寿命を十年延ばしてやる。ここから出して遠くへやる。新しい人生を始めさせてやる。さもなければ、ここで二年後に死ぬ。お前の仲間によって盛られた毒でな」


頭領は顔を上げた。嘲笑の色は消えていた。


「ヴルフ伯爵だ…」と彼はささやいた。「奴が我々を雇った。新しい領主は小僧だと聞いて、すぐに片が付くと思った」


「目的は何だ」


「お前の領地が欲しいのだ。何かの…何かのために必要だと言っていた。詳しいことは知らない」


頭領のタイマーが再び揺らめいた。嘘は吐いていない。レイは頷いた。


「彼を普通の牢に移せ。食事と水を与えろ。まだ使える」


衛兵が頷き、頭領を連れ出した。レイは薄暗い地下室に一人残された。


ヴルフ伯爵。聞いたことのある名前だ。隣の領主で、年老いていて裕福で、強力な軍を抱えている。もし奴が領地を欲しがっているなら、山賊程度では止まらないだろう。


レイは立ち上がり、地下室を出た。


執務室には予想外のものが届いていた。机の上に、黒い封蝋で封をされた手紙が置かれていた。紋章も署名もない。執事は血の気の引いた顔で隣に立っていた。


「一時間前に届きました。伝令はすぐに立ち去り、名乗りませんでした」


レイは手紙を開いた。そこには一行だけ書かれていた。


『領地を明け渡して立ち去れ。さもなくば、我が自ら出向こう』


レイは冷笑した。


「愚かな。署名もせずに脅すとは」


「もしや、ヴルフ伯爵では…」と執事がささやいた。


「かもしれない。しかし、もし本当に脅すつもりなら、署名をするはずだ。これは挑発だ。誰かが、私に伯爵を疑わせたいのだ」


レイは手紙を蝋燭の火で燃やした。


「隊長たちに伝えよ。国境の警備を強化しろ。それから、ヴルフ伯爵について知りうる限りの情報を集めろ。収入、同盟者、弱点だ」


執事は頭を下げて退出した。


レイは一人残された。地図を眺める。赤い斑点。一週間前よりは減ったが、まだ多く残っている。


彼は微笑まなかった。ただペンを手に取り、書き始めた。



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