49.王お姉さん改造計画
「お待たせいたしました!」
そう言いながら現れた銀店主の両手には服が山盛りになっている。
「あの、自分も童僕の身なんで、何でもかんでも買う程の財力は無いんですけども」
「ふふふふふふふ!これから名を上げるお花の修行者様からむしり取ろうなんてそんな考えございません!」
そう言って、手近なマネキンに片っ端から服を着せてく銀店主の手際の良さときたら、流石に一店舗任されるだけはある。納得の手腕だ。
約20体のマネキンに着せられた子供服たち、そして碌な説明もないのはまた試されてるのか、信用されているのか、それら両方なのか。
うん、全然分かんない。時代も雰囲気もぐっちゃぐちゃって感じ?長袍っぽいのもあれば、カイってのかな?衣へんにカケルって書くやつ漢字も出てこねぇ!とか馬甲ってのかな?袖なしのベスト的なやつとか、本当に無作為にならべてる感じがするんだが?
〔その套褲とかいいんじゃないか?〕
システムがすすめてくるのは、ズボン……ではないか、あの~なんか林業者が腿とかを守るような、チャップスって言うのかな?股の所が空いた防護服的なやつだ。
「じゃあこれで」
システムを信じて、脚用防護服みたいなのを選んでみると、やっぱり銀店主の目がギラリと光る。
「何故こちらの商品を?」
「何となく良さそうだったから?」
「確かに、こちらの商品は下肢の疲れを和らげ、長旅をする方にもおススメの商品でございますが、年若い方があえて選ぶには理由があるかと?」
って言ってるけど、どうするよ?
〔今の所、殴り合う予定も無いんだから防御力よりも作業のしやすさだろ?そうなるとそれが一番適してる。他はなんかやりあう用だ〕
ふーん、成程ね。確かにこの宗も剣を持った人が多いし、銀店主的には自分も戦う想定で用意してくれたのに、あまり関係ない物を選んだから気になったのか。
「自分は花は好きですけど、刃傷沙汰は好きじゃないので、作業に向いたこれが一番いいですね」
「確かにそうではございますが、何かと物騒でございますし、こちらの短衣だけでもいかがですか?」
〔悪い物じゃないが、護符で十分だな。この店員はまだお前の事を甘く見てるぞ〕
ふーん、やっぱり抜け目ないねぇ。ちょっとだけ厳しく当たっておくか。
「いらないよ。結局物を知らない子供だと思ってるんでしょ?別にいいよ知らない」
「いえ、いえ……あの……やはり子供用ですと限りがあって、その……」
「うん、じゃあその套褲だけ買っていくね」
そう言って、代金を払い店を出る。
「ふぅぅぅ……白師弟は厳しいのね。私もこの店を紹介して失敗したと思ってるけど、白師弟なら問題無さそうね」
「うん、王お姉さんのお陰でいい買い物できたし、これからもあの店で買い物する時は油断しないようにするよ」
自分がそう言うと、なんだか嬉しそうに笑う王師姉は、普段よっぽど周りから軽く扱われてるのかもしれない。
ただ雰囲気が地味なだけなのにねぇ。
〔あれだろうな。浅黒くてちょっと田舎っぽいのと、顔が地味すぎる。あとは肌がちょっと荒れてる感じが……〕
その指摘は正しいんだろうけど、ちょっと待てよシステム?言いすぎじゃない?
〔まぁ待て、この地味な姉さんがお前にとって害にならない相手だってのは分かってる。だからこそ、この姉さんの立場が良くなる方法を提案しようってんだからよく聞けよ〕
成程ね。なんだかんだシステムは自分の不利になるような事はしないし、王お姉さんも自分をぞんざいに扱った事は無い。
〔簡単に言うと肌の再生能力の問題だ。顔の造形はまだお前の手に余る問題だが、肌の再生自体はすぐにでも着手できる。んで、地黒の問題に関しては、寧ろ無理に白くしようとしない方がいいかもしれん〕
ん~つまり色黒を寧ろいい方向に使えって事?
〔そうだ。一般的な美しさの通念に従って少しでも白くしようっていう化粧の仕方してるだろ?それが逆に芋っぽくなる原因だ。寧ろ色黒の健康的な感じを前に出せればその方がウケが良くなるだろう〕
システムのクセに妙に生々しい提案してくるんだよな。
でも、納得できる回答であるのも事実なので、後はどうやって王お姉さんに伝えるかだ。
「王お姉さん!さっき肌ケアについて考えがあるって言ったじゃん?」
「そうね。でも気にしてないわよ?」
そんな事無いだろうに、まぁ子供の言う事だしこう返すのが普通なのか。
「分かった!じゃあ騙されたと思って、ちょっとの間は自分のスキンケア丹薬だけ使ってみてよ!」
それだけ言って、走って隠れ家へと向かう。
「さて、システムさんよ。どうするの?何気に失敗したら事だよ」
何しろ王お姉さんは何だかんだ内門弟子だし、黄師姉にも近い立場だ。今の自分の立場を危うくしない為にもここは勝負所……って言うかシステムの事を信用しすぎて安請け合いしてしまったかも。
〔分かってる。失敗するような代物じゃないから安心しろ。ただ今までの丹薬より少しばかり手間がかかるから集中しろよ〕
そしてその日、ぶっ倒れる程に真気を使い、ただのスキンケア丹薬を作った。




