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48.また変な人に目をつけられた

 「うふふふふふふふふふふ、坊ちゃんその符をどうして選ばれました?」


うん、店員のお姉さんって言うか、結構品のいい四角顔だけど小顔で、愛嬌と優しい雰囲気に騙されそうな、抜け目ない商人って感じのお姉さんにがっつり見られてる。


このタイプは油断しちゃならないと、前の世界を40年生きてきた自分の勘が告げる。


「何となくかなぁ?」


「うふふふふふふ、それなら絶対こちらの炎雷符をお選びになりますよね?」


うわー……絶対嵌められた。一番高いやつを分かりやすく配置しながら、別の物を選ぶって、選択ミスか?


「へ~~それって炎雷符っていうんですか~?何か、見た目格好いいなとは思ったんですよね~」


「じゃあ、何でこっちを?」


絶対逃がさない構えの店員さんと、その雰囲気に押されてオロオロする王お姉さん。


うん、王お姉さんはいつも優しく接してくれるし、絶対迷惑かけないからさ!


「自分の事試してるよね?」


ちょっと、声のトーンを下げて、じっと店員さんを見つめてみる。


……何秒経ったか、兎にも角にも40年以上生き、氷河期を耐えてきた精神力を総動員して、ジトッと湿度100%越えの目で相手の目を見つめ続ける。


「あ、あの最近この辺で目利きの子供がよく現れると聞いたもので、すみません」


目がオロオロしだし、最後の方は聞き取れないくらい声が小さくなったのは、ちょっと追い込みすぎたかもしれない。


「いや、理由を聞ければそれでいいんです。自分も些少ながら立場のある身なんで、一応警戒しただけで」


「そうでしたか!私の方も申し訳ございません!この店を取り仕切りを任せられております。銀とお呼び下さい」


なるほどね。こんなド田舎の辺境の地とはいえ、店一つ任されるだけのお嬢さんと、そこに現れたるは最近噂の変な子供という訳か。


「そうですね、銀さんは正直な方と信じて、自分も正直にお答えしますと、この札は大変筋のいい、法士様の作と見たからです」


自分の発言にクワッと細い目を見開いた銀店主が、自分の両手をグッと掴み、まくし立ててくる。


「流石です!最近噂になっているお花の庭の修行者様とお見受けしました!まさか、こんな古風な福符を見分けられようとは!ちょっとそれっぽい目利きでも敵いません!この符箓の由来を辿れば、一日あっても説明しきれませんが、かの名家!林家の初代にして、林思様の真筆に間違いございません。かの方は齢60を過ぎて聖域に上り、ほんの数年で築基に至り、更に今でも修行を進める大修士様にございます。確かにこの符は聖域に登ってすぐの作にございますが、それ故に……いえそれだからこそ、何の忖度もない純粋な一筆であり、本当の意味で縁のある方の手元にしか渡らないと言われた一品にございます!」


うん、まーた大層な物を引き受けてしまったらしい、システムは沈黙してる。


「まぁ、あの~その~そういういわれな物なら、確かにそちら側の対応も分かるんですけども、自分の目利きって言う噂はどこから?」


「それは、燃料屋さんや骨屋さん始め、何故か毒入りの植物の仕入れもしているという話から、ですけども?」


うん、毒買ってるって噂になってるじゃん?自分で食べてるだけなのに、何か王お姉さんが不安げな表情じゃん?自分別に他人を害したりしてないからね?


「違うから!変な誤解しないで!自分はあくまでお花に優しい土壌を目指して色んな実験をしてるだけだから!他人を害そうとかそんな事は考えてないの!綺麗な花が好きなの!」


「失礼しました!確かに毒のある花ほど滋養強壮によく効くと言いますし、生命力の強い植物に興味があるのは当然でございます!先程見せていただいた符にも、かなり古風な木符があったのを私めはちゃんと確認しております!いえ、本当にお庭の修行者の実力に関心しきりにございます」


なんか、かなり持ち上げてくれるが、それで納得した風に落ち着きを取り戻す王お姉さんの純粋さが逆に心配だよ。


「あの、それでこのお店は符箓の専門店って事でいいんでしょうか?」


そう、自分はこのお店が何やらいい店だとは知っていたが、何となく符箓を買う店だとは思っていないのだ。


って言うのも、ショーウインドウならぬ、そこらの棚に色々壺やら剣やら弓やら槍やら置いてあるから。


「いいえ!そんな事はございません!修士の皆様に安心して必要な物を揃えていただけるようなコンセプトの店を目指しております!例えばですが、あちらの棚の服一式ですが、どちらも法衣となっておりまして、防寒、防毒、防塵と様々なシーンに適応しながら、尚且つ邪魔にならないように設計されておりまして……」


「じゃあ子供サイズだと何があるの?」


自分の言葉に一瞬ギラッとした視線を発し、店の奥へと向かう銀さん。


どうしたもんかと王お姉さんと視線を交えたら、何故かなんだか恥ずかしそうに一角を見渡すので、自分も近づいてみると所謂スキンケア商品的な?


〔この辺はあまり効果が無いからやめておけ〕


システムからの掣肘も入り、曖昧な笑顔をしていると王お姉さんも諦めた様だ。


〔まぁ、なんだ?肌ケア位なら何とでもなるが?〕


うん、うちのシステムの柔軟性ときたら意味が分からんが、今は王お姉さんの様子が大事か。


「ちょっと今度面白い物作る予定なので、ちょっと待っててくださいね」


適当だが、何となく言ってみると優し気な笑みを浮かべる王お姉さん。


なんだろうか?超地味な王お姉さんの笑顔が心に重くぶっ刺さるのだ。

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