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43.帰ってきた日常

 「えーい!腕が上がってきたようだな!」


えーい!とか言ってるが、別に怒ってる訳ではないようだ。相変わらず沙さんの言い回しはよく分からないのだが、とりあえずは褒められているらしい。


〔修為も順調に伸びてるし、やはり何事も慣れだからな。やればやる程上達するのが当たり前だ〕


システムが言うのだから、実際に腕は上がっているのだろう。


正直な所、素材がいいのか道具がいいのか、手抜き料理を作っているようにしか思えなくて、何がどう腕が上がってるのか自分ではよく分からない。


自分がアルバイトに戻って来たという噂はいつの間にか広まり、例のおじさん筆頭に辛い物食べれない連合達が店に押し寄せてきて、結構てんてこ舞いだ。


それでも真気の使い過ぎとか疲れたとか、そういう事は無いので、やっぱり少しは修行が進んでいるのかな?


そんな事を考えつつも今日の定食をどんどん仕上げていく。


本日の定食は青梗菜が安くたくさん手に入ったとかで大量に詰まれていたから、2種類のおかずから選べる、シンプルなオイスター炒めと中華丼風の炒め煮って言うのかな?米敷いてないから丼じゃないんだけども、キノコとか卵とか入れて餡掛けっぽいとろみつけたやつよ。


多分和中華なんだけど、ここの人達がそんなこと知る由も無く、そういう食べ物として食べてるみたいなので、問題ない。


昼と夕方のゴールデンタイムを何とかしのぎ切り、沙さんから日払いのバイト料を受け取る。


子供は大人しく暗くなる前に帰った方がいいと思うので、さっさと退散するが、


「まだだ!まだ終わらんよ!」


沙さんは夜営業があるので、これからまた忙しいらしい。まぁ夜ともなるとお酒でも出すのかね。


外苑の閉店前の露店や店を覗いて、本日の夜食用の毒入り材料を買い集めつつ、帰路につく。


いつも通り、自分の住む使用人部屋に戻り、自分しか使ってない厨で夜食の準備だ。


今夜は毒蛙が手に入ったので、こいつを使っていく。


日本人としては蛙料理に多少の抵抗もあるのだが、自分の中の勝手にぶち込まれた記憶が、蛙は美味いと言っている。


まずは材料のカットだ。


玉ねぎニンニクを適当なサイズにカット、蛙は足の生えた魚だと思って、適当なサイズにぶつ切り、内蔵は基本捨てるのだが、毒腺だけは食べなきゃ体が強くならないので、肉に混ぜ込む。


鍋に油をひいて、ニンニク玉ねぎを炒めつつ、豆板醤を投入。


自分で食べられる辛さに仕上げる為に、豆板醤は控えめだ。


玉ねぎに火が通ってきた所で、蛙肉を投入し、火を通していく。


紹興酒と醤油を入れ、次に砂糖とオイスターソースと味付けを決めていき、十分に火が通ったら完成だ。


うん、美味い。ほぼ鶏肉みたいな味だ。


多分毒が若干の苦みを出している気がするんだけど、寧ろそれのお陰で味がくどくならない。


毒のある物食べるようになって思うのが、妙に滋養にいいような体に染み渡る味なんだよね。


〔そうさ。自然の中で食べられやすい存在だからこそ、毒を帯びて身を守るんだ〕


なるほど?でも植物の実とかって、寧ろ食べられることで種を遠くに運んでもらうんじゃないの?


〔育つ環境にもよる〕


言われてみればキリンが食べてる葉っぱって、キリンに嚙まれると苦くなって、近くの木にもその情報が伝わるとか前の世界の小学生の頃、何かで見た気がするな。


身を守るために毒を帯び、その毒を寧ろ修行の為と称して自分が食べるってんだから、自然界ってのは過酷なもんだ。


毒蛙の炒め物を食べ終わると、不意に臍下から力が湧き出てきて、全身に広がっていく。


〔修為が上がった様だな〕


「何でよ。ここの所修行もろくに出来ずにいたのに、ご飯食べただけでそんなに上がるもん?」


〔修行できずとはいえ、寝起きや寝る前、合間合間に混元功はしていたし、花のお陰で霊気も濃い、そこに毒料理による肉体強化が相まった結果だろうな〕


随分と順調に進む事、そりゃシステムも問題ないって言うわな。


「それで、次はどうするの?大工術?」


〔いや、ここは【符術】を教えておこう〕


「前にもチラッと出てたけど、アレだよね?お札的な?呪符とか霊符みたいなやつだよね?」


〔ああ、そのイメージで間違ってないぞ。お前のイメージは符箓に近いが、いざという時に使いやすくて、身を守るのには向いている〕


「ふーん?否は無いけども、何て言うか自分のイメージでも仙人とか道士ってお札使う感じだし」


〔よし、じゃあ決まりだ〕


「んべべべべべべべべべべべ!」


相変わらず慣れない衝撃と共に、無理やり脳内に符の作り方がぶちこまれる。


「なんかさ?システムって自分の事を生産職にしようとしてる?」


〔なんでだ?〕


「いやだって、料理に薬に農業にお札じゃん。頭の中にぶち込まれた記憶をどれだけ攫っても、何か作る事ばっかりなんだけど」


〔偶々だ。修仙には様々な術があるし、術だけで強い者も多くいるが、大抵の場合は法器や宝器を媒介にすることが多い。それこそ剣修だって、剣を媒介にしているようなものだろ〕


まぁ、言われてみればそうか?無手で強い人も勿論いるんだろうけど、自分みたいに修行の浅い者はなにがしか道具を挟んだ方が、いいのか。


まぁ、とりあえず明日は符について、色々やってみるか。

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