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81.孟長老と面談

 ここ数日は、周辺がとても落ち着いている。


外門に上がって早々に、楊師姉の喧嘩なんかも見物したが、それを除けばおおよそ順風満帆と言っていいだろう。


一度、雑役弟子達の畑に出向いたが、特に何の問題も無かったし、羊雲城の王名月の使いとも連絡が取れたので、今後の取引もつつがなく行われそうだし、外門は広くてまだ全部を回りきれていないものの、色々と面白そうだし、修行もお金稼ぎも順調そのものだ。


ちなみに妖虎の素材だが、これについては鴛鴦夫婦が上手く処理してくれて、綺麗に解体された素材を受け取った。


何をしてもいい、っていう状態が何だかんだ一番何をしていいのか分からず、ついつい薬堂で丹薬作りに没頭する日々を送っている。


そんなある日の事、


「孟長老がお呼びだよ!」


そう言って柏師姉に呼ばれたので、後ろを付いて行くと広い板の間の部屋に連れて行かれた。


中央には掛け軸が飾られ、周囲には色鮮やかな陶器が並び、孟長老の腰かける椅子の正面には多分自分に用意されたであろう椅子が置いてある。


何というか、一言で言うなら広間って感じかな?


一対一だけでなく10人くらいなら集まって会議しても息苦しいとは感じないであろう広さと、程よい高級感のある置物達が、何となく雰囲気を醸し出している。


部屋に入ると柏師姉が孟長老に簡単に挨拶して出て行ったので、自分一人で孟長老の近くに寄ると、自然なしぐさで席を勧められたので、遠慮なく掛けて孟長老と向かい合う。


「薬会にお出かけと聞いていたんですけど、帰ってらしたんですね」


「ああ、昨晩遅くにな。それで今朝からここ最近の状況を確認していたのだが、随分と宗に貢献しているようではないか」


うーん、世間話もなしにいきなり核心に突っ込んでくる感じか?とは言え、今の所意図は読めないし無難に答えておくか。


「はい、今の所は他にやる事もないので、一旦丹薬修行に精を出してます。折角修行しやすい環境を整えていただいているので、少しでも成果を出せればいいかな?と」


「ふむ、それはいい心がけだな。丹薬士が育つ事は宗にとってとても財産になる。私の師である薬堂の先代も、李長老も皆、それを願っているのだ」


ん?どういう事だ?


「孟長老が薬堂の主で、丹薬士を集めているのは分かるのですが、何故丹薬士が育つと宗の財産になるので?」


「ふむ、一つには単純にどこの宗であろうと、宗でなくとも聖域に住まう者なら、丹薬に頼る部分は大いにある。故に丹薬士が育つことは、誰もが望む所だ」


「聖域にとって重要な人材が風塵宗から輩出されることが、宗にとってプラスになる?」


「そう取って貰って、そう間違いはない。更には宗の財政事情にも関わってくる」


「宗の財政?でもそれって孟長老が気にする事なんですか?」


「本来私だけにとどまらず、宗全体で考えるべきことだとは思うが、この宗の主な収入源は分かるか?」


「何か植物系の素材と魔物の素材が良く手に入るとか?」


「その通りだ。だがそのまま素材として放出すれば、他宗に利するばかりで、我らが宗はあくまで他所との交易に必要な財産を得るに留まる。まぁそれでもいいとする者達も多いのが現状だが」


「孟長老はそうお考えでない?」


「うむ、やはり素材をただ垂れ流すのではなく、宗内で加工した物を輸出した方が儲けも大きく、宗内の者達の修行にもなり、また他宗からの依存度が上がる程に我らが宗の立場も強くなるというものであろう」


ふむ、なるほどね。ただの一次生産者ではなく二次生産もやっていこうって訳だ。


まぁ元々規模が大きいだけの田舎弱小宗派らしいし、少しでも財を得つつ立場も強化しつつって考えるのは結構妥当なのかもしれない。


その中でも、植物系の素材や魔物系の素材を生かすには丹薬がいいって結論なのかな?


「さて、本題に入るが……」


ああ、まだ本題じゃなかったんだ。単刀直入に入る人だと思ったら、意外とちゃんとコミュニケーションもとる人だったのか。


「何かありましたか?」


「いや、あったと言うより、最近百木青の作る丹薬が外門のみならず、内門でも飛ぶように売れ、鸚鵡緑苑外苑に集まる商人達からも次の入荷についての問い合わせが殺到しているのは知っているか?」


いや?全然知らん!貢献ポイントはたんまり貰ってるし、作るには作ってるけど、そんな大人気なの?


「その顔はよく知らないという事か?苟姉弟にはよく言っておかねばな。話というのは他でもない。当面例の肌の調子を整える薬を量産するようにという事だ。勿論百木青の修行にも差しさわりがあるだろうし、十分な補償はしよう。これまで買い取った分に関しても数量は記録されているので、差分の報酬もこの場で払う」


言うなり、ごそっと金の葉の束を渡してきたので、両手で受け取る。


「えっと、つまり今はこれが売れ筋なので大量に売って、宗の財政に寄与せよって任務だと受け取っても?」


「ああ、その認識で問題ない。我らはどうしても戦闘力に劣り軽く見られがちだが、宗に十分に利益になる存在だという事は、常に示さねばならん」


なるほどね。話としては理にかなってるし、報酬も十分ケチのつけようもない。


宗内の丹薬士の立場を考える野心家に見える部分もないとは言えないが、それでも自分の利益だけを追ってるようには見えないし、まだ読めない人だな。

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― 新着の感想 ―
孟長老は宗の未来などを考えてる良いリーダーにみえるなぁ 確かに、素材をただ垂れ流すより、加工して売る方が儲かるし、技術も育つから加工したほうがいいねぇ
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