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67.聖域浅層

 「よう!よく来たじゃねぇか!百師弟、今日はめいいっぱい稼ごうな~はっはっは」


そう言って、外門弟子の住まう地域の外れにある大門で待っていたのは、例のごろつき風の師兄とその連れだ。


まぁ、よりにもよって見た目が悪相なんだが、それが悪い噂を呼ぶのか、はたまた本質的に碌な人間じゃないのか、いずれにせよ十分な警戒が必要なので、事前に自分に護符をかけてある。


そこまでしてわざわざ来るか!って感じでもあるんだけど、やっぱり素材欲しいじゃん?王名月から買えると言っても、やっぱり何かと気を使わないといけないし、自分で手に入れられたら、そっちの方が絶対助かるじゃん?


とりあえず、丹薬も符箓も十分にあるし、いざという時に戦闘に使えそうな切り札もシステムと相談してあるから、たぶん行けるでしょ。


「俺達外門弟子が普段行き来を許可されてるのは、浅層だけだが、それでも土をいじってるよりは儲かるから安心しろ」


浅層ねぇ……何のことやら分からないけれども、多分深層にはきっともっといい素材があるとかそんな感じだろう。


「初めての魔物狩りですがよろしくお願いします」


一人一人挨拶して回ると、ニヤニヤしながら師兄達がこちらを見てくる。


どうやら今回は自分を含めて5人での狩りという事らしい。


とはいえ、自分は基本的に雑用係なので、戦うのは他の師兄達4人って事だ。


一人は、例の一番チンピラっぽい髭面の男で、手に革巻きの剣を持っている。


次に目立つのは如何にも悪党って感じの裸に毛皮のベストを着て、両手に斧を持った肥えた師兄。


後はザ・取り巻き!みたいな細いのと髪がぼさぼさとしたチビと言った具合か。


とりあえず、皆で外門から出ると、そこはいきなり密林の如き森だった。


以前、秦師姉の背中に背負われ上から見た時も随分と密度の高い森の山には見えていたのだが、実際にそこに入ってみると、わずかな木漏れ日の他、ほとんど光も通さぬ暗い森だ。


目が慣れるまで、右を見ても左を見ても暗いという印象しかなく、時折遠くから聞こえる獣とも鳥とも分からぬ謎の鳴き声に、肝をつぶす。


〔おい!あれ!〕


唐突にシステムの声が聞こえ、まさか幽霊が!!!!と盛大に勘違いしてしまい、思いっきりすっころんだ。


「何してる百師弟!まだ入り口も入り口だぞ!しっかりしろ!」


髭面のチンピラに言われてしまうが、今のは確実にシステムが悪いだろう。


〔俺は何も悪くねぇ。それよりそこの木陰を探ってみろ。面白い物があるぞ〕


そういうので、恐る恐る道から外れて気の陰に向かい、その周辺を漁る。


すると、偶々手に取ったのは随分と太い枝?しかし随分と傷ついている気がするが、こりゃなんだ?


木の枝を持って帰ると、髭面のチンピラが目を向いている。


「よくこんな、入り口もいい所でそんな物を見つけたな?」


「これ何です?」


「分からずに拾ったのか?とんだ目利きがいたと思いきや偶然だったかはっはっは!それは雷撃木って言ってな、法器の素材としては、誰もが欲しがる一品だから大事に持ち帰れよ!」


そう言うので、一旦指輪に収納する。


「おいぃぃぃ!お前雑役弟子なのにもう、収納指輪なんか持ってやがるのか!」


急にチビが横から掴みかからんばかりに叫んでくるが、体型に似合った随分と甲高い声だ。


「やめとけって!そいつは百師弟って言ってな。雑役弟子の中でも羽振りがいいんで有名なんだ」


チビを止めてくれたのはありがたいが、何とも嫌な言い方をするチンピラだ。やっぱり噂通り良からぬ輩だという事か?


その後、徐々に目が慣れるにつれて、あちらこちらに自分が必要とする丹薬素材が見つかり、その都度草やら霊芝やら毟って行く。


「お~い!百師弟!ここの森植物資源が豊富なんだから、そんな風に毎度毎度毟ってたら、魔物に会う前に日が暮れちまうぞ!はっはっは!」


チンピラに言われて、ハッとするが、それでも羊雲城の取引で、ちょっと手に入りにくいような物でもあれば、ついつい毟りに行ってしまう。


「おい!気をつけろ!」


ふと、道から外れて森に入ろうとした時、妙に野太い声に止められたと思ったら、背の高い細身の取り巻きの声だった。


そして、その声で師兄達は一斉に武器を構えて、呼吸を整え始める。


先に上げた通りチンピラは剣、肥えたのは斧、そこから細いのに野太い声の奴が短弓、そしてチビが多分投擲用のナイフだろう。


自分も念の為、両手に風符と雷符を取り出して、師兄達の後ろに回る。


すると森の奥から、低いうなり声と、浅い息遣いが聞こえてくると思いきや、走ってきたのはデカい犬の群れ。


デカいというのは、それこそシェパードどころじゃない。


虎サイズの犬が大量に表れ、これがオオカミと言うものか?と分らされるほどに獰猛な気配を発している。


すぐさま、細い師兄が短弓を乱射するものの、当たってはいるが、群れは屁ともしてない様子で迫ってくる。


更に、チビの師兄が手からシンプルな形状のナイフを片っ端から投げていくと、ようやっと数体その場に倒れる。


それでも、まだまだ大量の狼の群れを散らす為、自分が雷符を発動した。


すると、天上から、一筋の閃光が放たれ、直後に轟音が鳴り響く。


自分の持つ符の中でも一番インパクトの激しい符だが、その轟音に怯んだ狼達は、あっという間に踵を返して逃げて行った。


残ったのは、弓に貫かれた狼と、投げナイフを食らって悶えている狼、そして自分の雷符の轟音で気絶してしまった数匹だ。


「浅層の狼とはいえ、毛皮は素材になるから、さっさと剥いじまおう」


そうチンピラ師兄が言うので、適当に一匹を錬化する。


すると〈夜狼の牙〉を手に入れた。


チンピラ師兄に見せると、顎をしゃくって狼の方を指す。


多分全部錬化しろという事なのだろうと思って、同じ素材をいくつか得た。

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さすが素材だけはある風塵宗
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