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73.楊師姉再び

 「嗚呼~~~~~~やっと終わったぁ」


何だかんだ緊張の連続だった森の狩りが終わり、家路につく。


やっぱりね、他人の言う事は聞くべきというかなんというか、井兄の言った通り自分は狩りなんかやらずに農でも丹薬でも符でもやってりゃいいのよ。


想定以上の符箓の威力は分かったものの、それ以外は所詮異世界のおじさんであり、この世界の子供に過ぎない自分は無力だ。


結局の所、生き物を殺すという事に大きなストレスを感じるし、それでもやらねば生きていけないんじゃないか?っていう気持ちで自分自身を追い詰めてしまう。


結果それらが心労となって、今にも崩れ落ちて泥睡しそうだ。


ずるずると重すぎる足を引きずって何とか家まで帰り、寝屋に辿り着くと、


「何だ貴様!ここは白師弟の家だぞ!盗みにでも入ったか!!!」


と一喝されるも、既に自分の脳みそはスリープ間近の状態だ。


「そ、そんなんじゃないんで、休ませて」


「ふざけるな!この剣に誓ってお前の様な薄汚く、勝手な弟子をこの家に招き入れる事など絶対許さない!」


事、ここに至って声の主が楊師姉だと分かった。


まじで、何なら知らぬ顔して休ませてくれよとも思うのだが、そこは直情でどこまでも真っ直ぐな師姉の事、案の定剣を引き抜いて切っ先をこっちに向けてくる。


「あのさ、楊師姉」


「貴様!私の事を知っているのか?ならば分かるだろう!外門弟子の中でも一、二を争う私の腕を!貴様の首など、一瞬で落ちる!そうとも!瞬き一つの間にな!」


何とも豪快な物の言いようなんだけど、こっちももう限界なんだよ。


そう思いつつ、家に入り後ろ手に家の扉を閉める。


「ふん!どういうつもりだい!私と一対一でやりあおうってんなら、あんたの死は確定だよ?まだ弟弟子だと思って、手加減できるうちに降参しな!」


「ちょっと、楊師姉も落ち着こうか。自分の正体を知ってまだ剣を向け続けるの?」


「はん?あんたの正体が何だって言うんだい?このコソ泥雑役弟子が、生意気な口を叩くんじゃないよ!」


いよいよこりゃもう駄目だと思い、右手と左手の一指し指と中指を交差させ、口元へと持って行き囁く。


「解」


すると、サッと自分の陽符が溶けて、子供の姿が現れた。


「楊師姉久しぶり、ちょっと真面目に疲れてるから休ませて貰っていい?」


「小白!無事だったのか!なんで私に知らせの一つも寄越さない!もう宗内でみんな勝手に死んだの連れ去られたのと騒ぎになっていたのに!そうか!変装して隠れ住んでたんだな?」


「そりゃ、自分は子供だよ?出来る事は色々あっても世の中の事は知らないんだから、こっそり隠れ住むしかないじゃん?とはいえ、今日は本当に疲れてるから、ちょっと休ませて……」


「何しろさぁ!沙の店の常連も食えるものが無いって泣いてるし、知ってるか?噂じゃ秦師姉や黄師姉までもが、こそこそと出歩いて、小白の行方を捜してるって言うんだぞ?」


「そんな訳ないじゃん。自分はあくまで雑役弟子の子供だよ?童僕一人に内門弟子が時間割いてたら宗が成り立たないんじゃないの?それより、ちょっと離して!」


そう、自分が正体を見せてからと言うもの楊師姉ががっちり抱きしめて、全く身動きが取れん。


これが剣を使う者と、ただの子供の差かと痛感されるほどには、行動の自由を奪われている。


〔力づくで振り払えば、お前なら何とかなりそうだがな?〕


突然のシステムの助言に力を込めようとするものの、何だかんだ親愛の情で自分を抱きすくめて一方的に好き放題喋りかけてくる楊師姉を振りほどくには申し訳も無く、それでいて迫りくる直近の疲労というか、もはや睡魔となって自分の神経を侵食してくる化け物に抗いかねてきた。


「とにもかくにも、小白が困ってるなら私が手を貸すからな!じゃないと蒼霊水も手に入らなきゃ、丹薬の仲介手数料も手に入らないんだから、何でもいえ!荒事だったら大体何とかする!」


何とも現金な師姉だが、まぁこういうはっきりと自分の欲する所を説明できる人をそんな嫌いでもないんだよな。


しかも荒事とか、自分が苦手な事を率先して引き受けてくれる辺り、相性もいいのだろう。


とは、言えだ!今は、今はもうだめ!


そう頭の中で感じた瞬間、世界がブラックアウトしていく。


「おい!小白!小白!一体何があったって言うんだ~~~~~~~!!!」


凄まじい楊師姉の叫び声に、


「眠いねん!黙っとれ!」


と、自分の声とは到底思えない様な関西弁の音声が頭に流れたと思ったところで、完全に落ちた。

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ふと気が付くと、いつもの寝床なのに妙に温かい。


くるっと背中側を見やると、楊師姉も寝てるじゃん。


「何してるの?」


「起きたか小白!」


「起きたかじゃなくて、何してんの?」


「そりゃ、急に気絶したから、頭でも打ったのかと思って隣で様子見てたんじゃないか?」


うん、それは大変ありがたい。


普通雑役弟子がちょっと調子悪いくらいじゃ、誰もが無視だってのに、楊師姉は自分の倒れ込み方に異常を感じて様子を見ててくれたって訳だ。


あんたも寝てたけどな!


とは言え、自分が寝てる間にあんたは起きてろよ!などと言い難いのも事実。


そして、何より何のために楊師姉が訪ねてきたのか聞かなきゃ。

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― 新着の感想 ―
いままで無人の家守ってくれたんかね 久々に楊師姉が出てきてうれしいな
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