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85.夜中凶行

 板の間の道場に、蠟燭を灯して顔を寄せ合う。


ちょっと怪談話をしてるみたいだなんて、余計な事を考えてしまったのは内緒だ。


ここは、楊師姉の剣派の道場で、本当に何て言うか……その……道場だ。


いや、他に表現の方法がないくらいただのだだっ広い板の間なのよ!一応奥には宿舎的な?何か泊まれるところもあるんだけども、手狭な集合住宅的な感じだし、医務室的な場所もあって自分が詳しく見たけど、まぁ何?本当に外傷用と言うか、怪我した時に応急処置できるだけの物しか揃ってない。


本当にさ、皆で危なっかしい事やろうぜ!みたいな場所なんよね。


とりあえず怪我した二人はゆっくり休ませて、今は楊師姉と小淵師兄と話し合いの最中だ。


一応他にも弟子達はいるんだけど、二人に遠慮してなのか?結構壁際に座ってたり、外を警戒してたりするんだよね。


「小……百師弟はさっきから話を聞いてるのか?」


珍しく楊師姉がちょっとこちらを責めてくる感じだが、それも仕方がないだろう。何しろ兄弟弟子をやられているのだから、少しくらい気が立ってるのが当たり前だ。


「聞いてるよ。ここ最近腕試しの様に剣修の弟子達が見境なくやられてて、尚且つ死人も出てたんでしょ?」


って事らしい。楊師姉は何かと感情的になりやすいので、ついつい怒りをぶちまけては小淵師兄に宥められ、補足をしてもらい、おおよその概要は理解したって所。


「ふむ、今回は死人こそ出なかったから良かったものの、二人で組ませてまで尚やられるとはな」


小淵師兄もちょっと意気消沈してる模様だ。


「くそ!私が顔を出した途端に逃げ出しやがって!そんなに力試しがしたいならいつでも相手してやるってのに!」


うん、楊師姉は犯人を逃がしたのが相当こたえているのか、はたまた兄弟をやられてご立腹なのか、いずれにしても直情的で嘘を感じない性格なのはいつでも変わらない。


「それで、犯人の目星は全くついてないの?」


「「多分、血魔宗だ(だよ)!!!」


「何?血魔宗って?」


〔魔宗でもかなりメジャーな宗派だ。血魔宗と一言で言えばその規模はかなりの物なんだが、昔から内部分裂が絶えなくてな。分家の様に血魔宗が増えすぎて今やどこが元祖かも分からん〕


流石システムだわ、こういう時の知識は本当に頼りになる。


「血魔宗ってのは血を媒介に他者の霊力や修為、果ては霊根を奪う魔宗の事だ」


「そうだよ!陰険悪辣に他者を平気で騙し、踏みにじって成り上がる最低な連中さ!」


どうやら、お二人とも大層血魔宗の事を嫌っているらしい。


自分と言えば、精々が傀儡門とちょっと関わりがあった程度なので、まだそこまで魔宗に対する嫌悪感ってのはない。


「それで、その……なんだろう?何で血魔宗って思うの?」


「それは、先に死んだ剣修の血が奪われていたからだ」


「そうなんだよ!死体が干からびて一滴の血も垂らさないなんてのは、血魔宗以外にあり得ないのさ!」


なるほどね。それは確かに血魔宗を疑うのか?だって血を媒介に相手の修行を奪うって話だもんな。


「だとして、何で血魔宗がうちの風塵宗でそんな凶行をする意味があるの?」


「それは正直な所分からん。だからあまり大事にせず、二人一組で警備するようにしていたのに、今回この有様だ」


「魔宗の考える事なんて、私達には分かりっこないよ!どうせ、ちょっとしたはぐれ者が力自慢をしにうちみたいな田舎宗派を狙ってるのさ!私が顔を出した瞬間姿を消したのが、その証拠だよ!」


うん、確かに楊師姉は外門弟子の中でも実力は指折りなんだろう。多分だけどさ?でもその情報を知って確実に弱い相手を狙いつつ、血も奪うってどういう事だ?ちょっと冷静すぎやしないか?


剣修の警邏二人を相手取って、あっさりと倒す実力がありながら、楊師姉は避けるだけの理性は働く、その上余裕があれば血を奪って、修為だの霊力だのを奪うって事なんだろ?


何か凄く厄介な相手しか想像できないんだけど、どうなってんのよ?


「とりあえず、相手が狙ってるのが剣修だけなら自分は帰ってもいい?」


今の状況でただ考え事だけしてても何も進まなさそうだし、帰る事を提案してみる。


「それはダメだ!もし百師弟に何かあれば、我々にとっても、我が宗にとっても大きな損害だ。もし帰るというなら厳重な警備体制を敷いてだな……」


「うん!小……百師弟はそろそろお眠の時間だ!ここの宿舎は手狭だが、私が添い寝してやろう!それなら血魔宗が来たって不安はない筈!」


「いや、あのさ……家に帰って一人で寝るんだけども?」


そう、今の自分は一応大人の姿なので、小淵師兄のいる前でそんな事言われれば、他の弟子になんか夫婦間不和でもあるのかと疑われてしまうではないか!


結局小淵師兄が自分を家まで送ってくれることになった。


一応は怪我した剣修の弟子の手当てをした訳だし、丹薬門の弟子を無事に家まで届けるって言う体ではある。


何なら帰り道に一人の所を小淵師兄が例の通り魔に出会ったら……その血魔宗は生死を問わずぶった切るらしい。


小淵師兄って魔物相手とか遠慮の必要が無ければ強いらしいもんな。


自分もちょっと風符を手に隠し、いつでも風刃で敵の片腕も落とす覚悟で家についたが、結局何事もなかった。

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― 新着の感想 ―
血を媒介に他者の霊力や修為、霊根を奪うことができるのか。すげぇ~ じゃあ、良い霊根を持ってない人が良い霊根を奪えば自分の修行スピード早まるんかね。 血魔宗がメジャーな理由もわかる。
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