表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
62/66

61.白小青の噂

 肉もおおよそ食べて腹がくちくなってきた頃、もう一つ大事な話を切り出していく。


「そういえば、井兄?この宗って何でも子供が出入りしてるって聞いたけども、既に内門弟子だとか?」


我ながらすっとぼけるにしても、もっといい切り口は無かったか?とは思うが、内門に出入りしている子供の噂を聞こうとしたら、何となくこんな感じになってしまった。


「ああ!有名だよな白……何とか?白師弟だろ?あくまで俺達と変わらん雑役弟子で、内門の丹薬弟子の童僕やってるって話だ」


「成程な~~~童僕なのか~~~何でも最近、羊雲城とトラブルになったとかで、今後自分が羊雲城と付き合うにも何か気をつけた方がいい事でもあるのかと思ってさ」


「そっかそっか!確かに羊雲城の嬢ちゃんと商談するにしても上の方で揉めてたら、そりゃ心配になるわな~~……まぁ噂程度しか知らんけどそれでいいなら」


「うん頼むよ」


それを欲してたんだから、普通に噂話で十分。寧ろ雑役弟子にまで詳しい情報が流れてくるんなら、それはそれで今後情報の扱いには細心の注意をせねばならない。


「まずなぁ、俺達と変わらん雑役弟子とは言ったものの、それはあくまで身分だけであって、今や内門じゃ花の修行者とすっかり名が上がっているらしい」


「そうなんだ?そんなに有名なのに、未だに雑役弟子なの?」


「う~ん俺が思うに、百弟と同じような【農術】の使い手なんじゃないかと思うんだよな。更には内門外苑で食事を提供する仕事もしてるって話だから【厨術】も使うんじゃないか?」


思わず息が浅くなり、呼吸が苦しくなってくる。井兄は自分の話をしている訳じゃないと分かっていても、今にもバレるんじゃないかと、不安が襲ってくるのを我慢できない。


「そ、それじゃあ、自分の腕は子供にも及ばないなぁ。さすがに内門じゃ通用しそうにもないし」


「はっはっは!どうだろうな!多分まだ百弟は見つかってないだけで、実力を知ったら誰もが声を掛けてくるだろうと思うけど、問題は白師弟だな」


「うんうん」


「なんでも、羊雲城の護衛の片腕を不具にしちまったそうだ」


「不具ってのは、要は使えなくしたって事?」


「ああ、って言ってもその辺は色んな噂が立ちすぎてて真偽の程は全然分かってねぇ。有力なのは、羊雲城の護衛が白師弟を殺しちまって、怒った秦師姉が片腕切り落としたとか、そんな感じかね」


ええ?自分死んだことになってるの?


「その白師弟が死んだってのは、どこからの情報ですか?」


「出所は分かんねぇけど、例の羊雲城の護衛と揉めた日以降、誰も白師弟を見た者はいないらしい。それまでは結構毎日のようにそこら中歩き回ってる活発な子供だったってのによ」


そりゃあ今、自分がここにいるんだから、白小青の姿を見た事ないのは当たり前ではある。それよりも一点問題な事に気が付いた。


「ところで、羊雲城の護衛と揉めたってのは、何で分かったんです?」


「そりゃあ、羊雲城の護衛が荷馬車に乗せられて引きづり出されたからさ。その時、その痛ましい姿を見た連中は、確かに片腕が無かっただの、もう顔に生気が残ってなかっただのと勝手放題言ってる」


まじかー!!?正直な所自分は吹っ飛ばされて頭打っただけだし、秦師姉がそこまで苛烈な事をするとは思ってもみなかった。


しかし、ここは修仙世界だ。力と面子のモノ言う世界で、高々練気5級の護衛が、秦師姉が直接連れてきた子供に手を出す事は、禁忌に触れる事だったのかもしれないし、そうじゃなかったかもしれない。


うん、知らねぇし。


確かに片腕失った事が事実なら可哀そうではあるが、先に手を出してきたのは向こうだ。何ならこっちは口で言ってるんだから、口で言い返せばいい物をとりあえず殴ろうって魂胆が、そういう結果を招いたんだろう。


今自分は子供であるという情報を全開で使った結果、自分の中で明らかに相手の素行が悪いと判断した。


「そりゃあ、痛ましいですね」


「そうは言っても、こっちは雑用弟子とはいえ徒弟を一人や殺れてるからな。しかも秦師姉自ら連れて来た徒弟だ」


「殺られてるってのは確定なんですか?」


「そんな事は無いんだが、ただ、あの事件後に秦師姉が飛剣に乗って羊雲城に行ったって話もあるし、何らかの交渉中なのは間違いないだろう。そうなると、考えられるのは白師弟が羊雲城に連れ去られた可能性もあるし、逆に秦師姉が白師弟を隠していて、羊雲城から引き渡しを求められているかだ」


「井兄の予想は?」


「白師弟が自分で身を隠したかな?」


思わず、食後のお茶を吹き出すところだった。


「え?なんで、そう思うの?」


「何でだろうな……不自然なんだよな。白師弟が殺されたなら羊雲城の護衛の腕一本でも奪うのはまだ分かる。逆にその状況でわざわざ一人で羊雲城に向かう理由って何だ?近隣の重要な取引先とはいえ、既に築基に入った秦師姉の敵じゃないし、秦師姉の目にかけていた相応の腕の子供と護衛の腕一本、わざわざ交渉するようなものでもない。突っぱねてお釣りがくる。白師弟を羊雲城が攫ったとしたらどうやってだ?逆に秦師姉が白師弟を隠す理由も分からん。そうなると俺の頭じゃ、白師弟が勝手に逃げて隠れてるって結論になっちまうんだ」


「で、でも白師弟って子供なんでしょ?」


「俺は子供でも、十分な腕があれば暮らしていけると思ってるよ」


鋭いんだか、田舎もんなんだか分からん、変な兄貴分だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
待ってました! 井兄すげえな。たまにこういう勘が鋭いやついるんよな。荷馬車に乗せられて引きづり出されたとか昔の中華系って結構苛烈なイメージあるから納得する。
更新ありがとうございます。凄く面白いです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ