72.折角だし取り込もうか
「ああ、あの別に恩を売りたいとかそういう訳じゃないんですけどね」
「いや!こんな大恩を受けて黙って知らぬふりをするなど女の片隅にも置けぬ!何なりと申し付けてくだされば、水火を問わずやってのけてみせましょう!」
あっついなぁ。熱すぎて火傷しそうなんだけどこのお姉さん。
う~んこのままだと、変な事に巻き込まれそうだし、何とか適当な理由をでっち上げたい。
〔だったらさっきの四人組との縁で面倒な事をおしつけてしまえばいい〕
相変わらず俗な事でもさらっと答えを出してくれるシステムだ。
「頼みというのもあれなんですけど、二つほどお願いがありまして」
「願いなどと言わぬで良い!ただ先輩が望めばそれに答えます!」
うん、先輩ってのは多分こういう世界観だとかなり上に見られてる。師兄みたいに呼べないくらい目上に対する呼び方なんだもの。
「あのね?自分って今さ?子供に見えてるじゃない?実はその通りの年齢なのね?」
そう言いながら陽符を出して、発動し百木青に変化する。
「あの?つまり?」
「うん、多分この宗で子供の噂って一つなんだと思うけども、自分は非常にその噂で困ってるから、ここで子供に会ったって事を忘れて貰えますか?」
「勿論です!恩人殿の不利益な事を口にすれば、きっとこの口は裂かれ、頭と胴が離れることになるでしょう!」
うん、超怖い!何このお姉さん!誓いの仕方が怖すぎて、本気で関わりたくなくなってきた。
でも、今の状況、ちょっと面倒だしもうちょっとだけ力を貸して貰いたいんだよな。
「後、もう一個、この妖虎?の件でカクガクシカジカなんだけど……」
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「確かにその四人組は外門弟子の中でも評判の悪い者達です。確か仲間を囮に差し出すというのは4人が外門弟子に昇格になった事件がきっかけだったように思います」
ふむ、逆に言うと普段から仲間や雑役弟子を囮に使ってるとかそういう訳ではないのか?正直な所まだ調べが足りない気がする。
「まぁ、一旦は逃げ散った4人にこの妖虎の素材を奪われたくないんだよね。それで、さっきの二品薬とこの妖虎の討伐ポイント?は上げるから代わりに妖虎討伐は二人がした事にして、素材を自分に回してほしいんだよね」
「そんな!ポイントは先輩が受け取るべきですし、二品丹薬のお代もきっちりお支払いいたします!」
「うん、そういうのいいの。自分は先輩でもなんでもない、偶々器用な子供だからさ。あまり構えずに接してもらって、二人に危ない所を助けてもらった雑役弟子でいられればいいから、ね?」
凄く、それはもう苦虫を噛み潰すかのような顔をして不承不承納得する女性。
「そういえば、まだ名乗っておりませんでした。程菁菁、こちらが袁景明です。先輩につきましては何とお礼を申せばいいものか」
「自分は子供の時は白小青、大人の時は百木青、兎にも角にも今は色々ごたごたしてて正体を隠さなきゃいけない身分だから、本気で頼みますよ?」
「勿論でございます!身命を賭して先輩の正体を隠し続ける所存です!例え口を割らせようとする邪悪が現れたとしても、この程菁菁口を割る事だけはございません!」
すっごい勢いで忠誠を誓って来るんだけど、そんなこと自分は一つも望んではございません。とにかく秘密を守ってねって言ってるだけです。
「じ、じゃあさ?この妖虎の素材を持って帰りたいんだけど手伝って貰えますか?」
一言尋ねれば、サッと象程はあった筈の妖虎を指輪におさめるお姉さん。
「造作もありあません。先輩が今度荷物がいっぱいで、獣を運べない時はいつでもお呼び下されば、駆け付けます!」
うん、やっぱり外門弟子って凄いのな。さっきの4人組はチビの言い分を聞く限り、収納指輪ってのはそれなりの身分の者が持つ物だって思ってたけど、どうやら全然違う。だって目の前のお姉さんは当たり前の様に自分より容量の大きな獲物をしまったんだもの。
「あの、もしかすると先の4人組とひと悶着あるかもしれなんですけど」
「あの四人組など外門弟子の縁も縁の存在です。実力は伴わないのに偶然の手柄で成り上がった者など、敵すると覚える事すら無駄にございます。この妖虎の素材は余すところなく先輩に献上する所存でございますれば、心労などなさらぬように」
う~ん男前なお姉さんだなと思いつつ、ぼちぼちと下山する。
時折細い道なりに魔物らしき姿が見えるも、お姉さんがちょろっと殺気を出すというか、威嚇すればさっさと逃げていく。
これが実力の差と言うものかと感心していると、あっという間に風塵宗の外門に辿り着いてしまった。
程菁菁と袁景明が外の景色に見入っている。
砂漠と木々の織り成す濃密なジャングルに何を思うのか分からないけど、一気に親密な雰囲気になる二人に、
「自分は一旦立ち去るから、また今度ね」
それだけ勝手に言い置いて、その場を去る事にする。
一旦この二人とは何の関わりも無いように見せかけて、自分の家というか、隠れ家の場所は教えてあるので、その内訪ねてくるだろう。
雑役弟子の任務堂へと行き結果を報告すれば、自分は死んだことになっていたらしい。
当然ながら生きているので、持っていた狼の歯を渡して、自分の分のポイントを受け取る。
まぁ、正直な所あの程度の狼なら、あの女前のお姉さんならいくらでも狩れるだろうし、売った恩を返してもらいつつ、回収すればいいだろ。・




