45.本当のライバル
本日の好師匠のご飯は、米粉の蒸し春巻き。
米粉の皮でひき肉とか刻んだキクラゲみたいなキノコを巻いて蒸すだけなんだけども、現実でやったら多分自分みたいな料理音痴には絶対できない物が、簡単に蒸しあがる。
何て言うか、術を行使する者の影響を受けやすいって割に綺麗な物が出来るんだよな。
〔それはお前が欲する結果をイメージ出来るからそこに向けて、術を行使してるに過ぎない〕
「それじゃあ、誰でも都合のいい結果が出ちゃうじゃん」
〔本来はそういうものだ。だが人ってのはそう都合よくは出来てない〕
哲学?みたいな感じになってきたので、やめておこう。とりあえず今は美味しい物が出来たんだからそれで良い。
何か、勝手なイメージだけど好師匠ってベトナム風の味付けが好きっぽい気がするんだよね。
だから今回もバインクオンをイメージしてみたんだけど、合ってるかどうかは分からない。まぁ、間違ってたとして別に誰が正解を知る訳でも無し。
「あら出来たのね?じゃあ持っていくわよ」
そう言って、厨に顔を出した毛師姉が二皿、庭に持っていく。
二皿だ。今日はお客さんも食べていくとかで、二皿作ったんだが、果たして口に合うのかどうか?
ちょっと、目立たない場所から様子を見てみるとしよう。
既に勝手知ったる好師匠の家の中からお客さんの様子を覗く。
「ほう!これは良いですね。李長老程修行が進めば、あまり食に対して興味も無くなるでしょうに、それでもあえて作らせるなど、よっぽど腕のいいお弟子でも出来ましたか」
「好」
「そうですかそうですか、それではいただきますね」
うん、どうやら中年~初老の男性の様だが、どういう関係だろう。
「好!」
「好」
二人してハオとか言ってるんだけど、何がどうハオなんだ?まぁ多分春巻きを気に入ってくれたんだろうとは思うけど、ハオだけで共鳴するのやめてくれ。
それからも、何故かハオで共鳴しつつ春巻きを食べ終えると、毛師姉が皿を片付け、お茶を出してまた下がる。
内門弟子である毛師姉の接し方から察するに、それなりに偉い人か?
「それで、李長老跡継ぎの件なんですがね……」
お茶を飲みながら、不穏な話を切り出した。
黙って頷く李長老にまた話かけ始める。
「李長老が一番弟子の黄靜を跡継ぎにしたい気持ちは分かりますが、今の宗内に置いて貴方の次に腕があるのは現状私です。果たしてこのまま跡継ぎを黄靜にしてしまったら、宗内で余計な争いが発生しませんか?」
あなたの言い方が、何かよく聞くニーじゃなくて、ニンだったせいか、結構敬った感じに聞こえたな?
そんな事はどうでもいいか、それよりこれは黄師姉の席を狙う別の人物がいたって事?しかも黄師姉より腕が上とか、こっちの方がよっぽどまずいじゃん。
それでも、軽く頷くだけの李長老に更に話が進んでいく。
「確かに私が貴方の跡を継ぐ形になれば、外門で修行している丹薬士達の面倒を見る者がいなくなってしまいます。とは言え、四品薬に今最も近いのが私である以上、宗全体の事を考えれば、李長老の錬丹炉を受け継ぐのは私であった方が、良いのではないですか?」
ふむふむ、つまりこの人は外門の師匠筋とかなのかな。
今の実力No.1は言うまでもない李長老で、真のNo.2はこの外門の師匠って訳だ。
宗内のまとめの事を考えれば、このまま師弟関係の黄師姉が継いだ方がいいんだろうけども、宗全体と言うか、多分外部とのパワーバランスなんかも踏まえると、真のNo.2が繰り上がった方が、宗の立場を維持できるとかそんな感じなんだろう。
でも、そうなると?
李長老の弟子である黄師姉や毛師姉、王師姉他にも名前も知らない人達はどうなっちゃうんだ?
そう言えば、そもそも薬会の金師兄とかはどこの筋の人なんだろう?この宗は人が多すぎてその辺の関係性が、いまいち理解できないんだよな。
「勿論、私は李長老のお弟子を悪く扱う気はございません。誰か立場的な跡継ぎは立てて、門下は維持なさればいい。ただ風塵宗の事を思えば、四品薬はいずれにしても作れる様にならねば、ならないでしょう。すぐにとは申しませんが、お早めにご決断ください」
そう言って、お茶を飲み終わった外門の師匠は出て行った。
「こんな所で聞いてたのね」
突然後ろから毛師姉に声を掛けられて驚いた。まぁ二人の普通の会話が聞こえてくるくらいまで近寄りつつ見つからない場所に隠れていたので、確かにこんな所だわな。
「あの人はどちら様ですか?」
「孟長老ね。外門にある薬堂で、見どころのある外門弟子を育ててる人よ。李長老の弟子の大半も一度は世話になった事のある方で、腕もいいわ」
そりゃ長老って立場ならそりゃあそうか。
「提案を聞く限り、何か正しい事言ってそうに聞こえるけど、何で李長老は好って言わないの?」
「そりゃあ、内門の弟子が力の無いまま長老になるなんて事になったら、潰されるのが目に見えてるもの」
「何で宗内で潰されるとかそんな話になるんです?」
「誰だって、少しでもいい立場が欲しいからね。私は師尊のお近くに居られればそれでいいけど、師尊からすれば手塩にかけて育ててきた弟子の行く末も気になるんでしょう」
「じゃあどうにか、黄師姉が四品薬を作れる様になるとか、そんな感じ?」
「男にかまけてる内は無理じゃないかしら?」
「毛師姉も李長老にかまけてるじゃん」
「そうよ?前にも言ったけど、私は黄師姉が跡継ぎになってもかまわないの。ただ師尊を大事にしてもっと修行に励みさえすればね」
なるほどね~、一応この話は黄師姉に持って行かなきゃな。




