83.面白過ぎて久々にひっくり返る
まず最初に出来たのは、解体ナイフだ。
子供の自分でも扱える小振りの物で、刃渡りも精鋭が7~8㎝位かな?
魚でも捌くんか?ってサイズ感だが、中々に扱いやすいんじゃなかろうか?
工房には当たり前の様に砥石もあったので刃をつけさせて貰い、最初に選んだ木片で持ち手と鞘も作れば完璧だ。
やはり、中身はおじさんとは言え、かつては少年だったこともある自分からすると、こういったナイフやなんかは結構ココロオドル。
ニヤニヤ見ていると、工房の主と思われる職人のおっさんが覗いてきた。
「ほー?シンプルな造りだがいい物だな。経験がなくてもそこまでやれれば十分だから、好きに作るといい。売りたい物は俺が後で一緒に内門に持って行ってやるし、材料が足りなけりゃ買い付けもしてやる」
何とも至れり尽くせりな事だ。
「そんなに全部任せちゃっていいんですか?」
「そりゃ、勿論。お前みたいな修士の面倒を見るように師匠から言われてるからな。お前がうちの一派に入って修行するならまた状況も変わるが、そう言うんじゃないんだろ?だったら師匠から紹介されるはずだしさ」
「なるほど、すみませんちゃんと名乗ってませんでした。薬堂の孟長老の元で修行させてもらってます百木青と言います」
「ああ、そういや俺も名乗ってなかったか。俺は錘平だ。まぁ、俺達みたいなのは作った作品で挨拶するようなもんだし、お前のその小刀を見れば腕は分かる。何かあれば言うといい。俺も何か作ってるから」
そう言うと、のそっと奥の部屋へと向かい、また金属を打つリズミカルな音が響いてきた。
作業中に邪魔するほど野暮じゃないので、再び材料を見に行き、見繕う。
頭に色々なアイデアが湧いては消えていく。
例えば魔を払う銅鏡とか、何となくは分かる。日本にも古代にそんな文化とかあったと思うし、だとしてそれを作って何に使うのかと問われると、それについてはちょっと分からんので保留だ。
あと、銅鐸みたいな鐘状の何か?どうやら法器とやらに分類される術を使う媒介の様な道具らしいが、コレも作ったとて、使い道が分からん。
後は、鉄扇やら鞭とか鐵蓮子とか言う鉄球とか……狼牙棒ってのがいいか!ちょっとデカいけど妖虎の牙で作ってみるのも悪くない気がする!狼だけど虎の牙だよみたいな!
謎にテンションが上がって、素材を持って行って再び炉で金属を溶かすところから始めていく。
気が付いた時には自分が持つにはちょっとデカすぎなとげとげの棒が出来た。これは自分じゃ使わないので、売りだな。
他にも何か作れないか、あれやこれやと考えていると、フッと錬器の記憶と自分のイメージが重なり、一個思いついたのが、ヘアピンだ。
元々欠食児童だった所為か、はたまた前世でAGAだった所為か、この世界の人にしては自分の髪はやや寂しさがある。
皆なんかつやつやの長い髪を束ねているから、尚更そう感じてしまう。
なので、髪をまとめる為に前の世界風のぱちんと留めるタイプのヘアピンを何本か作ればいいんじゃないかって言うね!
思い立ったがすぐさま取り掛かる。今度は多分銀と思われる金属を取り出して、溶かし、そして打っていく。
うん、小さいヘアピンなのに鋳造じゃなくて鍛造なのは自分の記憶がそうしろと言ってるからなのだが、何か出来ちまうんだよな~。
材料の中に金属の鉱石とは別箱で小箱があり、宝石の破片みたいなのがまとまっていたので、適当にあしらって取り付けていくと、子供がつけるには十分な可愛らしさのヘアピンが出来上がった。
それを取り付けてみると、自然とそのヘアピンの効果が理解できる。
どうやら、普段の生活や功法で吸収しきれなかった霊力をじわじわと溜め込んでくれるらしい。
だから何だ?って気もするが、まぁ法器の一種の様だし、とりあえず同じものを何本か作って髪をまとめるのに使う。
髪に取りつけ終ると、なんだかまだ何か出来そうなので、片っ端から材料の入った箱を漁っていくと、一本のいい匂いのする木の棒っ切れを見つけた。
匂いから察するに杉の様だが、やたら芳しい。
お風呂でも作れば贅沢を味わえそうな気もするが、残念ながらそんなに大量にはない。棒っ切れ一本だけだ。
ぼんやり眺めていると、また思いついた。笄だ。
また髪をまとめる道具なんだが、前世から髪が薄かったのがそんなに自分の心に深くつく刺さっているのか?
杉と思われる棒きれに何種類かの少量の金属を象嵌の如く埋め込んでいき、小さな花柄を作って、飾りを削って整え、最後にヘアピンでまとめた髪に突き刺してみると、何となく見栄えがするんじゃなかろうか?
うん、面白い。何でも作れるって言う全能感に溺れていくこの感覚……悪くない。
今度は自分で使う物じゃなくてもいいから、刀でも作ってみるか?
勿論日本刀ではない。あれは鉄の種類がちょっと違うもの。今使ってるのは大陸風の完全な鉄鉱石だから、扱いが違うと思う。多分ね。いずれ修行が進んだら何んとなかるのかもしれないが、今の所イメージがまとまる気配はない。
ならばと記憶のまんま柳葉刀でも作ってみるか!
そんな事を考えつつ、作ってはそこらに放り投げ、作ってはそこらに立てかけている内に、
「あれ?夜?……じゃねぇ……」
窓からまだ日が見えるというのに、視界が暗くなっていき、やっちまったと思った時にはすでに言葉も出ずに、ぶっ倒れた。




