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50.二品丹薬

 「はいこれ、約束の物」


ちょっと不穏な渡し方をしてしまったが、ただのスキンケア丹薬だ。水薬系の物と軟膏系の物をいくつか袋に詰めてある。


「え?これって……」


王お姉さんが自分が手渡した丹薬を見るなり凍り付いた。


それもその筈、このスキンケア丹薬は全部二品丹薬だからだ。


でも、言わせてもらいたい、これら全部効果は保湿とか肌荒れ修復とかそんな効果しかないのよ。大した効能もないので名もない二品丹薬らしいんだけど、何でシステムがそんなものの作り方を知ってるかは不明。


「うん、とりあえず悪い物じゃないから使ってみてよ。不具合が出たらすぐに使用を中止してね」


「そういう事じゃなくて、これ二品丹薬よね?どうやって手に入れたの?」


「いや~どうやってって言うか、そんなに珍しい?黄師姉も王お姉さんも内門弟子だし作れるよね?二品薬」


「それは、そうだけど……逆にこの宗でこれらを作れる修士がいないのも分かるわよ」


「えっと……なんで?」


「だって、私どれも初めて見たし、名前も分からないもの」


「あ~そういう事?どうやらその丹薬ってどこかの家伝の物で、そもそも名前とか無いらしいよ」


って言っとけば、大体何とかなるってシステムが言ってた。


「そうなの?じゃあちょっと使ってみようかしら」


言うなり、顔に塗ったくり始めたんだが、化粧した上からいっちゃうの?!!!!


〔安心しろそういう物だ〕


うん、修仙世界意味分からん。前の世界の感覚からしたらちゃんと化粧落として、素肌に馴染ませるものだと思ったのに、こういうのがなんか心臓に悪い。


いや、別に誰かが困る事ではないんだろうけどさ。王お姉さんが化粧ぐちゃぐちゃになって、直しに時間かかったら申し訳ないじゃん。


「ど、ど、どう?」


まだ動揺が抜けないな。


「これ、凄いわね。この水薬だけでもしっとりと肌に浸透していくのが分かるわ」


うん、自分にも分る。化粧してるのになんかやたら肌艶が良くなってきて、化粧のマット感っていうの?貫いてるんだよね。


っていうか、相変わらずこの世界の法則って言うかそういうのがよく分からんし、水薬って要は化粧水的な物みたいなんだけど、効果が覿面すぎやしないか?


次に無言で軟膏を手に取り、ちょんちょんとつけて伸ばしていくと、今度はリフトアップとでもいうのか?別に目立つ訳でもないけど、ちょっとしたシワが伸びて顔全体がキュッとしまった感じがする。


そして、小瓶を手に取り本当にちょっと小指の先につけて、何か所か狙ってつけていくと、化粧で隠していた肌荒れやなんかが改善されていくのが、目に見えて分かってしまう。


って言うか、説明を聞かなくてもどの丹薬がどんな効果を発揮するのかはちゃんと分るものなんだ?


〔まぁ、そりゃ丹薬の道を行く内門弟子で二品薬を作れるならその程度造作も無いだろう〕


そういう物かと、一旦理解しておく。


「そんな感じだから、使ってみてよ」


「ありがとう白師弟、でもこれ安くは無かったでしょ?いくらかかったの?」


「え?ああ……」


流石に自分で作ったとは言えん。ただの雑役弟子で二品薬を作れるなんてなったら多分大変な事になるだろう。そもそも自分の歳で丹薬作ってる事がばれたら面倒になるって好師匠から言われてるんだしさ。


「いいわ!今回はそのまま受け取るけど、今度手に入れる時は私に言ってね」


自分の困った顔を見るなりちゃんと察してくれる王お姉さんは、本当に助かるわ。何かこう、言わなきゃ伝わらないみたいな人多いからなこの辺。


〔この辺って言うか、どこでもそうだぞ〕


そんな事までちゃんと教えてくれるなんて、助かりますねー!システムは!


と、いう訳で一旦任務完了だ。


失敗したらまずい事になるかもと思ったが、やっぱりシステムは何でもお見通しで、大体うまくいく。


〔そう万能な物じゃない。前にも言ったがある知識は渡すがそれ以上の事は出来ん。無から有は生み出せん〕


はいはい、気を付けますよ。結局は自分でよく考えて上手く生き抜くしかないって訳だ。


例えばトラブルに首を突っ込まないとか。


何で急にそんな事を思ったかと言えば、また喧騒が聞こえてくるから。


まぁ、この鸚鵡緑苑外苑じゃあ日常茶飯事だ。大体誰かが喚き散らしながら喧嘩してるだけだし、何だかんだ刃傷沙汰に至る事は少ない。


偶にすぐ剣を抜く人もいるけど、だからと言ってぶった斬った所はまだ見てないし、関わらなければいい。


喧噪が始まるなり、どこからともなく人が集まっていくが、その流れに逆らってそっと離れれば、すぐに安全圏だ。


逆ら……えない。


大人たちが一斉に押し寄せてくるのに完全に巻き込まれ、抜け出せなくなってしまった。


一体どうなってるんだコレは?


兎にも角にも脱出しないと、どうにもならんともがいて、少しでも人の密度の低い方を目指す。


「お、おい!剣を抜いたぞ!」

「あんな美人の娘が、何とも気の強い事だ」

「ふん!顔はまぁまぁかもしれないけど私は気に入らないね」


大人たちの勝手な噂話が聞こえてくるが、またやらかしてるのか?楊師姉よ。


何とかもがきもがいて、大人達の群れから飛び出す。


すると、目の前には見知った顔。


「あら白小青じゃない」


「うげぇ……」


剣を抜き構えて、こちらに声を掛けてきたのは沈紅羽だった。

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