68.狩り任務の話
「そう言えば、今回って狩りの目標とかあるんですか?」
ふと、思いついて聞いてみる。
「そんなのも知らないでついてきたのかお前!」
いきなり甲高い声で突っかかってくるチビの方の取り巻きは、いったい自分の何が気に食わないんだ?
「おい、やめろ。俺から説明すると今回狩りの目的は定期的な間引きと採集だ」
チビの方と違って、細い方は冷静に答えてくれる。
ちなみに、人相の悪い髭面と肥えた斧使いは少し先を歩いて行く。というのも自分がさっきから素材採集にかまけて全然奥へと進めないから、一旦狩場まで行くぞと、先導して尚且つ遅れるなと後ろも振り返らずに進む。
「じゃあ狩場で、間引きをするって事ですかね?」
「そうだ。こんな視界の悪い細い道で、魔物に遭遇すれば怪我や不測の事態も起きやすい。それこそさっきの狼も、師弟が散らさなければ面倒だったろう」
ふーむ、つまりもっと動きやすい場所で魔物を狩りつつ、素材を集めて報酬を得ると、そんな所か。
「それよりさっきの雷は符禄を使ったようだが、本当に羽振りがいいみたいじゃないか!どこからどうやってそんな金が湧いてくるんだ!」
またチビの方が絡んできたが、さてどう言い訳するか。
森になっちゃった畑のお陰で、稼げている事を言うべきか、はたまた本当は存在しない実家からの仕送りとでも言うか。
「確かに符禄は安くはない。雑役弟子の収入では到底手に入るものではない筈だ」
「実家から送られてくるもので、親戚筋に符箓を使える人がいまして、現物支給と言いますか、そんな感じです」
はい、嘘ついちゃいました。何となくこの集団は金の匂いに敏感、または金の出所を探っているようにも感じられる。
金があるというより、家族から送られてくると言った方が、少しは興味を無くしてくれるんじゃないか?
「ふむ、親戚に符箓を作れるものがいるのか、どうやら後ろ盾にそれなりの修士が控えているようだな」
「それなりと言えば、それなりなのでしょうかね」
はい、普通の日本人の感覚ならそんな事ないですよとか言うじゃん?この修仙界では、後ろ盾とか縁者とかはちょっと吹いておいた方がいい。
舐められると、舐められっぱなしになる怖さがあるから、日本人的な一歩引けば一歩引くなんて事は、交渉の段階でちゃんとはっきり言葉にでもしなければ起こりえないんだ。
そして、自分が吹いた言葉を信じたのか、チビの方はあっさりと引き、自分達の話を聞いてるんだか、聞いてないんだか分からない様な距離をとった。
「それで、自分は狩りの任務というのが今回初めてなので色々教えていただけたら、ありがたいのですが?」
「うむ、先ずいつでも引き受ける事が出来て、尚且つ自分達の能力に合わせて自由度の高い依頼が今回の間引きと素材回収になる。これは狩った魔物の数と拾って来た素材の売却で自分達の利益を得る」
「その、素材というのは持ち帰ったら全部売却しなくてはならないんですか?」
「そんな事は無い。目利きと交渉に自信があるなら自分で鸚鵡緑園外苑にでも持って行って売ってもいい。だが普通はそこまで一つ一つの素材の金額や効果を知っている者も少ない。錬丹をやってる連中に草の素材を売った所で、向こうの方が知識あるんだから、任務堂で基準額通りに引き取ってもらった方が、大抵は得をする」
なるほどねぇ。ただ自分の場合は自分で使いたいからな~。でもこの師兄達と報酬を分配する時には、やっぱり売り払ってお金に換えて分配って事になるのかな?
うえぇ……来た意味が全然ない!やる気ゲージも一気にゼロなんだが!
いやいや、一旦は情報収取だ。今回は何も知らずで来たんだし、先ず知る事が一番大事。
「ちなみに、他の狩りの任務ってどんなのがあるんですか?」
「それは、まず特定の魔物を狩るものだろう。理由は危険だから、と言うものもあれば、特定の魔物の素材が必要という場合もある。そしてその依頼は宗からだけでなく、素材を必要とする弟子達や羊雲城なんかからも依頼がある」
「その素材が必要な場合って、もし先に持ってたらその素材をその場で提出して完了みたいな事も?」
「勿論可能だ。だから今回もただの間引きでありながら、運よく高く売れる魔物の素材でも手に入れられれば、その分報酬は上乗せになっていく」
これはいいこと聞いたぞ!正直自分は現状お金に困ってないし、寧ろお金で素材収集の依頼を出しておけるなら、今後もっと修行がはかどるんじゃないか?
「後は緊急の討伐依頼だな。例えば羊雲城内に魔物が侵入したとか、もしくは村の畑を魔物が荒らしてるとか、そう言った際に魔物を狩って安全を確保する」
ふーん、特定の魔物を狩るか侵入してきた魔物を狩って安全の確保を図るか、似たようなというか、ちょっと任務内容被りそうな部分も感じるが、細かい事は気にするまい。
とりあえず、自分は現状武器らしい武器も使えないのに、そんな積極的に魔物狩りなんてのはやらんので、素材を買い集める別の方法が見つかってそれだけでも、十分有益な情報と言えるだろう。
「おうし!この辺で魔物を狩るから、周辺の警戒と陣地構築するぞ!」
話も程よい所で、人相の悪い髭面の師兄から声が掛かった。




