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41.自由を手に入れろ

 「あ~流石にまいっちゃうな~」


夜一人になり、ぐったりとしていると、勝手に愚痴まで零れ落ちてしまう。


まぁ、理由は完全に沈紅羽なんだけどさ。


あれからほぼ一日おきに連れ出され、あちらにこちらにと迷惑行脚に付き合わされる日々。


流石に好師匠の所に行く日は、黄師姉が止めてはくれるんだけど、沙さんの店には当然行けないし、そろそろ辛い物の食べられない常連達も痺れを切らしている頃だ。


黄師姉にさりげなく王師姉から何か聞いていないか、引き出してみたけど、どうやら飲食店で手伝いをしているって事しか知らないらしい。


なんなら、生活に困る事は無いんだし、子供なんだからもっと遊んだ方がいいとかいう理屈で、沈紅羽と遊びに行かせている節まである。


つまり、黄師姉も自分の敵だって事。まじで困った。


〔まぁ、今回は修行にも支障をきたすし、少し知恵を貸してやろうか〕


「知識だけじゃなくて、知恵まで貸してくれるんだ?それで?どうする?」



翌朝、いつも通り秦師姉が沈紅羽を連れてやってきた。相変わらず秦師姉の朝は早い。


「じゃあ、行くわよ!白小青!」


「ちょっと待った。今日は秦師姉に聞きたい事があって」


速攻で、自分を連れ出そうとする沈紅羽を一旦止めて、秦師姉に話を振る。


「何だ?珍しいな。何でも聞いたらいいぞ」


「いや、実は沈紅羽の事でちょっと気にかかる事があって」


「何よ?!それなら私に言いなさいよ!」


「やめろ、小青の様子が分からないか?どうやら深刻な悩みのようじゃないか」


「なんでも、修行の為に来たんですよね?それなのに、こうしょっちゅう遊びまわってていいのかな?って」


「それは、紅羽もまだ幼いんだ遊びたい盛りだろう」


「それだったら、何故修行の為にわざわざこの宗へ寄越したんです?」


「それは、嫁入り前の箔付けじゃないか?」


「自分の考えは違います。沈紅羽は極品の霊根を持ってると前に言ってましたけど、それって結構そこらじゅうで言って周ってませんか?」


「それが何だって言うのよ!」


「そうだな。自分の力や才能をはっきりと喧伝して何が問題ある?」


「自分の考えでは、それの所為で良からぬ輩を呼び寄せてはいないですか?って事です」


「良からぬ?と言うと?」


「自分の様な子供でも知ってます。魔宗って言うのは他人の力を奪う事を得意としてるんですよね?中でも質のいい霊根を奪うのは奥義であり、成功させれば誉でもあるとか?」


「まぁ、魔宗の価値観は我々とはちょっと違うからな、大まかそんな所だろう」


「つまり、羊雲城近隣でも特に腕の立つ秦師姉に沈紅羽を預けたというのは、羊雲城の方で、魔宗の影に気が付いたか、それに近い現象があったんじゃないでしょうか?」


「ふむ、理は通っているように聞こえるが、それで小青はどうしたらいいと思う?」


「すぐにでも戦う心得を身に着けるべきです。当然剣の修行なんて何年もかかる事だし、いきなり腕が身につくとは思いませんけど、それでも自分みたいな子供と一緒にフラフラ出歩くよりはずっといいと思います」


「確かに小青は子供だし、いざ魔宗に襲われでもしたら、ひとたまりもないか。よし!こうしちゃいられん!紅羽すぐに剣の修行を始めるぞ!」


「え?ちょ!秦師姉!小青の戯言を真に受けるんですか?」


「何が戯言だ!小青の言う事には十分理があっただろう!もし小青の言ってる事がおかしいと思うなら、紅羽の意見も聞かせてみろ」


「小青は小銭稼ぎが好きだから、お手伝いに行きたいだけです!私は魔宗なんかに狙われてません!」


「じゃあ、何で修行して来いって言われたのさ」


「それは秦師姉も言ってた通り、婚姻前に少しでも修行を進める為じゃない!」


「いずれにしたって、修行する為に来たのに、こう遊び歩いてたんじゃ羊雲城の城主に対して義が成り立たないんじゃないの?」


「そうだ!小青の言う通りだ。子供に対して厳しいかもしれないが、羊雲城の城主は紅羽の修行を見る為に私に預けたんだ。よし帰るぞ!」


「今来たばっかりなのに?」


「秦師姉こうしましょう。まだ魔宗の件も定かじゃありませんし、紅羽は出来るだけ秦師姉の近くに居させるようにしましょう。勿論黄師姉とお茶を飲むときも一緒だし、修行も一緒。紅羽は修行もまだ未熟でご飯も食べたいでしょうから、一緒に行って上げればいい。自分もいつも黄師姉にお世話になってますし」


「ふむ、そうだな。年若い者を預かるというのはそういう事だ。小青は道理がよく分かっている。紅羽も聞き分けろ。羊雲城の城主がお前を私に預けたというのはそういう事だ」


「ふぇぇぇぇぇぇ」


大層な不満そうな沈紅羽だが、こっちはこれで自由になった!


「じゃあ、そういう事なんで自分は出かけてきます!」


「あっ!なんで小青は好きに出掛けられるのに!私はダメなのよ!」


なんか遠く後ろの方に声が聞こえてきたが知らん知らん!


とりあえず、午前中は隠れ家で修行して、午後から沙さんの店でアルバイト!やっと自分のペースを取り戻せるぜ!

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