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37.環境の変化

 最近来客が多い。


原因は単純だ。自分の育てた花の所為。


あれから、すくすくと育った花は、どんどん増殖して、あっという間に黄師姉の庭を埋め尽くした訳だが、特に文句を言われるわけでもなく、ちゃんと手入れさえすればいいってそれだけ。


流石に、門から各部屋への通路と、いつも黄師姉がご飯を食べてる庭のテラス的な、テーブルとか椅子とか置くスペースはちゃんと確保しているが、それ以外はほとんど5色の花で埋まってる。


どうやらその花のお陰で、この家はかなり霊気の濃度が高いらしい。


そして、この家に招かれるのが内門弟子の中である種のステータスみたいになってるらしく、黄師姉は何だかんだご満悦だ。


他所の有力弟子を招いて、お茶会なんかをやると大層評判がいいらしく、上昇志向の高い黄師姉にとっては鼻高々なんだろう。


まぁ、自分にはあまり関係ないんだけどね。


お茶会って事は、お茶入れるじゃん?自分より黄師姉の方がお茶入れるの上手いんだもん。だってお茶の本場中国人だしさ。


って事で、寧ろお茶会の邪魔をしないように朝から出かける許可が出た。


そう!自由時間が増えたのだ!童僕なのに、花の手入れさえちゃんとやってれば、後は自由とかいうこの上ない環境を手に入れてしまった。


と、なれば次に必要なのは秘密基地!


アホな事を言うなと、思うかもしれないが、よく考えてほしい。


黄師姉の家は来客でいっぱいで、自分なんぞが何やらすれば非礼があるかもしれん。それならいっそ外で遊んでいてもらった方がいい。これが今の状況だ。


この自由時間、修行をしなくて何をするんだ?って話な訳よ。


自分が根っからただの子供ならそれこそ遊んで過ごすんだろうが、残念ながら中身は擦れたおっさんだ。


常にこの慣れない世界で生き残るすべを考えているのだから、人目につかずに修行する場を手に入れたいのは当たり前じゃん?


「って訳で、楊師姉はいい場所知らない?」


「ん~そうは言っても宗内は基本借家だからね~」


うん、相談したのはちょっとだけアホな楊師姉だ。理由は簡単、丹薬という利害関係しかない相手なので、こういう相談がしやすいって事。


「人目につかない場所を借りれればそれでいいんだけど」


「そうは言っても、借りれる場所ってのは修為か、お金かどっちかだよ?」


ってのも、自分の身分は雑役弟子なので借りられるのは一番外周の三間房子みたいなあの部屋なんだってさ。


しかも、山から離れる程霊気は薄くなるんで、修行には適さないとか。


あとは、外部からくる商人とかが借りる部屋なんだけど宿的な感じで、自由度が少ないっぽい。


〔だったら、一番外れの一角を借りてそこに花を植えればいい〕


確かに花を植えれば霊気の濃度は濃くなるし、修行する場にはちょうどいいのか?


一先ず、例の雑弟子向けの任務堂に行き、いつもの顧長老とは別の窓口に向かうと、賃貸窓口がちゃんとあった。


話に聞いていた通り、山に近づくほど人口密度が高く離れる程人は住んでいない模様。


共同スペースを囲む4件の三間房子を丸ごと借りられる一番端っこを借りることにすると、たった銀の葉一枚で一年契約できるとの事だ。


うんこより安い賃貸に驚きを隠せずに、10年ほど契約し、物件を見に行く。


超ぼろぼろでした。


木で出来た小屋が、風雨にさらされ到底人の住む環境ではなくなっていた。


〔十分じゃないか。屋根と壁があれば問題ない〕


「そうは、言うけど住環境って大事じゃない?」


〔掃除は必要だろうが、後は自由だ。好きな物を好きに置けばいいし、何よりこの一角すべてお前の物なんだぞ?勝手に住みやすく改造すればいい〕


確かに言われみればその通りだ。今はただのボロ小屋でも、これを自由に改造できるなら悪い事は何もないか。


〔じゃあ、次は【大工術】だな〕


「何それ?」


〔文字通り建物やなんかを作る為の術だ〕


「そんなのにも術って必要なの?」


〔当然だ。ありとあらゆるものが術で成り立ち、お前の思うような事がすべて術で成り立つ。それがこの世界だ〕


家も術で作れるって、流石は上位世界だ意味が分からん。


一旦は、今あるボロ小屋を住みやすいように改造しつつ、共有スペースに花を植え替えていく。


何しろ黄師姉の家にある花はすべて自分の管理下にある訳で、ちょろっと持ってくるのには何の問題もない。


どうせすぐ増えるんだから、間引く分だけこっちに持って来ればいい話。


ちなみに、好師匠の家は、黄師姉の家より更にやばい状況になってる。


5色の花が咲いたんで、好師匠の家に持って行ったら、凄く細い目の好師匠が少しだけ目を見開いて、


「好」


とか言うからさ。


毛師姉が興奮しちゃって、好師匠の庭を全部自分に任せてくれることになったんだよね。


結果どうなるかって言うと、他所の長老格が次から次へと押し寄せてさ。


現状自分が丹薬作れるのって秘密じゃん?だから、好師匠の所に行っても花の手入れと食事の準備くらいしかやる事無いんだよね。


そうなると、本格的に隠れて丹薬の修行をする場所も必要って訳。


うん、さっさと秘密基地完成させるぞっと!

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