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46.派閥とかそういうの面倒くさくてな

 「そう?孟長老が、そんなにはっきり言ってくるなんてね」


夜に、黄師姉に好師匠の所で聞いた事を報告すると、割とあっさりした反応だ。


「毛師姉より、よっぽど厄介みたいですけど、問題ないんですか?」


「無問題って訳にはいかないわね。でも現状手の打ちようがないの」


どうやら報告の必要も無く、孟長老の事は既に危険視してたみたいだ。


「自分は全然宗内のパワーバランスとか詳しくないんで、よく分からないんですけど、孟長老は李長老の元弟子とかでは無いんですよね?」


「ええ、孟長老は以前の外門長老の跡継ぎで、腕だけなら内門に居てもおかしくない方よ」


「それが何でまた、あえて外門で?」


「建前では外門の薬堂の維持を条件に跡継ぎ指名されたって話よ」


「腕は黄師姉より上って話みたいですけど、何で内門弟子にならなかったんですかね?」


「はっきり言うのね。確かにその通りだけど、噂によると李長老から見ると心性に難ありと見られたって話ね。かなり前の話だから私も本当に噂程度にしか知らないわ」


心性ね~つまり性格が悪いのか?


〔魔に取り込まれやすいとか、欲が多いとか、その他にも色々言われるが、結局ところ好の丹薬師と性格が合わなかったんじゃないか?〕


身も蓋もないな。性格が合わなくて内門に入れなかったんだとしたら、何気に好師匠の事恨んでてもおかしくないよな?


だからあえて、弟子たちに害が及ぶようなことをしている?いや、流石にそこまで勘ぐるのは早すぎるか。


黄師姉の雰囲気からも孟長老に対して読み取れる情報が少ない。


って事は、あからさまな対立はしてないって事なのか?あくまで四品薬が作れるかどうか、そこが焦点になってるだけ?


「一先ず、何も出来ないなら自分もそっと触れずにおきますけど、黄師姉は四品薬の錬成の目途とかついてるんですか?」


「いえ、全く!そもそも師匠の錬丹炉を使って、更に必要になる素材も貴重な物ばかり、あらゆる準備を施して、よっぽどうまくいけば成功する。そういった類の丹薬を作るのに、出来るなんて言えるわけ無いわ」


これは、色々とまずいんじゃないか?勿論今まで知りあってきた人たちの事も心配はしているが、先ず自分じゃん?子供のまま放りだされたら、たまったもんじゃない。


……そうでもないのか?ボロとはいえ、住む所は確保したし、沙さんの店でバイトしてもいいし、炊事も自分で出来る。


いっそ、自分の責任じゃなく独り立ちできるし、悪い事ばかりでもないか?一つ言うなれば後ろ盾がいなくなるって事だ。


多分、今の所は内門弟子の童僕って事で、自分に対して当たりの悪くない人が多いんじゃないかと思う。


何故ならば、皆そんな感じだから、少しでも力のある人と付き合いをもって置くことが、身を守る手段みたいな雰囲気の人が少なくない。


いや、普段付き合いのある好師匠だとか、秦師姉、黄師姉、毛師姉なんかはあまりそういう感じでもないんだけど、それこそ黄師姉の家でお茶会に来る人とか、李長老を訪ねてくる人とか、大体そういう感じ。


何かきっかけがあれば、訪ねて行って面識を持ち、ちょっとでも感触が良ければ取り入るみたいなね。


前の世界の日本に生きてた自分からすると、ちょっとあからさまな感じがするけど、そもそも自分が好師匠の所に通ってるの、まんまそれが理由だからさ。


自由を得る事は出来るが、失う物もあるか。


出来れば何事も無く平穏無事に済ませたいもんだな。


「ずいぶん考え込んでいるようだけど、この件はそう悪い事にはならないから、気にしなくていいわよ」


「そうなんですか?」


「ええ、勿論最優先は私が師匠の跡を継ぐことだけど、丹薬師の派閥はそう大きくないからね。孟長老も完全に潰そうとはしてこないでしょう」


「派閥ってのがあるんですね」


「それはどこにでもあるでしょ?特に風塵宗は人も多いから、長老と呼ばれる方も数多くいるし、出来れば内門に居を構えて、内門長老として権威を持ちたいでしょう」


「他にはどんな派閥があるんですか?」


「多すぎて説明しきれないわ。例えば最大で言うなら剣派だけど、総数に対して小さな派閥も多いから、先ず一枚岩になる事は無いし、逆に浅雲堂なら人数も少ない代わりに、ほぼ堂主の指示がいきわたるし、ある意味では風塵宗を動かしてると言っても過言ではないわ」


「え?そんな凄い派閥が?」


「そうよ【占術】を修行する者しか入れず、大抵は有力者の側近として派遣されるの。それ故にこの宗の組織運営に一番深く入り込んでると言ってもいいでしょう」


そんな凄い場所があるのか、やっぱりこの宗は広すぎて今一つ、何がどうなってるのか分からない。


そもそも自分がいる場所が鸚鵡緑苑で、緑の湖みたいなデカい沼を中心とした一つの派閥なんだろうけど、最初に秦師姉が言っていた通り、物作り系の人が多いらしく結構温厚でのんびりとした感じなんだよね。


でも、秦師姉とか楊師姉とか外苑で見かけるような人は、やっぱり何だかんだ殺気って言うか、いざという時は殺るみたいな空気は纏ってるんだよな。


それだけ宗内でも人の雰囲気は違うって事だ。


つまり、小さい派閥がまとまったり分離したりして、大きな派閥が形成されていると、その微妙なバランスの上に自分達の生活が成り立っているって訳で、自分にはどうしようもないって事だ。


うん、投げた!よく考えたら秦師姉はどう考えても剣派じゃん?その後ろ盾を得ようとしてるって事は、鸚鵡緑苑内のパワーバランスに剣派の権力を介入させようとか、そういう事じゃん。


もうね、よく分かんないよ。早く派閥争いとかそういうのと関係のない生活がしたい。

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